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April 05, 2007

理系白書’07:第1部・科学と非科学 私の提言/上 池内了・総合研究大学院大教授

(毎日 3月14日)

池内了 総合研究大学院大教授

今の社会には「科学がすべてを解明してくれる」と誤認している人が多い。
確かに科学は生活の役に立ってきたし、寿命も延ばしてくれた。
ここに、誤認のもとがあるようだ。
科学にも解決できないことはたくさんある。
にもかかわらず、科学が答えを出してくれるに違いないと考えている。

ダイエットにしても健康にしても、1日で手に入るわけはない。
だが「手っ取り早く結果がほしい」との気持ちはあるし、
時間に追われる現代人はコツコツ努力するという考えが希薄に。
科学的な装いで人々の気を引こうとする疑似科学ビジネスは、
ここにつけ込んでいる。

人は、生きていれば「山」もあれば「谷」もある。
谷のときには「このまま不幸が続くのではないか」と不安になり、
先行きを照らしてくれるものに頼りたがる。
それは占いだったり、幸運グッズだったり、疑似科学ビジネスだったり。

占いやおみくじは個人の楽しみの側面もあるが、
疑似科学ビジネスは科学的な効能をうたうだけに悪質。
証明されていなくても、「まだ研究中であり、害はない」と言い訳。

被害は、だまされて金銭的に損をしたというだけにとどまらない。
明確でない科学的効能を人々がどんどん信じていくことにより、
いろいろなことを吟味せずに受け入れ、無条件で信じることに慣れてしまう。
疑うことを知らない人は、
政治的な主張も無条件で受け入れるようになるのではないか?
悪くすると、ファシズムを生む土壌に。

「疑う」ことには、エネルギーがいる。
だが、この「しんどさ」が一番大切だと思う。
与えられた情報に簡単に同意せず、批判的に考えてみることが、
正しい判断や選択に。

私は、科学者たちに「社会のカナリア」になってもらいたい。
昔、炭坑にはカナリアを入れた鳥かごを持って入った。
カナリアは微量な有毒物質にも反応し鳴き声を上げ、人を危険から救った。
科学者は、疑似科学が持つ「いかがわしさ」を見抜く目を持っている。
科学者は、いち早く鳴き声を上げ、社会に警告を発してほしい。

私は、親類から新商品について「買っても大丈夫か」と
相談を受けることがある。
「やめた方がいい」とか、「効果があるかどうか分かる数年後に
支持されているようだったら、検討してはどうか」と話し再考を勧める。
多くの科学者は、いかがわしさを証明することを面倒がり、声を出してこなかったが、
全国の科学者が身近な人々に語りかけることから始めてほしい。

科学は本来、「価値中立」と言われる。
科学者が生み出す成果に善悪はなく、使い方によって良くも悪くも働くという意味。
科学者は、その使われ方を見ればどんな方向へ進むのか判断できる。
誤った方向へ進もうとしていることに気付いたなら、
「中立」の立場を踏み越えてでも問題を指摘し、危険性を社会に警告すべき。
==============
◇いけうち・さとる

44年生まれ。72年京都大大学院理学研究科博士課程修了。
国立天文台教授、名古屋大大学院教授など経て、06年から現職。
専門は観測的宇宙論、科学・技術・社会論。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20070314ddm016070032000c.html

April 02, 2007

変形性関節症の遺伝子 理研など新たに特定

(共同通信社 3月26日)

軟骨の摩耗などで関節の痛みや変形、歩行障害が起きる
変形性関節症の発症に「GDF5」という遺伝子が関係していることを
理化学研究所と中国・南京大などの研究チームが突き止め、
米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に発表。

同研究所の池川志郎チームリーダーによると、
この病気の患者は日本で約1000万人。
遺伝と環境要因の相互作用で発症するとされ、
これまでも関係する遺伝子が見つかっているが、
発症の詳しい仕組みは未解明。
今回の成果は、将来の発症のしやすさの予測や、
新たな治療薬開発につながるという。

研究チームは、関節の形成や軟骨細胞の分化に関係するGDF5に着目し、
日本人と中国人を対象に、その塩基配列を解析。

この遺伝子の働きを調整する特定部分に、
「チミン」という塩基を持つ日本人は、そうでない人と比べて
股関節の変形性関節症に約1.8倍かかりやすいことが判明。
ひざでも同様で、日本人で1.3倍、中国人で1.5倍なりやすく、
関節の部位や人種にかかわらず、この遺伝子が発症に
関係している可能性が高いことが分かりました。

ヒトの軟骨細胞の実験で、この部分がチミンの場合、
GDF5の働き方は、そうでない場合の半分程度になることが確認。

池川さんは「GDF5は変形性関節症にならないように保護する機能を持ち、
働きが低下すると発症しやすくなる」。
------------------------------
病気の発症リスクと遺伝子との関連性が分かってくれば、
それぞれの遺伝子タイプによって治療が可能になってきます。
いわゆるオーダーメイド治療です。
また人種によっても異なる可能性があります。
もっともっとこのような知見が増えて、実際に治療できればいいですね。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=44716&categoryId=&sourceType=GENERAL

April 01, 2007

理系白書’07:第1部・科学と非科学 座談会 自分で考えること必要

(毎日 3月28日)

「ニセ科学であることを実証すべきだ」といった批判や、
学校教育への疑問が目立った。
私たちはニセ科学とどう向き合っていくのか、「科学的」とはどういうことか。
学習院大理学部の田崎晴明教授、埼玉県立本庄高校の西尾信一教諭、
フリーライターの古田ゆかりさんの3氏による語り合い。
(司会は吉川学・毎日新聞科学環境部副部長)

--「ニセ科学」の広がりをどうみるか。

田崎 多くの科学者は「そんなに気にしなくていい」と構えていたと思う。
しかし、「水からの伝言」が授業で使われたのがショック。
多くの教師があの本を真に受けてしまうような科学教育を
私たちはしてきたのかと。
そこで昨春の日本物理学会でシンポジウムを開いた。
まず科学者に知ってもらいたかった。

西尾 学級通信や授業で生徒に考えてもらい、理科教師の集まりで発表。
オカルト系の本はたくさん売られているが、批判情報は圧倒的に少ない。

古田 科学っぽい味付けをした怪しげな商品などは昔からあったが、
授業に「水からの伝言」が入り込んだ時点で
「いくら何でもここまでは」という段階に入ってしまった。
しかし、それは科学を知っている人の感覚であり、
そうでない人にとっては一線を越えたという意識はないと思う。

--「科学は絶対なのか」「追試をせずにニセと断定している」という読者の批判も。

田崎 科学者は「科学は絶対だ」などとは思ってない。
科学とは、世界を一生懸命見て理解しようとする営み。
今の科学は高度化しているが、
もとをただせば「山の向こうには何があるのか」というような問いと答えを
積み重ねてきたもので、分かったことはごく一部。
ただ、物の性質については非常によく分かっている。
水が言葉の影響を受けるという話は、
これまでの蓄積から「間違い」と言い切っていい。

西尾 今の科学で「ほぼ確かだ」とされている事柄に
矛盾することを主張する場合、主張する当人に立証責任がある。
ただ、科学と非科学は、はっきりと二分されるものではなく、
その間にグラデーションがある。

--ニセ科学が広がることの弊害は?

田崎 エスカレートすると命にかかわる事態になったり、
どうでもいいものに大金を払ったりということになり得る。

西尾 科学的に考えられない人が増える。
「スピリチュアルブーム」も同じで、何かに頼れば問題が解決するという
価値観を植えつけてしまう。

古田 論理的な考え方ができない人が一定以上いることの結果の一つが、
ニセ科学の広がりではないか。

--「水からの伝言」や「ゲーム脳の恐怖」が授業で使われた背景は?

西尾 内容を真実だと信じた先生もいただろうし、
「よい言葉を使おう」「ゲームをやりすぎないように」という指導の実効が
上がるから使った先生もいただろう。
しかし、効果があっても、事実でないことを子供に教えるのは間違い。

田崎 そもそも言葉が「よい言葉」「悪い言葉」に分類できるとか、
そんな価値観を水に教えてもらおうというのは、人の心への冒涜。

西尾 教育現場はどんどん忙しくなっている。
手早く結果が出るものを求めてしまうのかもしれない。

古田 人間をどう育てるかという深い悩みを、
手近な「理論のようなもの」で処理してしまおうという傾向を感じる。
科学っぽい味付けが入ると、威力を持っているように
受け取ってしまうのではないか。

--「発掘!あるある大事典2」問題を見ても、メディアや視聴者は分かりやすさを求める。

古田 マスコミは読者を引き付ける「見出し」を欲しがる。
受け手は見出しから入り、それに沿って理解しようとする。
そこが怖い。見出しや構成には細心の注意がいる。

田崎 マスコミは個別の具体的な質問に答えを求めるが、
科学の姿勢とは正反対だ。
ニュートンは「リンゴが落ちるのはなぜ?」と考えたのではない。
「リンゴは落ちる。石も投げたら落ちる。でも月が落ちてこないのはなぜ?」と、
似た現象をまとめて理解しようとしたのだろう。
個別ではなく「普遍」を求めるのが科学の醍醐味で、
そこを伝えてほしい。

--すぐ答えを求めたがるのは教育の影響か。

古田 既に定まった理論だけを教えてきたことが罪深い。
地動説でも、天動説との論争の中で新しい発見が積み重ねられ、
公の知識になったのに、今の教育ではすべて「分かっているもの」として
教えられ、プロセスは共有できない。
科学的事実とは、元はグレーだったが徐々に白になったのだということを
理解していないと、「本当?うそ?」という二分法の思考に。

田崎 空を見れば太陽が動いていると思うのが普通。
しかし、今の学生を見ていると、直感に反することでも教えられると
すんなり受け入れてしまう傾向を感じる。

--人間には何かに頼りたい心理がある。

古田 「頼りたい気持ち」を科学に求めるのには違和感を感じる。

田崎 人の心や生き方について、科学は何も教えてくれない。
科学は役に立つものは作れるが、それを使ってどう生きていくかは、
自分で決めなくてはならない。

西尾 ニセ科学を信じるきっかけは、多くの場合、
使って「効果があった」という体験。
個人的体験には危うさもあることを理解してほしい。
知識だけでなく、「科学とは何か」「科学はどういう手続きを踏むのか」も
教育課程に入れるべき。

古田 大人になってからもプロセスを理解する訓練が必要。
「分からないこと」に耐え、自分で常に考える態度が重要だ。
==============
◇第1部(6回)の要旨

連載では、「水によい言葉を見せると美しい結晶ができる」と主張する
写真集「水からの伝言」が学校の授業の教材に使われていた事例などを紹介し、
ニセ科学の蔓延に警鐘。

また「ゲーム脳の恐怖」やマイナスイオン関連商品、血液型性格判断を
否定的に取り上げ、それらがブームになった背景を検証。
最終回では、地震予知研究を例に、
確立される途上の「未科学」の位置づけを考えた。
==============
<「科学と非科学」に寄せられた主な反響>

【波動ビジネス】
・モーツァルトの酒はおいしい。科学的に証明できないことでも実感できる。
・友人は50万円もする波動ネックレスを信じている。
発熱しても「ネックレスがあるから」と言って医者にもいかない。

【教室にニセ科学】
・「水からの伝言」の内容を肯定も否定もしないが本当ならすてきだ。
科学で解明できたことはわずかであり、人間はもっと謙虚にならないといけない。
・人間や動物にいい言葉をかけてほめるのと、悪い言葉でけなすのとでは、
結果が違うのは明らか。
「なぜ動物に伝わるのに水には伝わらないか」を証明しなければならない。
・記事を読んで、こんな先生や学校があるのかとあきれていたら、
子どもの授業参観でもやっていたと妻子から聞いた。

【血液型性格判断】
・大規模アンケートをとれば、血液型による偏りが出ると信じている。
そのような検証をしなければ、「根拠がない」とは言えない。
・就職活動で、ある企業から血液型を聞かれ違和感。
変えることができない血液型を判断材料にされ嫌な気持ちに。

【マイナスイオン】
・家電メーカーの罪は指摘通りだが、真贋未確認なものが
世間にはびこることを黙認したメディアの罪もある。
いんちきでも、メディアが放置すれば世間は本物なのかと思う。

【全般】
・科学的に証明できない現象は、非科学的なのではなく、
今の科学が未熟だから解明できないだけだ。
・何を信じていいかわからないところに、単純な原理で
一通り説明してしまうものが現れると流れていってしまう。
今の科学は特化、先端化しすぎている。
分野横断的な研究や、分野の再構築が必要。
==========
◇西尾信一氏

57年生まれ。埼玉県立本庄高校教諭。
日本物理教育学会編集委員を務め、教科書執筆経験もある。
==============
◇古田ゆかり氏

62年生まれ。フリーライター。
生活や社会と、科学との関係について執筆を続ける。
==============
◇田崎晴明氏

59年生まれ。学習院大教授。専門は統計物理学。
97年、第1回久保亮五記念賞受賞。
==============

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20070328ddm016070138000c.html

March 31, 2007

理系白書シンポジウムin東京・大阪:世界をリードする独創的な人材育成(その2止)

(毎日 3月20日)

◆大阪会場

元村 独創と異端は紙一重。つらい経験は?

安友 予算決算期には「いつまで赤字でやっているんだ」と。
30代前半は胃潰瘍や十二指腸潰瘍に。
しかし、トップが要所要所で助けてくれ、困った時はその人の後ろに隠れた。

元村 通信カラオケ成功のカギは。

安友 上司に「100億円の仕事ができたら認める」と言われ、
毎日のように名古屋から東京へ出かけていろんな人と話をした。
その中でカラオケが浮かび、新しい仲間で実現。
私自身は音痴でカラオケも嫌いだが(笑い)、新曲が毎日追加でき、
曲数も従来より1ケタ多いと周囲に喜ばれ、励みに。

元村 独創的研究をする上での信条は。

佐藤 他人が絶対にやらないことをやる。そしてテーマをぶれさせない。
私の場合は「がんの新薬開発に結びつく基礎研究」というテーマを
一度も変えたことはない。実現を目指して新しい研究環境、
新しい知識や技術を選んできた。

永山 独創は、天才だけでなく努力の結果であることもある。
世界で初めてクローンマウスを作った理化学研究所の若山照彦さんは
「努力の人」と思う。指導者の反対にあいながら、
早朝や深夜にコツコツと実験を重ね、着手から2カ月で成功。

元村 若い人を見守り応援する指導者の役割も重要。

佐藤 博士論文を指導してくれた松原謙一先生(元大阪大教授)の
研究室からは独創的な人材が育っている。
米国では同じテーマを3人にやらせて競わせたりするが、
松原先生は皆がそれぞれエキスパートになれるテーマを与えて
個性を育ててくれた。

束村 なぜか社会の指導者は男ばかり。
どこかに「指導者は男」という意識があり、悪気がなくとも無意識に
女性を排除しているのではないか。
同じ能力なら女性を登用しようというポジティブアクション(積極的改善措置)が必要。

元村 米国と日本とで環境に違いは?

佐藤 コロンビア大で公的研究費を初めて申請した時、
「あなたは新しい研究者だからチャンスを与える」と言われ1億円をもらった。
男女や人種に関係なく、とにかく若い人を支援。
日本は出身大学や出身研究室に左右され、評価も不十分。

永山 「日本は均質」というが、教育に関しては不均質だと思う。
その典型例が高校の文理分け教育で、生徒は偏った教養を身につけてしまう。
受験のためだけに視野の狭い人間を育てるのはおかしい。

(質問) 独創のためには成功と同じぐらい「失敗」も大事。
学校の授業は50分で終わらせるために、実験でも失敗させない。
だから子どもは科学を好きにならない。

佐藤 失敗は大事だ。とはいえ研究で食べていく研究者にとって
失敗だけだとつらい。若い人には「失敗して当然だからやってみなさい」と
余裕を持って接したい。

束村 成功も失敗も大事だと思う。両方の繰り返しによって、研究は進んでいく。

元村 最後に独創のキーワードは。

永山 「垣根を取り払い」「挑戦する」「失敗も許容する」「勇気を持つ」。
これは病気腎移植を実施した四国の医師の行動規範でもあるが、
彼の行動は独善的。独創的な科学技術の成果は社会の一部であり、
独善的になってはいけない。

束村 「多様性」。
会社でも「次はこういうプロジェクトをやろう」という時、
パッと男の顔を思い浮かべるのではなく、女性も忘れないでほしい。

佐藤 「高い夢」を掲げて「チャレンジ精神」を持つことで、夢はかなう。

◇「燃える集団作り」を--安友雄一・ブラザー工業プリンシパル

ブラザーは、08年に創業100年。
ミシンのイメージが強いが、現在では売り上げの70%以上は
プリンターやファクス。
私は通信事業を主とする新規事業を手がけてきた。
まず、お客さんが欲しいゲームソフトを店先で作るソフトウエア自動販売機
「TAKERU」を開発。
86年に実用化したが、通信環境が現在ほど整っておらず普及しなかった。
92年には通信カラオケ「JOYSOUND」を事業化。
TAKERUの技術を利用し、200億円の事業に育った。
00年には着メロサービスも始め、月に35万人ずつ有料会員が増える
爆発的なヒットに。
現在はネットワークにおける次世代の要素技術開発や事業化に取り組んでいる。

事業がうまくいかない時期には、経営者が「囲ってやる」必要がある。
「燃える集団作り」も重要。
燃焼には、火種(テーマ)、材料(人材)、酸素(資金・設備・組織)がいる。
水をかけないような仕掛け作りが必要。

◇流動性も大切な要素--永山悦子・毎日新聞東京本社科学環境部記者

現在は科学技術なしで生きていけない社会になっている。
だが私は高校1年で理数科目が分からなくなり、文系に。
科学記者として働くようになって、科学って実は面白かったことを思い出した。
記事を通して科学技術との上手な付き合い方を提案している。

独創性を測る分かりやすい尺度はノーベル賞の数だが、
日本は欧米の後塵を拝している。
考えられる原因は、「専門外への無関心」。
異分野からのアプローチに門戸を閉ざし、新しい出会いの機会が閉ざされる。
高校での文理分け教育はその典型例。
2月に公表された政府の「イノベーション25」中間とりまとめに、
「文系・理系区分の見直し」が、緊急課題の一つに。

もう一つは「固定化した社会システム」。
アメリカでは研究拠点を動くと「おめでとう」といわれるが、
日本では評価されにくい。流動性も大切な要素。

◇成果に公平な評価を--佐藤孝明・島津製作所ライフサイエンス研究所主幹研究員

島津製作所は、分析技術で研究を支援してきたが、
最近は病気の診断や創薬の支援まで広げている。
今は東京大医科学研究所の敷地内に研究室を置いて、
卵巣がんや乳がんの診断に役立つ技術を共同研究。

採取したての組織だけでなく、10年前の古い組織でも分析できる技術を開発。
一人の患者さんを過去にさかのぼって調べることができる。

がんには個性があるので、抗がん剤でも効く人と副作用で亡くなる人とがいる。
遺伝子を調べて必要な薬を必要量投与する「オーダーメード医療」が重要。
薬との相性を血液一滴で調べられる機器を開発し、3カ所の病院に設置。
国内外の9カ所で研究した中で感じた「独創的な人材育成」のカギは、
小さくても成功経験を積むことと、組織が継続的に支援すること。
さらに研究を支える事務担当者の能力や、成果に対する公平な評価がないと、
若い人にチャンスを与えられない。

◆基調講演
坂村健・東京大大学院情報学環教授

イノベーションは世界的に話題。
日本では昭和31(1956)年の「経済白書」で「技術革新」と訳された。
その結果、日本では技術をベースにした革新的なことを指すようになった。
だが、イノベーションの本来の意味は「利益を生むための差を生む行為」であり、
技術に限ったことではない。
これから必要なのは技術革新そのものというより、
その技術に見合った革新的な制度や方法、そして皆が共通に使える基盤作り。

イノベーションには2種類。「要素技術型」と「インフラ型」。
要素技術型は、液晶や半導体などの技術開発で、日本が得意としてきた。
一方インフラ型は銀行や高速道路、インターネットなどのように、
日本人が(概念を)作ったものではない。

要素技術型では、イノベーションの成果を製品としてまとめあげ
消費者に届けるまでに多くの「すり合わせ」を必要。
液晶テレビ1台を作るにしても、さまざまな分野の専門家が集まって調整。
日本人はすり合わせは非常にうまいが、手間も時間もかかる。

一方、インフラ型は、最低限の仕組みが分かっていれば、
すり合わせをしなくても、それを基にして、
さらに新しく多様なイノベーションが効率的に生み出せる。
これから少子高齢化が進み、
労働力が減少する日本に「効率化」の視点は重要。

ただ、インフラ型は「死の谷」と呼ばれる「もうからない期間」が長い。
例えばインターネットは60年代に最初の論文が発表されたが、
普及して利益を生み始めたのは2000年代。
この「死の谷」の期間を、米国防省が金を出して支えた。
インフラ型の実現は1個人、1企業では無理で、
産官学がコミュニケーションしなければならない。

理系の人には「技術を何の目的で、どう使うのかを考える」、
文系の人には「自分は理系ではないから、と逃げない」ことをお願いしたい。
文理の双方にコミュニケーション能力が必要。
日本にはコミュニケーション能力に欠ける人が多い。
独創的な人が一人だけいても何もできない。

21世紀の日本のイノベーションは、
日本全体でイノベーションを起こす発想とそれをなしとげる人材を
育てる発想が欠かせない。
そのためには、インフラ型を大切に考える人材を増やすことが鍵に。
==============
<基調講演>坂村健・東京大大学院情報学環教授
<パネリスト>佐藤孝明・島津製作所ライフサイエンス研究所主幹研究員、
束村博子・名古屋大大学院助教授、安友雄一・ブラザー工業プリンシパル、
永山悦子・毎日新聞記者大阪会場
==============
◇やすとも・ゆういち

北海道大大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。
81年ブラザー工業入社。現在、NID(Network & Imaging Devices)開発部で
次世代技術開発に取り組む。

◇ながやま・えつこ

慶応大法学部法律学科卒業。91年、毎日新聞に入社。
和歌山支局、前橋支局などを経て02年から科学環境部。
生命科学や医療を担当。

◇さとう・たかあき

北海道大卒業後、味の素中央研究所、癌研究会癌研究所、理化学研究所、
コロンビア大医学部病理学部准教授などを経て03年から現職。医学博士。

◇さかむら・けん

51年東京都生まれ。79年慶応大大学院工学研究科博士課程修了。
東京大理学部助教授を経て、00年現職。
84年からコンピューターの基本ソフト「TRON」を構築。
専門はコンピューター・アーキテクチャー(電脳建築学)。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20070320ddm010040107000c.html

March 30, 2007

リンパ球T細胞 新しい役割、免疫疾患治療に光

(毎日 3月22日)

リンパ球の一種、T細胞が持つ新たな役割を
京都大再生医科学研究所の坂口志文教授(免疫学)のグループと、
大阪大微生物病研究所の菊谷仁教授(同)のグループがそれぞれ発見。
坂口教授らは、臓器移植時の拒絶反応や花粉症などの免疫反応と
その抑制に中心的な役割を果たす二つのたんぱく質を特定。
菊谷教授らは、神経難病「多発性硬化症」やアレルギー性皮膚炎を
起こす炎症反応を促進するたんぱく質を見つけました。

ともに、これらの免疫疾患治療につながる成果として、
英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載。

坂口教授らは、ヒトやマウスの細胞を使った実験で、
まずT細胞に不可欠なたんぱく質「AML1」が、
T細胞の免疫反応を引き起こすのに必要なことを明らかに。
次にT細胞の1割を占め、正常な細胞など無害な抗原を攻撃しないよう
他のT細胞の働きを抑制している「制御性T細胞」に着目。
「AML1」が減少すると、制御性T細胞が持つ「Foxp3」というたんぱく質が
働けず、この細胞の機能自体が失われることを確認。
制御性T細胞では、二つのたんぱく質が結合することで機能を調節、
免疫反応を抑制していることが分かりました。

菊谷教授は、動物の体が出来る時、きゅう覚の神経を作る役割を果たす
「セマフォリン7A」というたんぱく質が免疫系でも発現しているため、
免疫反応にもかかわっていると考えました。
この物質を欠いたマウスが、炎症反応が起きにくいことを実験で確認。
アレルギー抗原によりT細胞が活性化するとセマフォリン7Aが現れ、
マクロファージという免疫細胞と結合して刺激を与え、
炎症物質の分泌を促していることを突き止めました。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=44547&categoryId=&sourceType=GENERAL

理系白書シンポジウムin東京・大阪:世界をリードする独創的な人材育成(その1)

(毎日 3月20日)

理系白書シンポジウム「世界をリードする独創的な人材育成」
(毎日新聞社主催、ブラザー工業協賛)が、東京と大阪で開催。
(コーディネーター:元村有希子・毎日新聞科学環境部記者)

◆東京会場

元村 「独創的な人材」について議論したい。

安友 入社当時の直属の上司は、
「10人中8人が反対するテーマしかやるな」と言う人。
8人が賛成するテーマは陳腐化するから、
誰も気づかないテーマを徹底的にやれということ。

江口 インクスの新人研修は独創的な人材を育てる狙い。
山田眞次郎社長の方針は「任せる」。
指示しなくても、新人は新しい部品の規格化やデザインなど、
自分なりのテーマを見つける。「お題」を与えないことで充実した時間に。

元村 「独創をはぐくむ環境」として多様性は重要だが、
企業社会は放っておくと男性ばかりになってしまう。

束村 狩猟時代には筋骨隆々の男が重宝だったかもしれないが、
今は指一本で大きな機械を動かせる。
男女差より個人の能力を見極めることが必要。
科学分野の女性比率は日本が11・9%、米国は32%。
大学進学率は大きく変わらないのに、人材を無駄にしていないか?

西川 日本では出身校の大学院に進む傾向が強く、
留学生の受け入れにも消極的。
均質さが好きなのか、「出る杭は打たれる」雰囲気はあると思う。

元村 独創にスピードは大切?

安友 自分が独創的だと思っても、同じことを考えている人は世の中に10人はいる。
通信カラオケの場合、92年に発表したらライバル社が1カ月後に追随。
開発作業は同時進行だったと思う。

元村 アインシュタインの相対性理論が約70年後、カーナビに応用された。
そういう時間感覚は企業では難しい。

西川 大学や国立研究所でも最近は任期付きの研究者が増えている。
2~3年で結果を出さないと次の職がない。

元村 トップは新しいことに保守的になりがちだが、若い人の情熱は十分か?

江口 私は新人研修の時の提案がプロジェクトになった経験がある。
工場を見て回って改善策を出したら「面白いから、明日からやってよ」と。
私にとっては大きな成功体験。

安友 若手は必死になって事業計画を持ってくる。
しかし上のレベルでもたもたしていると、やる気がしぼむ。
経営者の役割は若い人に使命を与え、結果を出し、意思決定すること。

(質問) インクスのように無人化を進めるなど「人は消費するもの」という
雰囲気は、若い人を育てる立場としてはさびしいのだが。

江口 やり方が決まっている仕事で独創性を入れると、
品質が落ちたり迷った結果のミスが起きる。
だからベテランの仕事で肩代わりできるところはパソコンで制御し、
生まれた余裕を独創的なことに使う。
社会は複雑になり、考えなければいけないことは山ほどある。
その時間をたくさん確保したい。

(質問) 少子化対策は男女とも残業をゼロにすることが最大の特効策と思うが。

束村 残業したくない人はしなくてもいい多様な社会にすれば、子どもは増える。
女性労働力率が高くても、出生率が高い国もある。
日本は逆。育児支援制度が未熟だからだ。
ある調査では、育児休暇を「取りたい」男性は10人中7人だが、
実際「取った」人は1000人中3人。

(質問) この春大学生になる。「ここなら独創性がつぶされない」という
環境はどう選べばいいのか。

束村 大脳で考えないことが重要。「好き」かどうか。
気持ちに素直に従うことが成功の秘けつ。
「こういう必要がある」と理屈をこねてもうまくいかない。

元村 最後に独創のキーワードを。

安友 「オリジナリティー」「スピード」「とりあえず始める勇気」。
これまで十いくつ事業をやって、成功したのは3割ぐらい。
結構失敗もしているが、クビになっても命まではとられない。
軽い気持ちで始めればいい。

西川 「自由」と「摩擦」。
異なるいろんな人同士の摩擦から新しいことは生まれる。

江口 「任せる」「見守る」「異質との出会い」。
男性と女性、先輩と後輩、文系と理系のコミュニケーションが必要。

◇ものづくりに革命を--江口幹・インクスコンサルティンググループシニアコンサルタント

経済の復調の背後には、熾烈な競争がある。
携帯電話は、発売から3カ月で販売台数が3分の1に。
自動車は、8カ月で2分の1。短期での開発と技能継承が課題。

インクスは90年創業の金型メーカーで、平均年齢27.8歳という若い会社。
団塊世代のノウハウを徹底的に分析し、他人にもできることを突き詰めると、
ベテランにしかできない仕事は10%。
これらをもとに、これまで62社の工期を平均65%短縮。
また、昨年には「零工場」という新工場も作った。
従来、金型は職人が1個ずつ手作りしていたが、
「零工場」ではロボットが作る。

ものづくりに革命を起こしたい。
人材育成では「飛び抜けた目標に取り組むことを楽しみ、
新しい発想を生み出す人材に育てる」が目標。
入社2カ月目で自動車を解体させ、2万の部品をネジ1本まで観察。
まず、やらせてみることが独創的な人材育成のきっかけに。

◇「目利き」育成も重要--西川拓・毎日新聞東京本社科学環境部記者

昨年、「理系白書」で日本の科学技術戦略を取り上げた際に
取材した元文部官僚の重藤学二さんが印象に。
02年にノーベル賞受賞した小柴昌俊・東大特別栄誉教授を支援した人。

小柴先生が超新星爆発のニュートリノをとらえた「カミオカンデ」を建設する際、
実は施設整備費名目の申請を忘れた。
そのままでは大型の土木工事はできなかったが、
重藤さんが東大経理部を説得して申請を出させ、建設にこぎつけたという。

元々、別の目的で作られたカミオカンデをニュートリノ検出に利用したのは
小柴先生の「独創」だっただろうが、重藤さんの後押しがなければ、
超新星爆発に間に合わなかったかもしれない。

科学が複雑化、専門化した現在、個人の独創だけでは形にならないことが多い。
独創を評価し、支えることのできる「目利き」を育てることも重要だと思う。

◇女性を生かし活性化--束村博子・名古屋大大学院生命農学研究科助教授

日本の女性エンパワー指標は、80カ国中43位と先進諸国の中でも極端に低い
(国連開発計画、05年)。
ヒトの生物学的な性は、基本形は女。
受精卵に偶然Y染色体が入れば男になる。
主に生殖にかかわる機能が違うが、その他は大差ない。
人としての価値にむろん性差はない。

脳の性差には一定の科学的根拠がある。
機能では男性が空間認知、女性は言語刺激への反応が活発だが、
知能指数に性差はない。ただ、これらは平均値の話。
平均でみると「男性は背が高い」が、個人で見ると女性より背が低い男性はいる。
仕事における資質も同様で、個人と平均値の問題を混同しないことが重要。
独創的な人材も「個」を認めることから育つ。
経済活動の半分以上は女性が担う。
女性を生かす会社は利益率も高い。
女性が働きやすい会社は男性にも働きやすいだろう。
女性を多く登用し能力を平均値として生かせば、社会は活性化するはず。

◆基調講演
藤嶋昭・神奈川科学技術アカデミー理事長

近年、光触媒を利用した技術が普及してきた。
中部国際空港ビルのガラスには酸化チタンがコーティングされており、汚れず曇らない。

私が酸化チタンに出合ったのは大学院修士1年の時。
当時、ドイツの研究者が酸化亜鉛に光を当てると酸素ができるという実験。
その実験では結晶が溶けてしまうが、硬い酸化チタンなら溶けないと思った。
やってみると、実際に水が分解されて酸素ができた。
光を当てて酸素が出る反応は光合成と同じ。
生命にとって一番大事な反応を再現でき、感動した。

指導してくれた本多健一先生(当時助教授)と72年に連名で論文を発表。
石油ショックと重なり、海外の研究者は(酸化チタンの反対側の白金電極から)
水素が出ることに注目。
大学の屋上で1平方メートルの酸化チタンを太陽に当てたら、
1日で7リットルの水素が採れた。
しかし、7リットルの水素は燃やすと一瞬。
エネルギー源としての利用は、効率が悪い。環境問題に応用しようと発想を転換。

着目したのは殺菌効果。
タイルに酸化チタンをコーティングして光を当てると、大腸菌などを殺菌。
手術室の壁タイルに使うと、消毒しなくても空気中の菌までなくなった。

また、高速道路の照明は排ガスや油で汚れて清掃が大変だったが、
カバーガラスを酸化チタンでコーティングしたら、汚れなくなった。
さらに、酸化チタンは水になじみやすいので、水滴ができない。
車のサイドミラーなどに応用。

光触媒分野は、日本の競争力が世界でも上位と評価。
最終的には3兆円市場になるとの予測も。
可視光で反応して室内で使える新材料の開発がポイント。

研究にはセンスが必要。
ひらめきがあり、独創性を持つと同時に、融通性があることも大切。
予想通りにいかないことの中にこそ、大魚がいるかもしれない。
それに思い至ることが必要。

研究を成功させる要件は、金、人、雰囲気。
研究費はある程度あればいい。それよりも人。もっと大事なのは、
その集団が持つ雰囲気。
道元の「正法眼蔵」にある、
「霧の中を歩めば、覚えざるに衣湿る」という言葉が示すように、
素晴らしい業績はそれをはぐくむ雰囲気から生まれる。
さらに「プラスα」が必要。
研究の欠点を補うもう一工夫があって初めて形に。
==============
<基調講演>藤嶋昭・神奈川科学技術アカデミー理事長
<パネリスト>江口幹・インクスコンサルティンググループシニアコンサルタント、
束村博子・名古屋大大学院助教授、
安友雄一・ブラザー工業プリンシパル、
西川拓・毎日新聞記者東京会場
==============
◇えぐち・たかし

東京大大学院総合文化研究科(広域科学専攻)修士課程修了。
03年インクスに入社。
複数の自動車部品メーカーの工程分析や効率化のコンサルティング。

◇にしかわ・たく

東北大大学院理学研究科(地球物理学専攻)修士課程修了。
93年、毎日新聞入社。佐世保支局などを経て03年10月から科学環境部。
原子力、先端技術を担当。

◇つかむら・ひろこ

名古屋大大学院博士課程修了。農学博士。98年から現職。
専門は生殖科学、神経内分泌学。06年から名古屋大男女共同参画室長。

◇ふじしま・あきら

71年、東京大大学院工学系研究科修了。
神奈川大講師、東京大教授を経て、03年から現職。東京大特別栄誉教授。
大学院生だった67年、酸化チタンに光を当てると水が分解される
「光触媒反応」を発見。専門は光電気化学。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20070320ddm010040087000c.html

March 28, 2007

遺伝子組み換えで「マラリア耐性の蚊」を開発

(CNN/REUTERS/AP 3月20日)

米ジョンズホプキンス大学の研究者が、熱帯から亜熱帯に広く分布し、
蚊が媒介する感染症マラリアの病原体「マラリア原虫」に耐性のある蚊を、
遺伝子組み換え技術を利用して開発したと発表。

ジョンズホプキンス大学分子生物学・免疫学部の
ジェイソン・ラスゴン助教授は、まだ実験室段階の話だと強調した上で、
マラリア撲滅に向けた一歩になるのではないかと。

ラスゴン助教授らは、遺伝子組み換え技術を用いて開発した
マラリアに耐性のある蚊を、耐性のない通常の蚊と一緒に、
同じ個体数で飼育。
飼育環境下には、マラリア原虫に感染したマウスを置きました。

その結果、9世代後には、蚊の集団のうち70%を耐性型が。
このことから、マラリア原虫の存在条件下では、
耐性のある個体は耐性のない個体よりも生存率が高い。
理論的には、マラリア耐性の蚊を自然環境に放せば、
マラリアの感染拡大を防ぐことができます。

しかし、現段階ではあくまでも「実験室内」の話であり、
この耐性のある蚊を自然界へ放すことはない、と。
特に、マラリアに耐性はあるものの、
他の寄生虫に対する耐性がないため、自然界での生存は難しい。

米疾病対策センター(CDC)は、
マラリアによる死者が世界で年間70─270万人に達すると推定。
----------------------------
日本人にはなじみの薄いマラリアですが、
グローバル化による人の交流、ペットの流入、
温暖化に伴う生態系の変化など、
将来日本でもマラリアが発生する可能性は高いです。
遺伝子組み換えによる効果はどのくらいかは分かりませんが、
こうした対策も考えなければならないでしょう。

http://cnn.co.jp/science/CNN200703200026.html

March 22, 2007

ビタミンのサプリ、「延命効果なし」の報告が波紋呼ぶ

(AP 3月11日)

欧米を中心に、世界で数千万人が利用しているといわれる
ビタミン、ミネラルの栄養補助食品(サプリメント)には、
寿命を延ばす健康効果がないとの研究結果を、
デンマークの学者らが発表。

医療に関する研究の評価を続けている国際的な専門家グループ、
コクラン共同計画が、米医学誌「JAMA」で報告。
これまでに世界各地で実施された68件の研究の成果を
統合、分析した結果、サプリメントの使用と死亡率の間には関連性がない。

同グループが分析したのは、ビタミンA、C、E、ベータカロチン、セレンなどの
サプリメントの効果を調べた研究。
標準量をはるかに超える摂取を続けたケースや、
偽薬を与えられたケースも含め、対象者を合計すると23万人余り。

報告によると、さらに「信頼度が高い」と判断された
研究47件(対象者約18万人)に絞って分析したところ、
一部のサプリメントでは死亡率がかえって高くなるとの結果も。
摂取した人の死亡率は通常に比べ、ビタミンAで1・16倍、
ベータカロチンで1・07倍、ビタミンEで1・04倍と算出。
クリスチャン・グルード博士(デンマーク・コペンハーゲン大学病院)は、
「巨大なサプリメント業界が効果を立証しようと研究を
繰り返しているにもかかわらず、その目標は達成されていない」。

この発表に対し、専門家からは批判が集中。
栄養学者のミーア・スタンファー教授(米ハーバード大)は、
「それぞれの研究の対象者や実施期間、摂取したサプリメントの内容には
大きな差があり、統合するには無理がある」。
また、サプリメント業界団体の研究者、アンドリュー・シャオ氏は、
同グループが分析対象となる研究を恣意的に選んでいると批判。

一方、米タフツ大のアリス・リクテンスティーン教授は、
「ビタミンなどを取ろうとする時、サプリメントには頼るべきでないということ。
栄養は食物から摂取すべきだ」。
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サプリメントはあくまでも補助食品です。
サプリメントに効果がある場合とない場合と状況によって違いが
あるので、はっきりしたことは言えません。
何にしても、ある食品だけを摂って、劇的な効果がある!
ということはないです。
納豆ダイエット騒ぎにならないように気をつけないといけませんね。

http://cnn.co.jp/science/CNN200703110001.html

March 21, 2007

赤ちゃんの記憶は短時間で喪失と 米研究者が学説発表

(AP 3月11日)

人間は通常、3-4歳以前のことをほとんど覚えていない。
これは、乳幼児に記憶する能力がないからではなく、
覚えてもごく短時間で忘れてしまうから――とする学説が、
このほど開かれた米科学振興協会(AAAS)の年次会合で発表。

乳幼児期の記憶の欠落をテーマにした討論会の中で、
米デューク大のパトリシア・J・バウワー氏は、
記憶力は一般に考えられているより早い時期に発達していると主張。
脳内のネットワークは、生後6カ月から1歳半までの時期に統合され、
これによって物事を覚えることが可能に。
ただ、記憶の持続時間は生後6カ月では約24時間にとどまり、
2歳前後でようやく1年間まで延びることが分かりました。

記憶の持続時間を測るため、ある実験を実施。
子どもの前でコップの中に積み木を入れ、
もう1つのコップを上からかぶせて「ガラガラ」のようなおもちゃを作ります。
一定の時間を置いて同じコップと積み木を見せ、
子どもがガラガラ作りをまねようとするかどうかを調べました。
この作業を子ども自身が思いつくとは考えにくいため、
まねる様子がみられた場合は、見せられた作業を記憶していると判定。
バウワー氏は 、「子どもの記憶は目の粗いざるのようなもの。
ざるの目は、大人になると詰まってきます」。

討論会では、カリフォルニア大デービス校のリサ・M・オークス氏も
研究の成果を報告。乳児が見慣れない物をじっと見つめることに着目して、
記憶の持続時間を計測。
その結果、「乳児には優れた記憶力がある」との結論に達したという。
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これはなかなか面白い研究ですね。
乳児にも優れた記憶力がある!ということは、
何となく分かるような気がします。
言葉を覚えるのは、何度も記憶にインプットされるからでしょう。
おいらの場合は、そんな記憶などさっぱりないですが・・・。

http://cnn.co.jp/science/CNN200703110002.html

March 20, 2007

人工リンパ節で免疫力20倍 理研、マウスに移植

(毎日 3月16日)

人工的に作成したリンパ節を免疫力の低下したマウスに移植し、
免疫機能を正常マウスの約20倍に高めることに理化学研究所が成功。
高い免疫力は1カ月以上持続。
免疫力の強化は、エイズなどの重症感染症やがんなどの治療に有効。

リンパ節は、わきの下や頸部などにあり、ヒトの体に入ったウイルスなどの
異物(抗原)が運ばれてくる組織。
リンパ節中の免疫細胞が異物と結合すると免疫反応が始まり、
異物を排除する抗体を作り出します。

研究チームは、たんぱく質の一種のコラーゲンを3ミリ角のスポンジ状にし、
免疫反応に重要な2種類の細胞を染み込ませました。
これを正常なマウスの体内に移植すると、リンパ節に類似の組織が形成。
複数の免疫細胞が本物と同じ比率で存在し、血管も形成。

この人工リンパ節を、免疫不全症を起こしているマウスに移植したところ、
異物に対する血中の抗体量が正常マウスの約20倍にも高まり、
1カ月以上持続。
-------------------------
これは非常に興味ある実験ですね。
人工にリンパ節の組織を形成することができるのなら、
低下している患者や高齢者の免疫系を根本から改善することが可能に。
おいらはアレルギーがひどいので、根本から治したい・・・

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=44151&categoryId=&sourceType=GENERAL

March 19, 2007

寝ている間に車を運転 睡眠薬の異常行動を警告

(共同通信社 3月16日)

米食品医薬品局(FDA)は、すべての睡眠薬について、
生命に危険のあるアレルギー反応や夢遊病のような
異常行動が起こる副作用があるとして、
製薬会社に注意書きの内容を強めるよう求めました。

異常行動には、眠っている間に起き出して車を運転したり、
電話をかけたり、食事をしたりする行為が含まれるという。

FDAが指摘した13品目のうち、
ハルシオンやアンビエン(日本名マイスリー)は日本で販売、
米国で販売されている武田薬品工業のロゼレムも対象に。

アンビエンについては昨年5月、
故ケネディ米大統領のおいのパトリック・ケネディ下院議員が
服用後に議会敷地内で自動車事故を起こしたことが話題に。

FDAは、薬の種類によって異常行動の発生頻度が異なるとし、
各製薬会社に対して発生頻度を確認するための臨床研究を行うよう勧告。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=44136&categoryId=&sourceType=GENERAL

March 17, 2007

人工股関節:長持ち技術開発 東大病院などで臨床試験へ

(毎日 3月9日)

人工股関節の摩耗を防ぎ、従来より5倍以上も長持ちさせる新技術を、
石原一彦・東京大教授(バイオマテリアル工学)らの研究グループが開発。
近く東大病院などで臨床試験に入るという。

人工股関節は、高齢者に多い変形性関節症や関節リウマチなどの
病気の場合に用いられます。
合金でできた脚側の球状の骨頭部を、骨盤側に埋めたポリエチレン製のカップで
くるんで関節の代わりにする仕組みで、
国内では年間約10万件の手術が行われているという。

しかし、使っているうちに摩耗してポリエチレンの微粉末が生じ、
周辺の骨を溶かすため関節が緩んできます。
痛みや歩行障害が生じるため、
患者は10~15年で取り換えなければならないという欠点。

石原教授らは、生体や水になじみやすい「リン脂質ポリマー」という
新しい高分子化合物を開発してポリエチレン製カップの内壁を覆い、
関節内に水の薄い膜を作ることで摩耗を防ぎました。
65年分の歩数に相当する6500万回の稼働テストでもほとんど摩耗なし。

石原教授は「一度手術すれば生涯使え、
患者の負担や医療費を大幅に減らせる」。
-------------------------------
人間の関節は、年とともに磨り減ってきます。
そのために歩行障害となって、寝たきりや不活動の原因に。
体に負担がかからないようにするためにも、
このような技術がもっともっと発達してほしいです。
もちろん、健康なうちに関節や筋肉を鍛えておくことは大切です。
おいらは不活動ぎみ?なので、鍛えないといけませんが・・・。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070310k0000m040041000c.html

March 16, 2007

理系白書’07:第1部 科学と非科学/6止 道半ばの地震予知、未科学から脱却へ

(毎日 3月7日)

富士山を望む廃校の屋上にアンテナがいくつも並びます。
異なる周波数の電波や放電現象をキャッチする地震予知研究の観測装置。
データは、3キロほど離れた東海大海洋研究所地震予知研究センターに。

センター長の長尾年恭教授(51)=固体地球物理学=は
「私たち以外にも、他の研究者が手がけている予知手法の観測装置を設置」。
電波を使う研究だけを見ても、異なる周波数帯に着目し、
異常現象をとらえる方法が幾つか考案。
「同じ場所と条件で観測していれば、ある方法で異常をとらえたとき
他の方法と比較できる。これは科学に必要な手続きです」

長尾教授は以前、地震が起こる地下の温度構造を調べていました。
ギリシャの研究者が「地中を流れる電流の観測で地震予知に成功」との
発表(84年)を聞きテーマを変えました。

95年の阪神大震災でも、電磁波異常が事前に観測。
翌年度から国の研究費もつきました。
長尾教授らは、4億4000万円かけ約40カ所に地中の電磁波観測点を設置。
マグニチュード(M)5以上の地震では、震源から半径20キロ以内で
発生前に電気的な異常が観測されることをほぼ突き止めました。

だが、東海大への国の支援は5年で打ち切られ、観測点は約10カ所に減少。
「観測点の近くで比較的大きな地震が起きなければ、価値あるデータは集まらない。
10年間は観測しないと成果は出ない」。

国は地震予知研究計画を策定した65年以降、
約3000億円の税金を予知研究に投入。
その大半は、東海地方で発生が予測されるM8級の東海地震を中心に、
地震が起きる仕組みを地殻の破壊などから力学的に解明する基礎研究に。
日本の観測網の精密さは世界一を誇り、
今後30~100年単位での「長期発生確率」を算出することで
自治体の防災対策も進みました。
しかし、避難行動などに直結する「短期予知」(直前予知)は実現せず。

国の測地学審議会は、97年の報告書で
「地震予知は将来の課題で実用段階の技術ではない」と、事実上白旗。
こうした行き詰まり感から、力学的な手法に頼らない
「予知」研究が生まれました。
しかし、多くは長尾教授らのように「非主流」扱い。

元大阪市立大理学部長の弘原海清さん(74)=構造地質学=は、
阪神大震災後、地域住民1500人以上から
「動物が異常行動をした」「井戸水が枯れた」「地震雲が出た」といった
異常現象(宏観現象)に関する証言を集め、話題に。

弘原海さんは、地震予測研究NPOの理事長として、
地殻変動の際、大気中に増える放射性物質から変化してできる
イオンを24時間態勢で観測。
今年1月には、有料(個人1年1万5120円)で希望者へ情報提供。
放射線医学総合研究所が今年1月に発表した
「阪神大震災の直前、大気中の放射性物質濃度が上がった」という観測結果は、
弘原海さんらの「イオン増加」説を支持。

ただ、観測点は今のところ全国11カ所しかなく、データの蓄積も十分ではない。
弘原海さんは「私は地震の専門家ではないが、科学として認められる途上の
『未科学』であっても、人命を守るためにやらなければと思った」。

だが、国の支援で地震予知研究に取り組んできた
山岡耕春・東京大教授(48)=地震学=は、これらの研究の負の影響を心配。
「地震が地殻の破壊で起こる力学現象である以上、
予知も力学的な従来の地震学の手法で取り組むのが正攻法。
地震の位置と規模については一定の成果も出ている」。
そのうえで「僕たち研究者が社会に研究状況を分かりやすく
伝えてこなかった責任もあるが、十分な科学的検証を経ない予知は、
社会の見方を間違った方向に持っていく危険がある」。

弘原海さんが進める計画の観測点の一つを担当する
神奈川工科大の矢田直之・助教授=熱工学=は、
「イオン計測で地震が予知できるかどうかは分からない。
今はデータを蓄積する段階」。
研究室ではナマズを飼い、地中の電圧変化も観測。

研究室の学生が06年以降、イオン観測データから、
地震の発生を103回予測し、実際に50回起きたという。
一方、記者が取材に訪れた2月23日には
「午後にM5前後が北日本で」と予測していたが起きなかったです。
「当たったのは偶然かもしれない。だが、工学部出身の技術者として、
人々が求める予知装置を早く作りたい」(矢田助教授)

可能な限りデータを集め仮説を立て、
あらゆる角度から検証する手続きが「科学」。
地震研究では「予知」という困難な目標を共有する研究者らが、
それぞれのやり方で「未科学」からの脱却を目指します。

「電磁波に着目した予知には将来性がある。だが現時点では課題も多い。
今やることは実際に予知することより、あらゆる事例をチェックすること」と、
長尾教授は信条を語りました。

◇火山噴火→前兆の把握は地震より容易

火山の噴火は現在、「噴火まで数日~数時間前」の精度での予知が可能。
00年3月の有珠山では、予知に基づき近隣自治体に避難指示が出され、
犠牲者はゼロ。
04年の浅間山でも、爆発的噴火の前に火山情報が発表。

地震予知との大きな違いは、観測対象を絞りやすいこと。
火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣・東京大教授(マグマ学)は
「噴火前には地下から高温で大量のマグマが上昇してくるため、
地震や地殻変動、ガス噴出などの前兆現象が起きる。
これをとらえる観測技術もある。十分な観測網があれば、
噴火時期の予知は地震より把握しやすい」と説明。
ただ、規模や形態についてはなお研究が必要。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20070307ddm016070174000c.html

March 15, 2007

理系白書’07:第1部 科学と非科学/5 過熱、脳ブーム

(毎日 3月1日)

2月上旬、東京都町田市で開かれた講演会「元気な脳のつくりかた」
(町田市私立幼稚園協会主催)。
約700人の保護者に、森昭雄・日本大教授(脳神経科学)が語りかけました。
脳の画像を示しながらの講演は刺激的な警告に満ちていました。

「15年間、ゲームを毎日7時間やってきた大学生は無表情で、
約束が100%守れない」、「ゲームは慣れてくると大脳の前頭前野を
ほとんど使わない。前頭前野が発達しないとすぐキレる」

森教授は02年、「ゲーム脳」仮説を提唱。
テレビゲームをしている時には脳波の中のベータ波が低下し、
認知症に似た状態になると指摘。
その状態が続くと、前頭前野の機能が衰えると警告。
単純明快なストーリーはマスコミに乗って広がり、
暴力的な描写に眉をひそめる教育関係者や、ゲームをやめさせたい親に支持。

しかし、ゲーム脳はニセ科学だとする専門家の批判は強い。
この日も「ニセ科学を教育に持ち込むのは問題だ」との意見が7件、
後援する市教育委員会に寄せられました。
市教委は「(ゲーム脳という)考え方があることを紹介する講演会。
判断は聞いた人にゆだねたい」。

批判される理由はいくつかある。
森教授は、一般向けの本や講演を通して仮説を広めてきました。
本来、仮説は他の科学者が同じ条件で試すことで初めて科学的な検証を受けるが、
その材料となる論文はいまだに発表されていないです。

手法にも批判が。
森教授は自ら開発した簡易型脳波計による計測で仮説を組み立てたが、
複雑で繊細な脳機能をその手法でとらえるのは不可能、
というのが専門家の共通した見方。

科学界からの声に、森教授は「脳波を知らない人や、
ゲーム業界の支援を受けている人の主張だ」と反発。
「電極を増やした精密計測も進めており、論文はいずれ書く」。
最近になって「ゲームはいけない」との主張を、
「1日15分なら大丈夫。共存も考えなければ」と。
こうした一貫性のなさも不信を持たれる一因。

ゲームは脳に悪いのか?
これに答える科学的材料は現時点ではないです。

東北大加齢医学研究所の川島隆太教授(脳機能イメージング)は
今、最も注目される脳研究者の一人。
97年に、ヒトだけに発達している脳の前頭前野が、
人間らしい「賢さ」「理性」にかかわっているという仮説に基づき、
先端計測技術で検証を始めました。
国のプロジェクト「脳科学と教育」で、
単純計算や音読が前頭前野を活性化させることを見つけ
「学習療法」と名付けました。

03年に発表した論文では、認知症の高齢者16人に半年以上
学習療法を受けてもらった結果、認知機能テストの成績が上がったと報告。
何もしなかった16人の成績が低下傾向だったことから
「認知機能改善に効果がある」と考察。

こうした成果を企業が応用したのが、脳を鍛えるという意味の「脳トレ」。
06年の流行語となり、川島教授の似顔絵が登場する
任天堂のゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は、
続編も含め1000万本以上を売り上げ。

川島研には、年間数十社から共同研究の依頼が。
東北大が半分近くに絞って共同研究契約を結びます。
商品化は企業が担当し、契約料や売り上げの一部は大学の収入に。
川島教授は、産学連携の一方で多くの共著論文を発表し、
昨年活躍した科学者を表彰する文部科学省科学技術政策研究所の
「ナイスステップな研究者」にも。

ただ、脳トレの過熱を心配する声も。
日本神経科学学会会長の津本忠治・
理化学研究所脳科学総合研究センターユニットリーダーは、
「川島氏の研究は科学的な手続きを踏んでいるが、
認知機能の改善が本当に学習療法だけによるかはさらなる研究が必要。
『改善した』という部分だけが拡大解釈され広がることで、
計算さえやれば認知症にならないと思い込む人が出てくるかもしれない」。

川島教授は、「(脳トレは)脳研究の重要性を理解してもらうための
社会貢献の結果。もちろん、ここまできてウソだったら
科学者の資格はないと覚悟しているが、
社会への出方を完全に制御はできない」。

脳に関する仮説が性急に応用される傾向は各国にあり、「神経神話」と。
OECD(経済協力開発機構)教育研究革新センターは
01年の報告書で神経神話を取り上げ、
教育者、マスコミ、政策立案者、企業の勇み足をけん制。

「脳研究はしばしば間違って解釈・簡略化される」、
「大衆紙は研究の報告を単純化しすぎる」。
報告書は、日本でも根強い「右脳教育」「早期教育」
「3歳までは豊かな環境で」という三つの神話を挙げて
「やっても問題ないが、科学的根拠はない」と結論。

議論に参加した小泉英明・日立製作所フェロー(分析科学)は、
光を使った脳計測の第一人者で、
国のプロジェクト「脳科学と社会」の研究総括も。
「脳のように身近な問題には社会の関心が高い。
しかし、今の脳科学は、社会の関心に十分応えられる段階に達していない」。

小泉さんから見れば、視覚野、前頭前野など個別の部位について
語れる専門家はいても、脳全体を語れる専門家はいないです。
「脳ブームでは、論文も書かない非専門家がマスコミにまつり上げられ、
脳で何でも分かるかのように社会は受け止める。
そんな単純なものではないし、そう言った途端、脳科学は進歩を止めてしまう」

日本では今、さまざまな人が登場し「脳ブーム」を演出。
ブームに惑わされないためには、
裏付けとなる科学的データの有無を見極める必要。

◇「あるある騒動」で浮き彫りに 「お墨付き」、専門家は責任持って

「分かりやすさ」は誤解を生む余地となり、
独り歩きから社会を揺るがす事態も。
実験的手法を取り入れて健康情報を紹介した
「発掘!あるある大事典2」(関西テレビ)は、
短い言葉で言い切る分かりやすさを追求するあまり、
ねつ造により打ち切られました。

この番組に10回以上出演した昭和女子大の中津川研一教授は、
「少しオーバーかな、と思う表現もあったが、多くの人を引き付け、
健康や食物・栄養に関心を持ってもらうきっかけになればと協力」

中津川さんは食用油脂研究の専門家で、食品・栄養学全般に詳しい。
ねつ造が発覚した「納豆ダイエット」にも、コメンテーターとして出演。

視聴者の興味を引くために、学術的な正確さという点で
内容に問題があることには気付いていました。
しかし、「無味乾燥に知識を並べても一般の人は振り向いてくれない。
研究成果に関心を持ってもらい、大ざっぱでもいいから理解してもらう方法も必要。
『論文のような正確さを追求する番組以外には、
科学者は協力すべきではない』という考え方は、少し極端に感じる」。

その一方で、紹介した食品が放映後に売り切れる現象は「おかしい」。
「私が言うのは変かもしれないが、
これ一つですべてうまくいくという『うまい話』はありえない。
視聴者も、情報を冷静に取捨選択することが必要だと思う」。

「あるある」の手法に批判的な小波秀雄・京都女子大教授(計算機化学)は
「視聴者が簡単に答えだけを求めた結果、
非科学的な内容にも簡単にだまされる。
『世の中にはウソやごまかしがたくさんある』という社会的常識がないことも背景に。
分かりやすい答えに飛びつくのではなく、
自ら考え行動することを心がけてほしい」。

協力する専門家にも、小波教授は注文。
「科学的な味付けが番組の信頼性にお墨付きを与えている。
特に『大学教授』という肩書は信頼できるという社会的合意があるのだから、
教授たちはそうした責任を負っていることを自覚すべきだ」。

研究者はどのように科学的成果を伝え、市民はどう受け止めるべきか?
模範解答はないものの、今、一人一人が自らの問題として
考えることが求められています。
-------------------------
専門性を保つことも大切ですが、
専門分野を広く社会に認知してもらう必要もあります。
科学者は、社会に対して説明する機会をできるだけ増やすことが重要です。
サイエンスカフェなどで、科学者が一般の人たちと交流する機会が
増えてきています。
科学者と社会との交流をする環境を作ることが、
このような事件を防ぐための方策の一つだと思います。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20070301ddm016070202000c.html

March 12, 2007

サケの皮から人工血管作成、ラット移植成功

(毎日 3月11日)

北海道大などの研究チームが、サケの皮のコラーゲンから人工血管を作り、
ラットの大動脈部分に移植したところ、2週間以上の生存が確認。
海洋性動物のコラーゲンから人工血管を作成、機能が確認されたのは世界初。
サケからヒトに感染するウイルスが報告されていないことなどから、
安全性も高いとみています。

水産加工後に大量に廃棄される天然のサケの皮は、北海道で年約2000トン。
ここからコラーゲンを抽出した場合、年約600トンを採取。
また、従来の人工組織は、牛やブタのコラーゲンを使っていたが、
BSE(牛海綿状脳症)など感染症による危険性も懸念されます。

このため、研究チームは廃棄量が大きく、安全性も高いサケの皮に注目し、
再生医療への応用を目指しました。
課題は、サケのコラーゲンが熱に弱く、19度で溶けてしまうこと。
そのままではヒトの体内に移植できないため、
コラーゲンの構造を糸状の塊に変えたり、構成する分子間の結合を強めるなどの
処理を行い、溶け始めの温度を55度まで上げることに成功。

耐熱性が上がったコラーゲンで、内径1・6ミリ、厚さ0・6ミリのチューブを作り、
今年2月下旬にラットの腹部の大動脈へ移植。
その結果、チューブは心臓の拍動に合わせて伸び縮みし、
元の大動脈同様の強度と伸縮性が確認。

研究チームの永井展裕・北大創成科学共同研究機構特任助手(移植医療)は
「今後イヌなどの大型動物で実験し、将来はヒトの心筋梗塞治療に使える
細い口径の人工血管開発を目指したい」。
-------------------------
バイオテクノロジーと再生医学が結びついた成果ですね。
自然にある素材をいかに加工することによって、
再生医学の材料として用いることができるか??
日本が世界に誇れる技術ですね。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=43824&categoryId=&sourceType=GENERAL

March 09, 2007

論文引用:阪大の審良教授が2年連続世界一

(毎日 3月7日)

最近2年間に、他の研究者から引用されることが多い論文を
世界で最も数多く書いた研究者は、大阪大の審良静男教授(免疫学)だと、
米文献データ会社トムソン・サイエンティフィックが発表。
審良教授の世界一は、昨年に続き2年連続。

04年11月~06年10月に約9000の専門誌に発表された論文について、
06年9、10月に引用された回数を調査。
物理学や宇宙科学など専門分野ごとに上位0.1%に入った
論文数を比べた結果、免疫学分野で7本の論文が入った審良教授が第1位。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070308k0000m040069000c.html

March 08, 2007

生ニンニクとニンニクサプリメントには脂質への効果はない

(Medscape Medical News 2月27日)

安くて自然で、人によっては美味しいとさえ言う
生ニンニクやニンニクサプリメントはコレステロール値を下げる方法として
期待されていたが、6カ月間でコレステロール値を下げる力があるという
エビデンスは最新研究では見つかりません。

スタンフォード大学のChristopher D. Gardnerは、
「実際に効くはずだと思っていた。生ニンニクは効くだろうし、
サプリメント類のどちらかは、もしかすると両方ともおそらく効くだろうと思っていた。
皆の力になることが見つからなくて、我々はがっかりしている」。

米国立衛生研究所が資金を提供した今回のランダム化対照比較試験が
実施されたのは、ニンニクの脂質低下効果を支持する10年以上に及ぶ
研究を受けてのことであり、
ニンニクを薬とする「古代からの」伝統的な使用法を意識したものではないです。
in vitro試験や動物試験では、脂質に対する効果が期待できる結果が
示されていたが、これまで行われた臨床試験の結果は一致せず、
試験デザインや資金源の面で問題に。
Gardner博士は、複数の試験をメタアナリシスで合算すれば、
ニンニクにはコレステロール低下能力があるという信念を強めることに
しかなっていなかった、と。
「すべての臨床試験を合わせたメタアナリシスが過去20年間に5件あり、
そのどれもがニンニクは効くと伝えていた。
そうした試験を根拠にサプリメントのラベルには、
ニンニクはコレステロールを低下させると表示されている」。

●3万個のサンドイッチ。昼食はすべて管理

この試験では、コレステロール値が中等度に亢進している被験者192例
(低比重リポ蛋白[LDL]コレステロール濃度130-190mg/dL)を、
生ニンニク、ニンニク粉末サプリメント、熟成ニンニク抽出サプリメント、プラセボの
4つの処置群にランダムに分けました。
この2種類のサプリメントを選択したのは、それらがしっかりとしたエビデンスを
背景に持っており、試験に先立つ生化学分析で活性成分が確認されたから。

2週間の導入期間において、被験者は研究チームが用意した
サンドイッチを毎日摂食。処置期間では、被験者はサンドイッチに加えて
錠剤を試験協力施設で受け取ます。
生ニンニク群は、サンドイッチの薬味としてニンニクが使用され、錠剤はプラセボ。
その他の群は、ニンニク抜きのサンドイッチを受け取り、
錠剤は1種類または2種類のサプリメントを含むか、プラセボ。

この期間中、臨床研究センター(General Clinical Research Center)では、
「グルメ志向で心臓の健康にいいサンドイッチ」を3万個以上作りました。
試験終了までは半年ごとに、被験者から血液サンプルを採取。

どの群も、試験終了までにLDLコレステロール値は実質的な変化なし。
「統計的有意差にはならない程度の小さな効果があったという話でもない。
6カ月間にわたって、4群ともなんの動きもなかった。それが実にがっかりさせる点だ」。

高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールとトリグリセリドの値、
および総コレステロール/HDL比についても何の効果もない。

Gardner博士によれば、ニンニクで唱えられている脂質低下効果は
盛んに吹聴されており、この5年から10年の間、
ニンニクはハーブ/植物性製品の売り上げのトップ5に並んでいるという。
おそらくLDL値の低下を期待する人が多くいるためでは?

今回の試験では、ニンニクがその他の循環器系への効果や心臓以外の健康への
ベネフィットの可能性を持つかについては評価していないです。
「ニンニクに抗炎症作用や血圧低下作用、抗癌作用がある可能性は
依然として存在する。そのどれについてもしっかりと研究する必要がある」。

コーネル大学ワイル医科大学のMary CharlsonとMarcus McFerrenが、
ニンニクには動脈硬化に対して特に効果がある可能性に言及。
Gardner博士らの試験は、アリシンが活性成分であるという想定に基づいて
行われている点を上げており、そのために、ニンニクに含まれる
多数の相互作用をする成分の動脈硬化の進行に対する効果の有無を
考察することができなくなっている可能性があります。

Charlson博士は、「この試験のデザインは、アリシンのアベイラビリティに関して
いろいろな点に考慮した優れたものだと思う。しかし動脈硬化は、
脂質値以外にも多数の要因が作用する複雑な現象である。
今回の試験は、アリシンが作用因子であるという想定に基づいて
行われているので、そこで示されたのは、アリシンは作用因子であるとしても
LDL値に対しては効果がない。LDL値が高くてそれを下げたい場合には、
ニンニクは解決法にならない。
ではニンニクには動脈硬化を予防する働きがあるのだろうか?
その判断はまだ下されていないと思う」。

●公が資金提供する臨床試験の意義

Gardner博士らの試験は、数百万ドル規模の業界であるサプリメントの試験に、
公が資金提供する意義についても多くを語っています。
特に、その健康上の主張を製造者がしっかりと試験せずに宣伝している場合。
Gardner博士は、「FDAは実際にはサプリメント類を規制したいと考えているが、
ロビイストたちに打ち砕かれているのだ。試験は費用がかかり、
相手にすべき事柄が実に多いために、そのすべてを調べることができない。
しかし、FDAがニンニクのように一般に広まってはいるが
実証がほとんど伴っていないものから追跡できるならば、
得るものが大きい」。

心臓の健康に対して、間接的であったとしてもニンニクはよい働きをする食品
であることは依然として変わりない。
「外出して、朝食にマクドナルドのエッグマフィンを食べ、
昼食にビッグマックを食べ、その後でニンニクを一片食べれば、もう安心、
というわけにはいかない。ニンニクはそれでは効かない。
ニンニクを摂るなら、全粒小麦パンに塗ったり、アジア風の野菜たっぷりの
炒め物に入れたりするなど家庭で摂るようにすれば効果が最大に。
それがニンニクが実際に役に立つ方法。ぜひそうして欲しい」。

Arch Intern Med. 2007;167:125-126, 346-353.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=43560&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

March 07, 2007

理系白書’07:第1部 科学と非科学/4 効果未確認の「マイナスイオン」

(毎日 2月21日)

「マイナスイオンの第一人者」が四国に。
香川県坂出市の「環境・還元イオン医学研究所」の堀口昇会長(70)。
堀口氏は、鍼灸師出身。
約35年前からマイナスイオンの研究に取り組み、
92年にはフィリピンで医学博士号を取得。
自ら学会を設立して効果をアピール。

マイナスイオンは、「リフレッシュ効果がある」、「血液をサラサラにする」
などと言われ、99年ごろブームに。
明確な定義はないが、大気中を漂う帯電した気体分子や原子などに
水分子がくっついたものとされる場合が多い。
だが、科学者の多くは、その「効能」に懐疑的。

堀口氏は研究所で、自ら開発したマイナスイオン発生装置の仕組みを説明。
軽石の粉末が詰まったプラスチック製の小箱。
電圧をかけると、「軽石の中で電子が激しい運動を起こし、
コードの先の極板から空気中に出る際、
水分子などと結合してマイナスイオンになる」。

「これは地球内部と同じ現象を再現している」と堀口氏。
納得しない記者に、「いろんな科学者がここへ来たが、
原理が分かった人は一人もいない」。
この仕組みを使った治療器「Miエナジー」は1台136万5000円。
約7000台を売り上げ。

研究所の向かいには、堀口氏が理事長を務める医院があり、
治療器が使われています。
肩こり、不眠症、便秘などにきく「電位治療器」として認められ
健康保険の対象。患者負担は、1回(15分)あたり350円。
堀口氏は医師免許は持たないが、
「皮膚を通して体内にマイナスイオンが持つ電子が取り込まれ、
細胞内を弱アルカリ性にして健康な体を作る」と効能を説明。

大手家電メーカーは、01年ごろから「マイナスイオン商品」を
相次いで販売、ブームに便乗。
空気清浄機、エアコン、掃除機、ドライヤー。
新しい付加価値として、
マイナスイオンは市場拡大や売り上げ増という「恩恵」をもたらしました。

マイナスイオン商法に批判的な安井至・国連大学副学長(環境科学)は
「完全な第三者が学術的な興味を持って追試をし、
効果を認めない限り科学とはいえない。
大手メーカーのマイナスイオン研究は、どれもそのハードルを越えておらず、
その意味で技術は未確立だ」。

実際、メーカー各社の「マイナスイオン」は、
定義も発生させる仕組みも、効果の検証もバラバラ。

松下電器産業の広報担当者は、
「集じん効率向上など、家電に搭載した効果・効能は実証済み」とした上で
「最盛期には『マイナスイオン付きでないものは家電じゃない』と言われた。
今は痛しかゆしのところがある」。

02年にマイナスイオン発生器搭載のパソコンを発売した日立製作所は、
「『リフレッシュ効果がある』とPRしたが、
その実証性が薄いままブームに乗った。
研究開発型企業としての責任感が欠如していた。反省している」(広報部)。

堀口氏と共同でマイナスイオン発生システムを開発した東芝キヤリアは、
「今はもうやっていない」と取材を拒みました。

国民生活センターは03年9月、マイナスイオン商品について
「消費者の期待通りの効果があるか分からない」との調査結果を発表。
東京都は06年、マイナスイオン効果をうたった一部の布団や装身具などの
「効果・性能に関する表示は客観的な根拠に基づくとは認められない」との
否定的な報告書をまとめたが、
マイナスイオンはあらゆる健康グッズに定着したよう。

「社内に専門家を抱えながら、実態の分からないマイナスイオンのブームに
便乗した大手メーカーの責任は重い」と安井さんは批判。

◇法の規制に限界も

科学的に実証されていない健康効果を、
あの手この手で売り込むビジネスが横行。

警視庁は05年秋、健康食品のアガリクスで「がんが消えた」などと
薬効をうたった健康食品販売会社を薬事法違反で摘発。
薬事法は、医薬品や医療機器の有効性、安全性を保つための法律。
アガリクスはキノコの一種で、免疫を高める効果が動物で確かめられているが、
人間への効果は実証されておらず、薬効をうたうことは薬事法違反。

05年の摘発では、「これを飲んでがんを治した」といった体験談を集めた
書籍(バイブル本)の出版業者も逮捕。
通常、出版物は「表現の自由」が保証されるが、
警視庁はこの本を「誇大広告」とみなしました。

「製造者、販売会社、出版社がグルになり、架空の体験談を集めた
バイブル本を宣伝する。ご利益のある話と一見科学的なデータに
読者がだまされ、被害が広がる」。
アガリクス製造会社で働いた研究者(37)は振り返ります。
こうしたケースでは、「監修・医学博士」「特許取得」といった言葉が
権威付けに使われるが、効果を裏付ける根拠にはならないです。

一方で、宣伝文句に気を配って薬事法に抵触しなければ、
売る行為自体は規制されず、科学的根拠に乏しい商品が広がることに。

堀口氏がかかわる医療機器メーカー「セルミ医療器」は4年前、
薬事法違反で業務停止処分に。
未承認の医療機器を製造・頒布したから。
その2カ月後、ほぼ同じ機能で名前を変えて承認を受けたのが「Miエナジー」。

「マイナスイオン治療器」ではなく「電位治療器」として承認。
厚生労働省監視指導・麻薬対策課は
「未承認の効能(マイナスイオン効果)をうたって販売しているとすれば、
薬事法違反の可能性が極めて高い」。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20070221ddm016070148000c.html

March 03, 2007

ハトの遠隔操作に成功と、中国の科学者が主張

(REUTERS 2月27日)

中国・山東科技大学の研究者がハトの遠隔操作に成功したと、
中国国営・新華社通信が伝えました。
ハトの脳に電極をつけ、飛んでいるハトの方向転換を遠隔で操作できると主張。

ハトの遠隔操作に成功したのは、同大学ロボット工学技術研究センターの研究チーム。
2005年にマウスを使って同様の実験に成功しており、
その装置を改良してハトに応用。
コンピューターを使い、飛んでいるハトの方向を左右・上下で変えることできた、
「世界で初めて成功した実験だ」と。

研究者らは、この研究が将来、実用化できるとしているが、
具体的にどのような分野で実用出来るかは明らかにしていないです。
------------------------------
なかなか面白い研究ですね。
これなら、伝書鳩・レースに勝てるかもしれませんね。
役立つかどうかは分かりませんが・・・。

http://cnn.co.jp/science/CNN200702270019.html

February 28, 2007

テーラーメード緩和医療の実現へ 遺伝子多型で麻薬性鎮痛薬の効き具合を予測

(じほう 2月26日)

厚生労働省の創薬基盤推進研究事業の研究班(主任研究者=池田和隆・
東京都精神医学総合研究所分子精神医学研究ディレクター)は、
がん性疼痛などに用いられるモルヒネやフェンタニルが
効きやすい患者か否かを遺伝子多型に基づき予測し、
患者に応じた緩和医療を実現する基本技術を開発。
企業と共同で、遺伝子多型を調べる検査キットの開発も。
疼痛効果を最大限にし、かつ副作用を最少にする投与量や回数を
患者ごとに予測し、これに沿って治療するテーラーメード緩和医療を
臨床現場で実現させたい意向。

モルヒネは、脳細胞の表面にあるμオピオイド受容体に結合して
鎮痛効果を発揮。
研究班では、すでにこの受容体の遺伝子のうち、
受容体そのものの構造に直接は関係しない領域(非翻訳領域)の違いが、
鎮痛効果の強弱に関与することを見いだしています。
この領域が普通のマウスと比べて違うマウスでは、
同受容体の数が少なくなってしまい、モルヒネの鎮痛効果が弱い。

さらに、ヒトのμオピオイド受容体遺伝子にも、
遺伝子多型と呼ばれる遺伝子配列の違いが100カ所以上に。
遺伝子配列の違いが、マウスの場合のように、
モルヒネの効き具合に影響すると考えられます。

●遺伝子多型と鎮痛薬の効き具合を調査

研究班は、東京大医科学研究所付属病院や東邦大医学部付属佐倉病院、
東京歯科大付属病院、国立がんセンター中央病院などと協力。
μオピオイド受容体遺伝子やそのほかの鎮痛関連遺伝子の塩基配列の
違い(多型)と、鎮痛薬の効き具合との関連を調べる、ヒト対象の研究を実施。

ヒトでの研究は、顎の骨の一部を切除する手術や、がんなどで
胃や大腸の切除術(開腹手術)を受けた患者合計300人以上の
術後のモルヒネ投与量を集計。遺伝子多型との関連を調査。

受容体遺伝子や他の鎮痛関連遺伝子の多型と、投与量の間に相関。
たとえば、ある遺伝子多型を2個持っている人は、
多型を1個持っているか持っていない人に比べて、
投与回数・量が2倍以上、多く必要。
さらに別の遺伝子多型と組み合わせて投与量との関係をみてみると、
2つの遺伝子多型を2個ずつ持っている人は、そうでない人に比べて、
投与回数・量が4倍も必要。

モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬は、がん性疼痛に多く使われているが、
がん性疼痛の程度はがんの種類やがんの部位、転移の有無、
骨転移の程度などにより大きく異なります。
つまり、がん性疼痛の場合、患者背景をそろえることが難しく、
研究の対象としてはあまり適切ではない。

そこで、研究班では術式が同じであれば術後疼痛の程度が似ていると
考えられる開腹手術(胃切除・大腸切除など)の症例や、
顎骨の切除術を受けた症例を対象に。
疼痛の程度が似ていても、鎮痛薬の効き具合には個人差があるので、
鎮痛薬の量も個人によって異なります。
これにより、鎮痛薬の効き具合と遺伝子多型との関連を、
より正確に検討することができました。

●情報の入力でモルヒネの投与量を算出

研究班はシースターコーポレーションと共同で、
遺伝子多型情報に基づき適切な鎮痛剤投与量をはじき出せるシステムを構築。
このシステムでは、患者の遺伝子多型情報を入力すれば、
手術後24時間に必要なモルヒネの投与量が瞬時にはじき出されます。
同システムが今後、テーラーメード緩和医療の有用なツールの1つになると期待。

今回の研究において、麻薬性鎮痛薬の効き具合に関連する
多くの遺伝子多型を同定できたため、研究班は来年度内に、
プロスペクティブな臨床試験を始める計画。
麻薬性鎮痛薬投与前に遺伝子多型を解析し、多型に基づいて
鎮痛薬の効き具合を患者ごとに予測して、投与量を決定。
この投与量に従って疼痛治療を行います。
対象患者はやはり、患者背景をそろえやすい開腹手術症例や、
顎骨の一部の切除症例などにする予定。

さらに並行して、テーラーメード緩和医療を臨床現場で実践するための
検査キットの開発を、引き続き企業と共同で進めます。

今後は、<1>麻薬性鎮痛薬使用前に採血あるいは口腔粘膜などを採取
<2>検査キットで遺伝子多型を判定
<3>遺伝子多型をもとに個々の患者に応じた鎮痛薬投与計画を作成
<4>副作用を最小限にし、最大限の鎮痛効果を得られる個人に適した鎮痛を実現

がん性疼痛の緩和医療の普及にも拍車がかかると期待。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=43038&categoryId=&sourceType=GENERAL

February 23, 2007

受精しない卵子でES細胞 クローン技術、マウス実験

(共同通信社 2月20日)

体外受精で受精しなかった卵子を使ってクローン胚をつくり、
そこから胚性幹細胞(ES細胞)をつくったとのマウス実験の結果を、
理化学研究所神戸研究所の若山照彦チームリーダーらが
米科学誌カレント・バイオロジーに発表。

従来の方法を人間に応用する場合、
女性から新鮮な卵子を提供してもらう必要がある一方、
クローン人間づくりにつながる恐れが指摘。
このクローン胚は、雌の体内に移植しても子どもが生まれなかったです。

不妊治療の体外受精で受精しなかった卵子は廃棄されており、若山さんは
「人間に応用できれば、倫理的課題の解決につながる可能性が」。

若山さんらは、受精しなかったマウスの卵子約430個で実験。
核を取り除き、別のマウスの体細胞の核を入れ
クローン胚をつくり培養する方法で、
新鮮な卵子を使った場合とほぼ同じ約6%でES細胞ができました。
ES細胞の分化能力や染色体数などは正常。

このクローン胚約360個を雌マウスの体内に移植する実験では、
子どもは1匹も生まれず。
こうした卵子は、通常の顕微授精をしても子どもができるのはわずかで、
個体発生能力があまりないらしい。

再生医療でES細胞を使う場合に拒絶反応を避けるには、
患者本人の遺伝情報を持つクローン胚を使う方法が有力。
----------------------------
ES細胞に関する研究は、倫理的に難しいものがあります。
今回の研究は、それを解決するための一つの方法です。
研究は興味本位だけで進めることはできません。
倫理的価値観を大切にしながら、進めることが大切です。
そのためには、できる限り情報を公開することです。
再生医学の発展に大きく貢献する研究ですね。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=42685&categoryId=&sourceType=GENERAL

February 21, 2007

進行抑制の善玉機能 パーキンソンのタンパク質

(共同通信社 2月16日)

神経細胞が変性、脱落し運動障害などが起きる
パーキンソン病の発症にかかわる特定タンパク質に、
病気の進行を抑制する"善玉機能"もあるとの研究結果を
木下専京都大助教授(細胞生物学)らが発表。

似た働きをする薬を作れば、治療に役立つ可能性があるという。

木下助教授によると、パーキンソン病は主要な原因タンパク質と、
細胞分裂などに関係する「セプチン4」というタンパク質が相互作用して
脳に蓄積、神経変性が起きるとみられていました。

木下助教授らは、パーキンソン病のモデルマウスで、
セプチン4を欠損させて実験。
約半数が死ぬまでの期間は、欠損していないマウスの1年半に比べ
約3カ月短く、神経細胞が死ぬなどの病態の悪化が早い。
主要原因タンパク質の蓄積が早まり、
神経伝達物質ドーパミンが脳の一部で減少。
ドーパミンが不足すると発症につながるという。

木下助教授は、「セプチン4は神経変性にかかわっているが、
主要原因タンパク質が毒性化し蓄積するのも抑制している」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=42473&categoryId=&sourceType=GENERAL

運動は大腸がん予防に有効 男性で危険度が30%低下

(共同通信社 2月20日)

日常的に運動をしている男性は、あまりしない男性に比べ、
大腸がんになる危険度が低いことが、
厚生労働省研究班(津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)が発表。

運動によるがん予防効果があらためて裏付けられた形。
女性では今回、同様の傾向が確認できなかったが、
研究班は「家事労働の影響を正しく評価できなかったためかもしれない。
適度な運動は女性の健康増進にも役立つはず」。

研究班は1995年から2002年まで、全国9府県で40-69歳の男女
約6万5000人を調査。1日の運動量に応じて参加者をグループ分けし、
大腸がん発症との関係を調べました。

その結果、男性のうち運動量が多いグループほど
大腸がんリスクが低くなることを確認。
肉体労働や激しいスポーツを日常的にしている人は、
ほとんど運動しない人に比べ、発症の危険度が約30%低下。
大腸がんのうち結腸がんで特にこうした傾向が強く、
1日3時間以上歩いたり立ったりする程度の運動でも一定の予防効果が。
-----------------------------
これは、私たちの研究にとって貴重な結果ですね。
疫学研究で、運動量と病気との関連性を明らかにすることは、非常に重要です。
一般的に言われていることをいかに科学的に証明していくか、
ということは本当に難しいです。
運動することで、大腸がんのリスクが減ることから、
私たちの健康寿命を延ばしていくためには、
運動することが要因の一つになりますね。
運動不足のおいらにとっても、いい警告になりました・・・。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=42690&categoryId=&sourceType=GENERAL

February 13, 2007

内臓脂肪防ぐ仕組み解明 根本治療に道

(産経 2月9日)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を防ぐ働きがある
ホルモン「アディポネクチン」が体内で作用するメカニズムを、
東京大大学院医学系研究科の門脇孝教授らの研究チームが、
マウスを使った実験で突き止めました。
メタボリック症候群の根本的治療法開発につながる可能性。
米科学誌「ネイチャー・メディシン」(電子版)に発表。

アディポネクチンは脂肪細胞から出るホルモンで、
脂肪を燃焼してインスリンの働きを助ける善玉物質。
肥満や内臓脂肪蓄積で脂肪細胞が肥大化すると、
このホルモンが低下し、糖尿病などのリスクが高まります。

研究チームは、アディポネクチンと結合する2種類の物質(受容体)を
作れなくしたマウスについて、血糖値やインスリン抵抗性を調べました。
その結果、受容体を欠いたマウスでは、
糖尿病を防ぐ作用が消失することが判明。
逆に、肥満マウスの肝臓で受容体の遺伝子発現を上昇させると、
糖尿病が顕著に改善。
受容体とアディポネクチンが結びつくことで、
血糖制御や脂肪代謝、インスリン抵抗性を改善させると結論。

日本人の40%は遺伝的に、アディポネクチンが少ない体質で、
高脂肪食や運動不足などの生活習慣とともに
メタボリック症候群の増加要因に。
門脇教授は、「今回の成果をもとに、2種類の受容体と同じように働く
治療薬の開発が期待。遺伝的要因にも環境(生活習慣)要因にも
効果があるメタボリックシンドロームの根本的治療につながる」。
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これは素晴らしい研究結果ですね。
アディポネクチン受容体が、メタボリック症候群の治療のキーになります。
運動や食事によって、受容体を増やすことができれば、
メタボリック症候群の改善につながるのではないでしょうか。
メタボリック症候群の仲間入りに近づきつつあるおいらとしては、
グッドニュースですね!!

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070209-00000029-san-soci

February 10, 2007

ES細胞研究で国際学会が指針 倫理問題で3分類

(朝日 2月2日)

様々な組織や臓器になり得る万能細胞として、
再生医療への期待が高い胚性幹細胞(ES細胞)について、
国際幹細胞学会が研究実施上の国際指針を作成。
各国での適切な規制実施や国際共同研究の円滑化につなげるのが目的で、
欧米や中国、日本など14カ国の研究者や生命倫理学者らが検討に参加。
米科学誌サイエンス(電子版)に掲載。

指針は、生命倫理上の問題の大きさなどに応じて、
対象となる研究を三つに分類。

問題が比較的少ないES細胞の利用研究など第1類は、
医学生命科学での通常の審査監督手続きでよい。
第2類のES細胞の新規作製計画は、受精卵などの提供や破壊を含むため、
法学や生命倫理などの有識者による厳格審査を求めます。
第3類は、人のES細胞やクローン胚を人や動物の胎内に移植することなどで、
当面禁止。

卵子提供について、提供に誘うような多額の謝礼は否定したが、
実費の支払いなどは各国の判断に任せることに。

ES細胞は、数日培養した受精卵から細胞の塊を取り出して作ります。
これを基に、患者に必要な組織や細胞を作ることができれば、
再生医療の切り札になる可能性が。

ES細胞研究の規制は、国によって様々。
米国は政府資金の拠出は禁じているが、統一的な制限はない。
受精卵を「生命の始まり」と位置づける傾向が強いドイツやフランスは、
ヒト胚研究を禁じ、韓国は法で認めています。
日本も、政府は認めています。
今後規制を検討する国では、国際指針が参考にされそう。

検討に参加した中辻憲夫・京都大再生医科学研究所長は、
「日本の指針は、ES細胞の利用計画にまで厳しい手続きを求めている。
過剰規制であり、研究の遅れを招いている」と指摘。
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ES細胞の研究は、再生医療にとって非常に重要です。
臓器移植の不足という問題がある以上、
この研究はどんどん進めなければならないでしょう。
国際指針をしっかり作り、見直しながら、研究を行う必要があります。
研究をできるだけオープンにすることが大事ですね。

http://www.asahi.com/science/news/TKY200702010420.html

February 09, 2007

「健康影響を科学的に評価」 大豆機能研究会設立

(毎日 1月28日)

納豆や豆腐など大豆食品と健康との関係について
科学的に再検討しようと、大学や企業の研究者ら約300人が集まって、
「大豆機能研究会」を設立。
納豆のダイエット効果をうたったテレビ番組で、
データねつ造が発覚したばかりだが、
発起人の渡辺昌国立健康・栄養研究所理事長は
「日本は大豆食品の摂取が多い。その機能や健康影響を科学的に評価し、
安心して食べられるよう、活動していきたい」。

大豆には、栄養素の他にも女性ホルモンに似た働きをする
イソフラボンなど生理機能を持つ物質が含まれます。
米食品医薬品局が、大豆たんぱく質に心筋梗塞の予防効果があるとする一方、
米心臓協会が否定的見解を示すなど、
機能を巡っては、評価が定まっていない面があります。
更年期障害の低減効果などがあるとされるイソフラボンも、
大豆と他の食品に含まれるものでは効果が異なるという。

研究会では、産学協同で独自の試験研究にも取り組む方針。
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以前から、大豆には健康によい食品として知られてきました。
しかし、その効果を科学的証明したデータは少ないです。
研究は、これまで知られてきたことを改めて証明することで、
その食品がより付加価値を高めることになります。
日本の食事にはたくさん大豆が使われています。
データが出れば出るほど、和食のよさを感じるでしょう。
納豆、味噌、豆腐・・・いや~おいしそうです!!

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=41441&categoryId=&sourceType=GENERAL

February 07, 2007

高齢者の運動と膝関節炎のリスク

(WebMD Medical News 1月31日)

体重が重い高齢者でも、適度な運動で膝関節炎のリスクが
増加することはないという調査結果。

ボストン大学の内科学・疫学教授David T. Felsonは、
「実際、膝関節炎の発症に関して運動した人としなかった人に差はなかった」。
9年間の調査の結果、運動によって膝関節炎のリスクが増減することはない。

Felson教授らは、1948年から心血管疾患リスクについて研究している
Framingham研究で、第一次被験者となった人の子孫を含む
男女1,200例以上を対象に調査を実施。

同関節炎研究の開始時における被験者の平均年齢は、53歳。
1993-1994年に膝関節のX線検査を行い、
さらに膝の痛み、疼き、こわばりについて調査。
ほとんどの被験者は運動のためウォーキングしていると報告し、
ジョギングやランニングをしていると答えた人は68例。

Felson博士は被験者を3群に分類。
運動習慣のない人、週に6マイル(約9.6km)以上歩く人、
週の歩行距離が約9.6km未満の人。

2002年に、再び膝のX線検査と膝症状に関する追跡調査を実施。
体重は、専門医がX線写真を読影して関節炎のエビデンスを調べる開始時と
最終追跡検査時に記録。

被験者の体格指数(BMI)は、平均27.4。
18.5-25は標準体重、25-29.9は体重超過と判定。

運動しなかった人のうち7.5%が、研究期間中に症候性膝関節炎を発症。
症候性膝関節炎の発生率は、週の歩行距離が約9.6km未満の人で4.9%、
週に約9.6km以上歩いた人で6.4%。
Felson博士は、科学者にとって、これは重大な差ではないと。
「被験者の多くはかなり標準体重を超過していたので、
個人的にはある程度のリスクはあるだろうと考えていた」。
肥満が、変形性膝関節炎の危険因子であることはすでに明らか。

●関節炎のリスクと健康な膝の関係

ミズーリ大学(コロンビア)の理学療法学教授Marian A. Minorは、
「この研究により、適度な身体活動は変形性膝関節炎のリスクを
増大させないという我々の主張が一歩前進した」。
しかし、「研究結果は健康な膝について言えるもの」と注意。

エラスムス医療センター(オランダ、ロッテルダム)の研究者らが
同時発表した37件の研究に関する総説によれば、
定期的なスポーツ活動は膝関節炎の発症と関係がない。
同研究において、膝の痛み、損傷、その後の膝関節炎はいずれも関連がない。

●運動生理学者の見解

高齢者が運動をしても膝関節炎の発症リスクは増大しないことを示した
Felson博士の研究について、研究結果はおそらく間違いないであろうと、
運動生理学者でウエルネスコーチのRichard T. Cotton氏は、
自らの臨床経験に照らして語りました。
Cotton氏は、American Council on Exercise(米国運動協議会)のスポークスマン。

Cotton氏は、「50歳代まで膝に問題を抱えることなく運動を続けられた人は、
関節炎になりにくい」。

しかし、関節炎のリスクを最小限に抑えるため、
運動距離を徐々に延ばしてからスピードを上げるようにと注意。
距離とスピードを同時に上げてはならない。

ウォーキング、ジョギング、エアロビクス、ハイキングなど、
それぞれの活動に適した運動靴は重要。
「運動用の靴を履いて芝刈りをしたり、買い物に行ったりしないこと。
運動のときにだけ履くように」。
定期的に運動している場合は、3~6カ月ごとに靴を取り替えるよう勧めています。

David T. Felson, MD, MPH, professor of medicine and epidemiology, Boston University. Felson, D.T. Arthritis & Rheumatism, Feb. 15, 2007; vol 57: pp 6-12. Minor M. Arthritis & Rheumatism, Feb. 15, 2007; vol 57: pp 1-2. Belo, J. Arthritis & Rheumatism, Feb. 15, 2007; vol 57: pp 13-26. Richard Cotton, MA, exercise physiologist; wellness coach; spokesman, American Council on Exercise, San Diego. Marian Minor, PhD, professor and chairwoman of physical therapy, University of Missouri, Columbia.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=41961&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

February 03, 2007

民間の減量プログラムはどの程度有効か?

(NCP Endocrinology & Metabolism Medicine 2006年12月号)

原論文
Truby H et al. (2006) Randomised controlled trial of four commercial weight loss programmes in the UK: initial findings of the BBC “diet trials”. BMJ 332: 1309-1314

●PRACTICE POINT(診療のポイント)

有効なダイエット法のほとんどについては、
栄養成分に依然議論の余地があるが、
体重減少の成功はダイエットプランの継続に関連。
グループサポートを行うプログラムは順守度がもっとも優れています。

●SYNOPSIS(概要)

<BACKGROUND(背景)>
多数の民間減量プログラムが一般市民に提供されているが、
それらの有効性を検討した対照試験によるデータは不足。

<OBJECTIVE(目的)>
『Dr Atkins’ New Diet Revolution
(アトキンス博士のローカーボ(低炭水化物)ダイエット)(?)』、
『Rosemary Conley’s Eat Yourself Slim Diet and Fitness Plan』、
『Slim-Fast plan』、
『Weight Watchers Pure Points Program』の
4つの減量プログラムの有効性を比較すること。

<DESIGN & INTERVENTION(デザインと介入)>
18~65歳で、自己報告によるBMIが27~40kg/m2、
研究センターから48km(30マイル)以内に居住している参加者。
除外基準は、糖尿病、冠動脈性心疾患、疾患(甲状腺機能低下症など)に
起因する肥満、減量手術の既往、摂食障害、脂質低下薬、
降圧薬または減量薬の使用など。
Weight Watchers群またはRosemary Conleyプラン群に
割り付けられた参加者は、週に1回授業に出席。
Slim-Fast planに従う参加者群には、
1日当り2食分まで代替食の費用を払い戻し、
Atkins diet群の参加者には『Dr Atkins’ New Diet Revolution』1冊を供与。
対照群には、食事介入を行わず。
介入前と2カ月後、6カ月後に体重、身長、腹囲、血圧、体脂肪を測定。

<OUTCOME MEASURES(評価項目)>
主要評価項目は、試験期間中の体重と体脂肪の変化。

<RESULTS(結果)>
232例の参加者を食事介入群に、61例を対照群に割り付け。
介入後の体重減少は、初めのうちは速かったが、2~6カ月目に減速。
開始から4週間後の体重減少量の平均は、Atkins群4.40kg、
Rosemary Conley群3.17kg、Weight Watchers群2.86kg、Slim-Fast群2.68kg。
しかし後の時点では、それぞれのプログラム間に差はない。
体脂肪減少や腹囲の減少についても同様の傾向。
腹囲の変化は、総体重の減少、体脂肪減少に関連。
総体重の減少は、血圧の改善に関連し、
空腹時血糖や総コレステロール値に対する効果にばらつき。
6カ月後の体重減少率の平均は、Rosemary Conley群9.9%、
Weight Watchers群9.0%、Atkins群8.9%、Slim-Fast群6.8%(有意差なし)。
どの介入群でもコンプライアンスは2カ月後の時点で高かったが、その後低下。
試験終了までに、介入群の参加者の27%と対照群の参加者の34%が脱落。
12カ月後の追跡調査データを入手できたのは158例で、
このうち58例が引き続き割り付けられたプログラムに従いました。
もとのプログラムを継続していた参加者のうち、
40例がWeight WatchersまたはRosemary Conleyプランを実行。
食事介入に切り替えた対照群参加者も、これら2つのプランを好んでいました。

<CONCLUSION(結論)>
民間の減量プログラムは有益となり得るが、多大な意欲が必要。
長期的にみれば、グループサポートを行うプログラムがもっとも有効である可能性。

●KEYWORDS(キーワード)
Atkins’ diet、Rosemary Conley、Slim-Fast plan、減量、Weight Watchers

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200612/ncp/endocrinology_metabolism/practicepoint.html?Mg=16198c5107c40e82902e47cdabcdc3ac&Eml=10ba2da20acd510be8be073161923479&F=h&portalId=mailmag

February 02, 2007

ミトコンドリアDNAの型・ハプログループN9a

(Japan Medicine 1月26日)

東京都老人総合研究所・三重大・韓国のソウル大、
岐阜県国際バイオ研究所、岐阜県立3病院の共同研究グループは、
2型糖尿病にかかりにくいミトコンドリアDNAの型を、
アジア人において明らかに。
これは、個人の遺伝情報に応じたテーラーメード予防を可能にする研究成果。
メタボリックシンドローム・心筋梗塞・脳卒中などでも、
それぞれに関連するミトコンドリアDNAの型を見いだしており、
これら疾患に対し、遺伝情報に応じたテーラーメード予防を実践できると期待。

東京都老人総合研究所健康長寿ゲノム探索研究チームの
福典之主任研究員、西垣裕研究副部長、田中雅嗣研究部長らと
三重大生命科学研究支援センターの山田芳司教授、
岐阜県国際バイオ研究所の野澤義則所長ら、岐阜県立の3病院
(岐阜県総合医療センター・岐阜県立多治見病院・岐阜県立下呂温泉病院)、
韓国ソウル大医学部内科学講座ホン・キュー・リー教授の共同研究。
米国人類遺伝学会誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス」
の電子版(http://www.journals.uchicago.edu/AJHG/)に掲載。

東京都老人総合研究所の田中研究部長らは、
1998年に100歳を超える長寿者11人に
特徴的なミトコンドリアDNA配列があることを、「Lancet」に報告。

その後、田中部長らはミトコンドリアDNAを構成している
すべての塩基配列(1万6569塩基対)を、日本人672人を対象に調べ、
2003年からミトコンドリアDNAの多型(=1塩基多型=SNP。
遺伝子の中の1個の塩基が別の塩基に置き換わっているもの)
に関する世界最大のデーターベース
http://www.giib.or.jp/mtsnp/index.shtml)を公開、
「ゲノム・リサーチ」に報告。
さらに、このデーターベースを元に、
ミトコンドリアDNAの型の網羅的解析システムを開発。

●約4300人のデータを解析

これら研究成果をふまえて、岐阜県立の3病院を受診した2906人
(2型糖尿病患者1289人、健常者1617人)、
ソウル大医学部付属病院を受診した1365人
(2型糖尿病患者732人、健常人633人)を対象に、
糖尿病のかかりやすさや、
かかりにくさに関連するミトコンドリアDNAの型を探索。

その結果、日本人男女および韓国人男女で約4%の頻度で見つかる
ミトコンドリアDNAの型(ハプログループN9a)を有する人が、
2型糖尿病にかかりにくいことが分かりました。

2型糖尿病患者の中で、このDNAの型(ハプログループN9a)を持つ人は
3.0%だったが、健常人の中でこの型を持つ人は5.3%。
このDNAの型(ハプログループN9a)を持つ人は、持たない人に比べて、
45%も2型糖尿病にかかるリスクが低い。

特に、日本人女性ではこのDNAの型(ハプログループN9a)を持つ人は、
持たない人よりも、2型糖尿病にかかるリスクが73%も有意に低い。

●かかりやすいDNAの型も明らかに

日本人男女では、約8%と高い頻度で見つかるミトコンドリアDNAの型
(ハプログループF)を有する人は、2型糖尿病にかかりやすい。
このDNAの型(ハプログループF)を持つ人は、持たない人よりも1.54倍も、
2型糖尿病にかかりやすいという。

ハプログループN9aというミトコンドリアDNAの型を持っている人は、
2型糖尿病にかかりにくい遺伝的体質。
このため、このDNAの型(ハプログループN9a)を持っていない人に対しては、
積極的に生活習慣改善を行うなどのテーラーメード予防策が、
2型糖尿病発症抑制に寄与すると考えられます。

このDNAの型(ハプログループN9a)を持っていない人の中でも特に、
ハプログループFの人は、グループF以外の人より
1.54倍も2型糖尿病にかかりやすい遺伝的体質を持っているので、
積極的な予防策が2型糖尿病発症抑制に特に有用。

DNAの型(ハプログループN9a)においては、
ミトコンドリアDNAの1万2358番目の塩基がアデニンからグアニンに変化。
このため、ミトコンドリアでのエネルギー産生に関与する酵素
(電子伝達系複合体I)のアミノ酸の1つがトレオニンからアラニンに変化。

「このアミノ酸配列の1カ所の違いが、ミトコンドリア機能に影響を与え、
糖尿病にかかりにくい体質の基礎となっている」と推定。

研究グループは、今回の糖尿病だけでなく、
メタボリックシンドローム・心筋梗塞・脳卒中などにおいても、
それぞれに関連するミトコンドリアDNAの型を見いだしています。
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その人の性格や病気になりやすさ、といったものは、
先天性のものと後天性のものがあります。
今回のゲノムレベルで、糖尿病の発症リスクを明らかにしたのは、
先天性のもの、体質として理解できます。
ただし、あくまでも先天性においてリスクが高いだけで、
後天性の要因も大きいです。
私たちは、日常生活で十分に糖尿病の発症リスクを下げることができます。
先天的に発症リスクの高い体質の人は、注意する必要がありますね。
ますます横に成長しているおいらにとって、
日常生活を見直さなければ、と痛感しております・・・。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=41320&categoryId=&sourceType=GENERAL

January 31, 2007

運動後の筋肉痛をカフェインが緩和

(WebMD Medical News 1月17日)

スポーツ飲料のボトルにコーヒーを入れようと思う人はあまりいないが、
運動前にコーヒーを2杯飲むと、その後の筋肉痛を50%近く減らすことが
できることが示唆。

研究者らは、コーヒーの筋肉痛緩和効果はアスピリンのような鎮痛薬で
一般にみられる鎮痛効果より高いという。

ジョージア大学運動学部のPatrick O'Connor氏は、
「筋肉痛には、たいていアスピリンやイブプロフェンが使われるが、
少なくもカフェインの1日摂取量が低い女性ではこうした薬剤よりも
カフェインの方がよく効くと思われる」。

しかし、カフェインの疼痛緩和作用は、
日頃からコーヒーやカフェイン飲料を飲んでいる人には表れないよう。
カフェインが最も効きやすいのは、
普段カフェインを摂らない人や運動しない人。
したがって、今回の知見は運動を始めたばかりで
筋肉痛になりやすい人には有益な情報。

ジョージア大学の Victor Maridakis氏は、
「カフェインで筋肉痛を和らげることができれば、
運動を始めた最初の週から長時間の運動プログラムに入るのが容易に」。

●カフェインの疼痛緩和作用

今回の研究は、カフェインを摂る習慣がなく、
筋肉トレーニングも定期的に行っていない9人の女子大学生を対象に、
運動後の筋肉痛に対するカフェインの影響を検討した小規模研究。

対象女性は、筋肉痛を引き起こすため筋肉トレーニングを行い、
その24時間後と48時間後にコーヒー2杯分相当のカフェインを含む
錠剤またはプラセボを服用。

錠剤服用から1時間後、痛む方の大腿四頭筋を使う運動を2種類実施。
その結果、1時間前にカフェインを飲んだ女性は
プラセボ群より筋肉痛が最大で48%少ない。

ナプロキセン(商品名Aleveの有効成分)含有薬剤の先行研究における
カフェインの筋肉痛緩和効果は30%。
アスピリンを服用した場合では、25%。

また、摂り過ぎは神経過敏、動悸、睡眠障害などの副作用を起こす
おそれがあるため、運動前にカフェインを摂る際は注意。

「カフェインには痛みを軽減する作用がある。
けれども常識的に考えて摂り過ぎには注意してほしい」。

Maridakis, V. The Journal of Pain, Dec 11, 2006 online edition, to appear in February 2007 print addition. News release, University of Georgia, Athens.
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これは、運動を始めたばかりの人たちにとっての天敵、「筋肉痛」を
軽減することは非常に有用ですね。
筋肉痛はやる気をそいでしまいますからね。
コーヒー中毒のおいらにとっては、あまり効果がなさそうですが・・・。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=41182&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

January 30, 2007

大脳皮質成長の仕組み解明

(毎日 1月23日)

知覚、思考、記憶など、脳の高次機能を担う大脳皮質が、
胎児の段階で形成されるメカニズムを、
名古屋大大学院医学系研究科の宮田卓樹教授が突き止めました。
世界初といい、今後、脳疾患の原因解明につながるのではと期待。

大脳皮質は、カイワレダイコンの束のようになった、ひも状の母細胞が
密集した板状の固まりを土台に成長。
そのカイワレの葉の部分に神経細胞が積み重なるようにして、
大脳皮質が形成。
しかし、脳の中心方向で分裂して発生した神経細胞が、
どのようなメカニズムで表面方向に運ばれていくのかが解明されず。

宮田教授は、マウスの胎児の脳をスライスし、
大脳皮質の形成過程を観察。
その結果、母細胞のひも状の突起は地面から空に伸びていく
植物のツルのようにねじれ、脳の表面部と結びついていることが分かりました。
さらに、地面となる脳の土台で、ひも状の母細胞の根元を切り離す
実験をしたところ、バネの一方を手放したように、
母細胞の中心部が急速に表面方向に引っ張り上げられることも判明。
細胞突起がバネのような働きをし、脳の底部から脳表面に
次々と引き上げられていると結論。

脳疾患の一部の原因は、大脳皮質の形成過程で、
神経細胞が適切に表面部に集まっていかないことが挙げられています。
宮田教授は、「一部の脳疾患の原因を解明できる可能性がある」。
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http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=41142&categoryId=&sourceType=GENERAL

January 28, 2007

オスはメスの派生型

(毎日 1月17日)

進化の過程で、雄と雌が分かれる鍵になったとみられる遺伝子を、
東京大大学院の野崎久義・助教授(細胞進化学)らが発見。
雌が原型で、雄はその派生型であることが判明。

生物の生殖は、雌雄の区別のない同じ大きさの二つの生殖細胞が
結合する「同型配偶」から、雌雄の区別があり、
大型化して動かなくなった卵子と、小型で動き回る精子が受精する
「卵生殖」に進化したとされています。
しかし、性別(生殖細胞の違い)が、どのように生まれたのかは謎。

野崎助教授らは、04年に神奈川県の津久井湖で発見した
緑藻プレオドリナを実験対象。
プレオドリナの遺伝子のうち、役割の分かっていない遺伝子を分析した結果、
雄だけに存在し、精子が作られる時に活動する遺伝子を発見し、
「オトコギ」と名づけました。

より原始的な緑藻では、雌雄はなく、
「プラス型」と、「マイナス型」の同一サイズの細胞が結合。
ところが、オトコギによく似た「MID遺伝子」がある場合、
プラス型がマイナス型に変わります。
このため、プラス型が性の原型、マイナス型が派生型で、
プレオドリナの雌、雄はその延長で誕生したと考えられるという。
米科学誌「カレント・バイオロジー」に掲載。
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性別はどのようなメカニズムで生じるのか??
という根本的な謎を、遺伝子レベルで発見できたというのは
とても意義がありますね。
当たり前のようなことが分かっていないのが生命科学の魅力です。
ヒトにも「オトコギ」遺伝子があるのでしょうか?
今後の研究に期待です。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=40810&categoryId=&sourceType=GENERAL

January 19, 2007

紅茶で心臓病予防、ミルク入れると効果なし…独の研究

(読売 1月9日)

紅茶には心臓病を防ぐ効果があるとされているが、
その効果もミルクを入れて飲むとなくなることが、
ベルリン医科大付属病院(ドイツ)の研究で分かりました。

研究チームは、更年期を過ぎた健康な女性16人を対象に、
何も加えない紅茶と、脱脂乳のミルクを10%加えた紅茶とを
500ミリ・リットル飲んでもらう実験。
飲む前と2時間後に、腕の動脈を超音波で調べ、
血管の弾力性を示す指標「FMD」を計測。

FMDは、血管内皮の機能を反映し、低い数値は心臓病の兆候に。
実験の結果、ミルクなしの紅茶を飲んだ後は約4・3%向上したが、
ミルク入りだとほとんど変化がない。

ネズミの細胞を使った実験でその原因を分析したところ、
ミルクに含まれる様々なたんぱく質の中でも特にカゼインが、
紅茶の有効成分と結合してしまう。
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ミルクの中に含まれるカゼインが原因でしたか。
でもカゼインがあることで、腸内に吸収されやすくなるのでは??
ま、いつもミルクなしで飲んでいるおいらにとっては、
あまり関係ないかも。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070109i207.htm

アルツハイマー病に関与の遺伝子を特定 千葉大など

(朝日 1月15日)

65歳以上で発症するタイプのアルツハイマー病に関係する
遺伝子の一つを、カナダ・トロント大、イタリア・トリノ大、千葉大などの
国際研究チームが特定。
この遺伝子の型によって、発症しやすさに差があるという。
治療法の開発などにつながると期待。

アルツハイマー病患者の脳には、
「ベータアミロイド」というたんぱく質が蓄積することが知られており、
チームはSORL1と呼ばれる遺伝子が正常に働くと、
このたんぱくの蓄積を抑えることを実験で確認。

さらに、欧米に住む人を中心とする約6000人から集めた
DNAサンプルを調べたところ、SORL1に個人差(型)がある場所があり、
アルツハイマー病のかかりやすさに統計的に意味のある差が。
チームは、ほかの遺伝子6個についても調べたが、関連はみられず。

65歳以上で発症するアルツハイマー病は日本人にも多い。
関連する遺伝子は、93年に報告されたアポリポたんぱくEと呼ばれる遺伝子。
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おいらも、昔アルツハイマーの研究をほんのさわり程度でしたが、やりました。
だから、この病気の原因を早く突き止めて、有効な治療法を見つけてほしい。
期待してます!!


http://www.asahi.com/science/news/TKY200701150143.html

January 16, 2007

脳梗塞が起きやすい遺伝子型解明 九大などのグループ

(朝日 1月8日)

脳梗塞が起きやすい人の体質を、
九州大と東大医科学研究所などのグループが、遺伝子レベルで解明。
ある遺伝子タイプを持っている人は、そうでない人より
脳梗塞の発症率は2.8倍高い。
このタイプの人は、生活習慣により注意するなど健康指導の目安に。

研究グループは、
清原裕・九大教授(環境医学)や久保充明・理化学研究所チームリーダーら。

酒に強い人と弱い人がいるように、
人の体質の個人差は遺伝暗号のわずかな差(SNP)で決まっています。
久保さんらは、脳梗塞患者と健康な人それぞれ1126人の協力を得て、
その差を調べました。
その結果、「PRKCH」という遺伝子上での差がかぎだと判明。
この遺伝子の役割ははっきりわかっていないが、
情報伝達などの働きがあるとみられています。

日本人に多い小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)について分析すると、
あるタイプは、そうでない場合の1.66倍、危険性が高い。
長年、住民の疫学調査をしている福岡県久山町にあてはめ、
88年からの14年間で脳梗塞が起きた67人で調べると、
このタイプの人はそうでない人より発症率が2.8倍高い。

将来、この遺伝子上の差を調べるのはさほど困難ではないという。
久保さんは「このタイプを持っている人は最高血圧を130に、
といったように、きめ細かな生活指導ができるように研究を重ねたい」。

http://www.asahi.com/science/news/TKY200701070231.html

December 31, 2006

「野口英世アフリカ賞」有識者会議が発足

(朝日 12月21日)

アフリカの医療に貢献した人を対象に政府が創設した
「野口英世アフリカ賞」の選考方法などを検討する有識者会議が初会合。
8人のメンバーには医学関係者に加え、
緒方貞子国際協力機構(JICA)理事長や
御手洗冨士夫日本経団連会長が就任。

「アフリカの疾病対策のノーベル賞」(安倍首相)といった国際的権威付けや、
約1億円の賞金の一部を企業からの募金に期待する政府の狙いに沿った人選。
賞を発案した小泉前首相は会議への参加は断ったが、募金活動には協力。

有識者会議のその他のメンバーは次の通り。

小野元之日本学術振興会理事長▽唐沢祥人日本医師会長
▽黒川清内閣特別顧問▽高添一郎野口英世記念会長
▽長倉三郎日本学士院長▽宮村達男国立感染症研究所長

http://www.asahi.com/politics/update/1221/012.html

December 28, 2006

若手技術者の実態、高い専門知識も低い課題設定力-文科省調査

(日刊工業新聞 12月20日)

文部科学省は、研究人材を中心としたわが国の
研究活動の実態に関する調査結果を発表。
若手研究者の能力についての評価では、
60%の研究者が「専門分野の知識」は高いとしているものの、
30%の研究者は「課題設定能力」「社会常識」「創造性」は低いと回答。

調査は、研究者の意識などの実態を把握・分析し、
科学技術政策の立案に役立てるために毎年テーマを変えて実施。
産学官の研究者2000人を対象。有効回答は1024人(回答率51・2%)。

若手研究者の「課題設定能力」「創造性」など
素養・能力を養うための有効な取り組みとしては、
「小・中・高等学校の教育内容の充実」を挙げた研究者が52・0%、
「大学・大学院の教育内容の改善」(39・1%)を大きく上回りました。

産学官で女性研究者が少ない理由としては、
「出産、育児、介護など家庭の事情」を挙げた研究者が44・1%で最多。
回答者全体の中で女性研究者は6・2%だったが、
そのうちの55・6%が全体の理由と同様に
「出産、育児、介護など家庭の事情」を挙げました。
女性研究者が働きやすくするには、
「勤務時間・勤務形態の弾力化」が第1と考える女性研究者が50・8%で、
男性研究者を含めた全体では38・3%。

http://brain.newswatch.co.jp/emkt/jst/16044/nknkogyo2006122100039.html

BCGがアレルギー防ぐ仕組みを解明 理研

(朝日 12月19日)

結核予防のためのワクチン「BCG」が、
本来無関係なはずのアレルギーを抑える仕組みを、
理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの
谷口克センター長らのグループが明らかに。

花粉症やアトピー性皮膚炎などの新しい治療法に
つながる可能性があるほか、
「アレルギー患者の増加は衛生状態の改善が一因」とする説を
補強する成果。

弱毒化したウシの結核菌をワクチンとして使うBCGは、
国内では戦時中から集団接種が始まりました。
従来は、ツベルクリン反応(ツ反)検査で陰性の場合に接種していたが、
05年4月からは乳児全員に生後6カ月までの接種が義務づけ。

過去の疫学調査で、感染やBCGで結核菌への抗体ができた
ツ反陽性の人は、抗体ができていないツ反陰性の人に比べ、
ぜんそくの発生率が約4分の1と低いことなどが知られていました。
しかし、なぜアレルギー疾患が減るのかは謎。

谷口さんらが、BCGを注射したマウスを詳しく調べたところ、
体内に侵入した細菌などを攻撃する免疫細胞の一種
「ナチュラルキラーT細胞」(NKT細胞)が活性化。
NKT細胞は、アレルギー反応に関係するIgE抗体を作る
リンパ球を死なせることで、IgEがむやみに増えるのを防止。
人にBCGを注射しても同じ結果が得られたという。

アレルギー疾患は、特に先進国での増加が著しいと言われ、
衛生環境の向上で病原菌に触れる機会が減ったこととの関連を
指摘する説があります。
谷口さんは「今回の成果は、この説の裏付けになるのではないか」。

http://www.asahi.com/science/news/TKY200612180324.html

December 27, 2006

オス誕生のカギ、「オトコ気」遺伝子を発見

(読売 12月19日)

生物はもともと女性で、男性は女性から変化して生まれた――。

生物進化の過程でオスが誕生する鍵となった遺伝子を、
日本の研究グループが世界で初めて発見。
新遺伝子は、OTOKOGI=侠気=と命名され、
米科学誌カレント・バイオロジーで報告。

男女間で生殖する有性生殖は、性が異なる二つの細胞が
くっついて遺伝子を交換する「同型配偶」から出発、
その性が後に、精子を作るオスと卵子を作るメスへと
進化したと考えられています。

東大の野崎久義助教授(生物科学)らは、
神奈川県内の湖で見つけた緑藻「ボルボックス」の新種の雄株から、
オス特有の遺伝子OTOKOGIを発見。
この遺伝子が、同型配偶するクラミドモナスという
緑藻の性を分ける遺伝子から進化し、
精子の核にあるたんぱく質を作ることを突き止めました。

ボルボックスと遺伝的に近いクラミドモナスは、
プラスとマイナスの性があり、特定の遺伝子を持つとマイナスの性になるが、
どちらがオスとメスに進化したかは不明。
今回の研究で、性を分ける遺伝子を持たない生物がメスで、
この遺伝子を後から持つようになったオスが生まれた
可能性が高いことがわかりました。
野崎助教授は、「日本人が見つけた男性に
最も重要な遺伝子という意味で、侠気と名づけた」。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20061219i501.htm

December 26, 2006

ラクトフェリン効果 大腸がん予防に期待

(毎日 12月16日)

人や動物の母乳、唾液、涙などに含まれるたんぱく質のラクトフェリンが、
大腸ポリープの成長を抑制することが分かりました。
これは、大腸がんの予防につながる可能性があることを示します。

◆多様な働き

ラクトフェリンは、母乳に含まれることで知られる糖たんぱく質。
特に初乳に多く含まれ、生まれたばかりの乳児が
ラクトフェリンを摂取することで細菌に負けない体になったり、
免疫機能が強くなったりするといわれています。
唾液や涙などにも含まれ、細菌感染を防ぐ働きも。

このほか善玉の腸内細菌を増やしたり、殺菌作用を示すなど
さまざまな機能を示すのがラクトフェリンの特徴。

注目されるのが、大腸がんの予防効果の可能性。
ラットやマウスにラクトフェリンを与えた実験では、
津田洋幸・名古屋市立大学大学院医学研究科教授(生体機能分子医学)と
国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト・飯郷正明室長らの研究で、
ラクトフェリンが大腸がんの発生やがんの転移などを抑制することを確認。

◆ポリープ縮小

では、人間の場合も有効なのか?
国立がんセンターがん予防検診研究センターの
神津隆弘・検診データ集積管理室長らは、01年から今年にかけ、
直径5ミリ以下のポリープ(腺腫)をもつ104人(40-75歳)を対象に、
牛乳由来のラクトフェリンを摂取してもらい、
ポリープの成長が抑えられるかどうかを調べました。

104人を、(1)ラクトフェリンを1日あたり3グラム摂取する、
(2)ラクトフェリンを1日あたり1・5グラムを摂取する、
(3)プラセボ(ラクトフェリンを含まない偽薬)の三つのグループに分け、
それぞれを1年間摂取してもらい、
摂取前後のポリープの成長または縮小具合を調べる方法
(ランダム化二重盲検比較試験)で行いました。

5ミリ以下のポリープは、がんである可能性がきわめて小さいため、
一般的には経過観察に。
摂取前に、内視鏡で対象となるポリープの直径を測定し、
近くに印をつけておき、1年後に再度、直径を測定して
ポリープの大きさの変化を確認するという緻密な研究。

◆NK細胞も活性化

プラセボ群では、ポリープが6%(平均直径0・24ミリ)大きくなったのに対し、
ラクトフェリン3グラム摂取群は、4・9%縮小(同マイナス0・2ミリ)。
ラクトフェリン1・5グラム摂取群では、2・1%(同0・08ミリ)の増大。

免疫機能の指標となるNK細胞の活性も、
ラクトフェリン3グラム摂取群では上昇。

血液中に含まれるヒトラクトフェリンの濃度が、
ラクトフェリン3グラム摂取群ではプラセボ群に比べて上昇。
神津さんは、「1日3グラムのラクトフェリン摂取が、
ポリープを縮小させることが分かった」。

◇安全性も問題なし

ラクトフェリンは、サプリメント(錠剤)や一部ヨーグルトに配合。
牛乳にも含まれているが、高温で殺菌された市販の牛乳では
活性がなくなっており、牛乳を飲んでも効果は期待できないです。

津田さんは、「ラクトフェリンは、乳児が母乳から大量に摂取しているほどだから、
安全性において問題はほとんどない。
ラクトフェリンでポリープが消えてなくなるわけではないが、
大きくなるのを抑えるので大腸がんの予防になるのでは」。

大腸がんの患者は年間約10万人で、死亡者は約3万9000人(03年)。
大腸がん防止には、運動や禁煙、肥満解消、魚の摂取といった
生活スタイルに注意することが大切。
神津さんは、「基本はがん検診。40歳を過ぎたら、
定期的に受けることをお勧めする」と検診の大切さも指摘。

◆放射線障害

フォーラムでは、放射線の障害を防ぐ研究報告も注目。

放射線医学総合研究所と石巻専修大学の研究によると、
半数が死ぬ致死線量のエックス線をマウスに照射した場合、
事前にラクトフェリンを混ぜたえさを与えられたマウスの生存率(85%)は、
与えないマウス(62%)に比べて高いという結果。

オゾン層の破壊で、地表に降り注ぐ放射線量は増えています。
同研究は、放射線を浴びる量の多い職場での健康維持にも役立つ可能性。

◆C型肝炎

ラクトフェリンは、抗ウイルス作用をもちます。
東邦大学医学部の研究によると、C型肝炎患者にラクフェリンを
摂取してもらう試験で、肝機能が維持されることが分かりました。

90人のC型肝炎患者に、牛ラクトフェリンを摂取してもらう試験を行った
三重大学医学部の研究では、脂質の過酸化を抑えることが分かり、
肝臓の発がん予防につながる可能性が示唆。

ラットの実験(徳島文理大学)で、骨の分解が進むのを抑制。
これは、骨粗しょう症の予防につながる研究。
口臭の防止や歯周病の予防につながる研究報告も。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=39499&categoryId=&sourceType=GENERAL

December 25, 2006

理系白書’06:私の提言/中 北城恪太郎・経済同友会代表幹事

(毎日 12月13日)

安倍晋三内閣は、公約に「イノベーションによる成長戦略」を掲げています。
方針は適切なので、今後はイノベーションを起こすために
何が必要かという戦略の具体化に力を入れるべき。
厳しい財政事情の中で、民間の資金を効率的に投入する視点が必要。

日本は、既存の技術を改善していく分野では非常に強い。
例えば自動車、製鉄、デジタル家電など。
しかし、これから何が伸びていくかという「目利き」は得意とはいえません。

米国などでは、その過程でベンチャーが重要な役割を果たしています。
事業に結びつくかどうかよく分からない分野の「種」に、
ベンチャーが取り組み、事業化への取捨選択の「ふるい」にかけています。
例えば、バイオテクノロジー分野では、
新しく開発される薬の「種」の半分は、ベンチャーが開発。

「これは面白い」という研究開発をしているベンチャーには
民間資金が集まり、経営のプロも集まります。
スピードも速く、多くの人が目利きをします。
ベンチャーが研究開発の一翼を担っているのです。

一方、日本では、ベンチャーの設立自体が難しい。
ベンチャー経営に必要な資金や支援が集まりにくいから。
「リスクをとらない国民性」といわれますが、
むしろリスクをとりにくい制度が問題。

例えば、米国の税制は「総合課税」。
ある個人がベンチャーに投資し、それが失敗に終わっても、
その損失を他の事業で得た所得と合わせて税が控除されます。
「失敗の痛みを和らげる税制」といえます。
つまり、研究の投資先は国が選ぶのではなく、民間にゆだねて、
「もし失敗したら税負担を軽くしましょう」という制度。

経済産業省がベンチャー育成の優遇税制を導入しましたが、
まだ欧米の水準には達していません。
イノベーションを進めるには、まずその担い手である
ベンチャーの創業を促進する税制改革に取り組むべき。
現在の科学技術分野の議論では、この問題が十分認識されていない。

科学技術予算が増えたことによるマイナス効果も指摘。
著名な研究者に資金が集中し、研究成果の事業化の努力をしなくなりました。
事業化は大変な努力が必要ですが、
研究資金が増えた研究者は、好きな研究だけに取り組み、
その労を惜しむ例があるようです。

これだけ科学技術予算が確保された今、
事業化に向けた研究開発の選択は民間に任せたらいい。
国の科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議は、
基礎研究の選択を担い、実用化に近い部分の選択は民間が担うのです。
研究者の知人や友人が100万~200万円の投資を
しやすくする優遇税制を導入し、研究者も資金の重みを感じて
事業化に取り組めば、研究費の無駄遣いなど「モラルハザード」を
防ぎながら、成果が生まれやすくなります。

日本の社会構造は、ものづくりに適しています。
匠の技、安定雇用、会社への忠誠心、高い品質管理。
これらは、改善を続けながら残すべきシステム。
ここにイノベーションが加われば、強さは本物に。
海外でも有名になった「カイゼン」と「イノベーション」の組み合わせを目指すべき。
==============
◇きたしろ・かくたろう

1944年東京都生まれ。慶応大工学部卒、
カリフォルニア大大学院(バークリー校)修士課程修了。
日本アイ・ビー・エム取締役、社長など経て、99年から同社会長。
03年から現職。著書に「ニッポン『起業』学」など。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20061213ddm016070005000c.html

December 24, 2006

傷口癒着防止:新技術を開発--東大グループ

(毎日 12月12日)

手術後に患部と皮膚や臓器がくっついてしまう癒着を防ぐ新技術を
開発したと、東京大病院や同大家畜病院などの研究グループが発表。
傷口や臓器に2種類の薬剤を噴霧するだけでよく、
ウサギを使った実験では、発生量を7割以上減らすことに成功。
癒着が起きると、腸閉塞や慢性的な痛みが生じることが。
東大病院の倫理委員会に臨床試験を申請する準備を進めており、
数年後には実用化したいという。

手術後の癒着は、腹部の手術の半数以上で見られます。
従来は、薬剤を塗ったフィルムを患部に張る防止法が用いられていたが、
取り扱いが難しく、効果も低い。

研究グループは、傷口にゼリー状の膜を作る癒着防止剤、
術部以外の臓器などには保水作用のあるトレハロースを
噴霧する新手法を考案。
佐々木伸雄・東京大家畜病院長(獣医外科学)は、
「薬剤を噴霧するだけなので、手術時の医師の負担が減り、
腹腔鏡手術でも簡単に扱える利点がある」。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20061212ddm002040142000c.html

December 21, 2006

におい:動物が感じるには鼻の粘膜も機能

(毎日 12月13日)

動物がにおいを感じるのに、
鼻の粘膜が重要な役割を果たしていることを、
東大大学院新領域創成科学研究科の東原和成助教授らの
グループが突き止めました。
嗅覚障害の治療に利用できる可能性があり、米科学誌「ニューロン」に発表。

動物がにおいを感じる場合には、
におい分子を受け取る受容体と神経回路だけが重要だと考えられてきました。
鼻の奥にある嗅細胞の嗅覚受容体に、においのもとがくっつき、
その情報が神経回路に伝わる仕組み。
東原助教授らは、試験管内での嗅細胞の受容体の反応と
実際の動物の受容体の反応を比較する方法を開発。
約10種類のにおい物質を使って、
試験管内の細胞とマウスの反応を比較。
その結果、マウスの方が1000倍感度が高く、
におい物質の微妙な構造の違いも区別できました。
鼻粘膜を構成する粘液層が重要な役割を果たしているため。

東原助教授は、「鼻粘液の組成を変えることでにおいの感じ方を変えたり、
鼻粘液を嗅覚障害の治療のターゲットにできるかもしれない」。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20061213ddm016040004000c.html

December 17, 2006

減量:カロリー制限にご用心…骨密度が減少

(毎日 12月12日)

運動による減量では、骨の硬さを示す骨密度が保たれたが、
食事のカロリー制限による減量では骨密度が減少したとの比較研究を、
米ワシントン大のチームが発表。
「骨粗しょう症の危険性が高まる中年期の減量は、
細心の注意を払って行う必要がある」と指摘、
安易な低カロリーのダイエットを戒めています。

平均年齢が57歳の男女48人について、
食事のカロリーを最初の3カ月は16%、続く9カ月を20%減らしたグループと、
従来と同じカロリーの食事を取るが運動によってエネルギー消費量を
最初の3カ月は16%、続く9カ月は20%増やしたグループ、
従来の生活習慣を維持したグループとに分け、
1年後に体重と骨密度を測定。

その結果、カロリーを減らしたグループでは体重が平均8.2キロ減ったが、
骨粗しょう症になるとダメージを受けやすい腰椎や股関節、
大腿骨上端で骨密度が約2%減少。

運動をしたグループは、体重が平均6.7キロ減ったが骨密度に変化はなく、
生活を維持したグループは体重も骨密度もほとんど変化はない。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20061213k0000m040058000c.html

December 02, 2006

レスベラトロールは、高カロリー餌摂取マウスの健康を増進させ、寿命を延長

(nature 2006年11月16日号)

レスベラトロール(3,5,4′-トリヒドロキシスチルベン)は、
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、線虫(Caenorhabditis elegans)、
キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)などの
多様な種の寿命を延長させます。
これらの生物における寿命の延長は、
カロリー制限の有益な効果の基礎となるとされている保存された
デアセチラーゼ、Sir2に依存。

本論文では、レスベラトロールが、中齢の高カロリー餌摂取マウスの
生理機能を通常餌摂取マウス並に変化させ、生存を有意に延長させることを示す。

レスベラトロールは、インスリン感受性の増大、
インスリン様増殖因子-1(IGF-I)レベルの低下、AMPキナーゼ(AMPK)、
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γコアクチベーター1α(PGC-1α)活性の亢進、
ミトコンドリア数の増加、および運動機能の改善をはじめとする
寿命延長に関係する変化をもたらします。

PAGE(Parametric analysis of gene set enrichment)解析により、
高カロリー餌の影響によって著しく変化した153経路のうち、
144経路に対してレスベラトロールが拮抗することが明らかに。

今回のデータは、低分子物質を用いた哺乳類の身体全体の健康増進は
到達可能な目標であり、肥満関連障害および加齢に起因する疾患の
治療の新しいアプローチを示すもの。

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200611/nature/7117/01.html?Mg=3a2556cc8e19a5a5022d928092ffaca5&Eml=10ba2da20acd510be8be073161923479&F=h&portalId=mailmag

November 30, 2006

高コレステロールはアルツハイマー病のリスク上昇につながる

(Medscape Medical News 11月6日)

高脂質・高コレステロールの食餌は、マウスにおいて神経炎症を誘発し、
作業記憶を損傷することが新しい研究で報告。
これまでの研究を確認および拡大するとともに、
ヒトにおけるアルツハイマー病(AD)に伴う認知障害の回避と治療にとって
大きな意味を持つ可能性があります。

サウスカロライナ医科大学のNarayan Bhatは、
こうした関係を証明している他の諸研究では、
遺伝的にAD発症の素因のある遺伝子改変動物を用いているという。
この研究は、正常動物においても高コレステロールが
作業記憶に有害作用を及ぼすことを示した初めての研究。

「遺伝子改変動物は、既にAD症状を発現しやすいため、
こうした動物に対する食事の影響を検討するのは困難である。
我々は、こうした動物の記憶に何が起きるかを知るために、
正常マウスを調べることにした。我々の知る限り、
高脂質・高コレステロールの食餌が非遺伝子改変マウスにおいて
神経炎症を引き起こすことを明らかにしたのは我々の研究が初めて。
こうしたマウスの脳でも、ADの病因に関連することが知られている
蛋白質のアミロイドβ蛋白濃度が上昇」。

同マウスには、2カ月間にわたり、高コレステロール・高脂質の食餌を与えました。
第7週目および8週目に、記憶能力について毎日マウスを検査し、
その結果を正常な食餌を与えた対照群マウスと比較。
さらに、LDLレセプターノックアウト(LDLRKO)マウス群において平行試験を実施。

高脂質の食餌を与えた正常マウスは、記憶エラーの数が3-4倍増と、
対照群より記憶能力が有意に低い。
一方、高コレステロール血症のLDLRKOマウスは、
食餌とは関係なく記憶障害と神経炎症の徴候を示し、
これは高脂質・高コレステロールの食餌により悪化。

関連する炎症以外には、記憶に有害作用を及ぼすコレステロール濃度自体は
上昇しない可能性が示されています。
最近の臨床試験では、スタチン療法のコレステロール低下作用ではなく
その抗炎症作用に起因すると考えられる知見、
すなわちコレステロール濃度低下のためにスタチン療法を受けている患者では
AD発生率が低いことが示されています。
同様の知見は、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬を
服用している患者でも報告。

高脂質食を与えられた正常マウスの脳における生化学的変化を、
対照群と比較検討したところ、海馬において、
マイクログリア細胞マーカーのCD45、アストログリア細胞マーカーGFAPなど、
炎症マーカーの濃度上昇が認められています。
ADの早期マーカーであるAβ-40の濃度上昇も。

「通常、これらのマイクログリア細胞はスカベンジャー細胞として作用し、
細胞残屑を処理。しかし、それらが慢性的に活性化されると、
フリーラジカルやサイトカインなど、記憶形成に必要な
ニューロンやシナプス結合を損傷する有害な伝達物質を産生」。

こうした結果が確認されれば、AD予防に大きな意味を持ちます。
「アルツハイマー病の95%が弧発性であり、
APOEにおける対立遺伝子の違い以外には、
既知の遺伝的関連性は知られていない。
APOEとは、それ自身がADを引き起こすわけではないが、
ADを発生しやすくする可能性がある既知のコレステロール輸送蛋白質。
AD発現の多くが、修正可能な生活習慣、環境因子によるなら、
AD発現を予防しうるという希望を与えてくれる」。

こうした戦略には、低脂質食、または場合によっては多不飽和脂質の多い
食餌を用いることができ、さらに食餌誘発性の神経炎症の変化と
記憶欠損との関係は、コレステロール降下剤や選択NSAID療法といった
抗炎症治療薬が治療上有用である可能性を強調。

Neuroscience 2006: Abstract 711.6. Presented October 19, 2006.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=37707&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

November 29, 2006

視床下部に局在する食欲抑制分子であるネスファチン-1の発見

(nature 2006年10月12日号)

脳の視床下部は、摂食行動の調節に重要な
いくつかの分泌分子を含んでいます。
本論文では、これまで機能が明らかになっていない分泌タンパク質
NEFA/nucleobindin2(NUCB2)の構造タンパク質に相当するネスファチンが、
食欲抑制を司るラット視床下部神経核に発現していることを示しています。

NUCB2の脳室内(i.c.v.)注入によって、摂食は減少。
ラットの脳脊髄液は、NUCB2のアミノ末端断片タンパク質である
ネスファチン-1を含み、飢餓状態では、
視床下部室傍核でのネスファチン-1の発現が減少。

ネスファチン-1の脳室内注入は、用量依存的に摂食量を減少させ、
逆に、ネスファチン-1中和抗体の注入は食欲を刺激。
一方、NUCB2から切り出される可能性のあるほかの断片タンパク質には、
摂食抑制作用がみられないです。
また、NUCB2が摂食抑制を示すには、ネスファチン-1に切断されることが必須。
ネスファチン-1を慢性的に脳室内注入すると、体重が減少し、
一方、アンチセンス・モルフォリノ・オリゴヌクレオチドの
慢性的脳室内投与によって、NUCB2遺伝子の発現を抑制すると、
ラットの体重は増加。

レプチン受容体に変異のあるZuckerラットでも、
ネスファチン-1により食欲抑制が引き起こされ、
また、抗ネスファチン-1抗体はレプチンによって引き起こされる
食欲抑制作用を阻害しない。

対照的に、αメラニン細胞刺激ホルモンの脳室内注入は、
視床下部室傍核のNUCB2遺伝子発現を上昇させ、
ネスファチン-1によって引き起こされる食欲抑制は、
メラノコルチン-3/4受容体拮抗薬によって抑制。

ネスファチン-1が、メラノコルチンシグナル伝達に関連する
視床下部の食欲抑制分子であると同定。

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200610/nature/7112/01.html?Mg=ae5d76a46e59586dd3351223f1e44f21&Eml=10ba2da20acd510be8be073161923479&F=h&portalId=mailmag

November 28, 2006

運動が視力低下を防ぐ可能性

(WebMD Medical News 10月30日)

運動によって、体型だけではなく視力も維持できる可能性が。
定期的な運動によって、加齢黄斑変性(AMD)のリスクが
最高で70%低下する可能性が示唆されています。

AMDは変性性の眼疾患であり、後極部の黄斑という領域にある
感光性細胞の機能が停止。
AMDは、年齢60歳以上の人において重度の視力低下の主な原因。
AMDは、滲出性AMDと萎縮性AMDの2タイプに分かれます。

萎縮性AMDでは、患者の黄斑にドルーゼンという沈着物が溜まります。
この2タイプのAMDのうち、萎縮性AMDの方が一般的であるが、
萎縮性AMDは滲出性AMDに移行する可能性が。

滲出性AMDでは、黄斑の下に異常血管の増殖がみられ、
この血管から網膜に血液が漏れます。

研究者らは、生活様式が活動的で、1週間に3回以上運動をする高齢者では
滲出性AMD発症のリスクが70%低いことを見出しました。

●運動とAMD

ウィスコンシン州ビーバーダムに住む年齢43-86歳の男女約4,000人を
15年間にわたって追跡。参加者には、生活様式と運動習慣についての質問と
詳細な眼科検査を5年毎に実施。

結果は、『British Journal of Ophthalmology』に掲載。
4人に1人が活動的な生活を送り、一汗かく程度の強度の身体運動を
1週間に3回以上行っていることがわかりました。

体重、コレステロール値、年齢等の加齢黄斑変性の他のリスクファクターについて
調整した後、生活様式が活動的な人ではあまり動かない人と比べ、
滲出性AMD発症のリスクが約70%低い。
定期的に12ブロック以上歩く人でも、加齢黄斑変性のリスクは30%低下。

ウィスコンシン大学医学公衆衛生学部のM.D. Knudtsonは、
食事等の他の要因も加齢黄斑変性のリスクに影響を及ぼす可能性が。
しかし、身体活動は滲出性AMDに関連がある典型的な血管壁の炎症
および不整を減弱させることが知られています。

活動的な生活を送る人は、あまり動かない人よりも
「生物学的に」若い可能性があり、本疾患は加齢に関連があるために
滲出性AMDのリスクが低下する可能性が。

Knudtson, M. British Journal of Ophthalmology, Oct. 31, 2006, online first edition. News release, BMJ Specialist Journals. WebMD Medical Reference in collaboration with The Cleveland Clinic: "Eye Health: Macular Degeneration."

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=37606

November 27, 2006

運動が疲労回復に有効で、エネルギーを高める

(WebMD Medical News 11月3日)

疲労時のエネルギー増進と疲労回復には
昼寝よりウォーキングの方が効果的かもしれない。

定期的な運動が癌、心疾患のような疲労と関連のある慢性疾患患者でさえも
エネルギーレベルを高める可能性があることが示唆。

研究者らは、定期的な運動を行ってエネルギーを消費することで
長期的にエネルギー増進をもたらす可能性があるという。

ジョージア大学運動心理研究室(ジョージア州アセンズ)のPatrick O’Connorは、
「ほとんどの場合、疲労を感じる時に最もやりたくないことは運動である。
しかし、あまり身体活動を行っておらず、疲労している場合、
ほんの少し動くだけでも効果があるだろう」。

UGA の研究者であるTim Puetzは、
「1日を乗り切るのにより効果的な新しいスポーツドリンクやエネルギーバーや
コーヒーを常に探し求めている社会にわれわれは生きている。
しかし、毎朝テニスシューズの紐を結んで外に出て、身体活動を行うことで、
人々が探し求めている活気を得ることができる可能性がある」。

●運動がエネルギーを増進させる

多くの研究で、あまり活動的でない人が定期的運動プログラムを開始すると、
エネルギーレベルの増進を経験することが示されているが、
研究者らはその効果の大きさを計測した研究はほとんどない。

今回、6,800人以上を対象とした運動と疲労に関する70の研究を解析。
O’Connor博士は、「研究の90%以上では、同じこと、
すなわちあまり活動的でない人が定期的運動プログラムを完了した場合に、
運動を行わなかった群に比べて疲労が改善したことを報告したことが証明 。
その効果には非常に一貫性があった」。
定期的な運動がエネルギーを増進させ、疲労を低下させることを示しています。

その平均的な効果は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および
ナルコレプシーに使用される薬剤を含め、興奮薬の使用による改善よりも大きい。

健常成人から、癌患者や、糖尿病、心疾患等の慢性疾患患者に至るまで、
ほぼすべての試験対象集団に運動が有効であったと研究者らは述べます。

Puetz, T. Psychological Bulletin, November 2006. News release, University of Georgia.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=37609&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

November 24, 2006

骨関節炎患者には筋力トレーニングが有用

(Medscape Medical News 10月2日)

30カ月の筋力トレーニングを行なった骨関節炎(OA)患者は、
関節可動域訓練を行なった患者よりも筋力が強く維持され、
関節腔狭小化が抑えられたという試験結果が発表。

インディアナ大学・パデュー大学のAlan E. Mikeskyらは、
「膝関節OAの患者の症状に対しては、
等尺性運動や動的運動が有効であることが、数多くの研究で報告されている。
しかし、大腿四頭筋の筋力トレーニングが
膝関節OAのレントゲン的変化を予防や進行を遅くできるかどうかについては
これまで調べられていなかった」。

221例の高齢患者を性別、レントゲン像上の膝関節OA所見の有無、
膝関節痛の程度に応じて層別化し、
筋力トレーニングと関節可動域訓練(ROM)のいずれかにランダムに分類。
患者の平均年齢は、69歳。
(2回はフィットネス施設で、1回は自宅で行う)週3回の訓練を12週間実施。
12カ月後からは、訓練を自宅トレーニングに移行。
下肢の等速性筋力と、高度に標準化した膝関節レントゲン像を
試験開始時と30カ月後に評価。

30カ月の期間で、両群とも患者の下肢筋力は低下したが、
筋力低下速度は筋力トレーニング群のほうがROM訓練群よりも遅い。
筋力トレーニング群のOA膝関節の平均関節腔狭小率は、
ROM訓練群によりも26%小さい。
関節腔狭小率による膝関節OAの進行(増悪)頻度は、
筋力トレーニング群が18%で、ROM訓練群が28%。

試験開始時のレントゲン所見が正常であった膝関節のうち、
関節腔の狭小化が0.50 mmを超えた関節の割合は、
筋力トレーニング群(34%)のほうがROM訓練群(19%)よりも多い。
関節腔狭小化の発生頻度は、訓練の順守度、四頭筋強度の変化、
膝関節痛と関連していなかったです。

「30カ月間においてST(筋力トレーニング)群はROM群よりも
強い筋力が維持され、関節腔狭小化(JSN)増悪頻度が少なかった。
0.50 mmを超える関節腔狭小化の発生頻度が
ST群で多かったのは説明がつかず、確認の必要がある」。

この試験の限界として、同時期のレントゲン像転帰データがないこと、
等張性筋力の測定が処置群について盲験化されていなかったこと、
等張性筋力検査と等速性筋力検査の結果に
おそらく筋力特異性の違いによる差があったこと、
試験の検出力が低かったことなど。

「今回の試験での筋力トレーニング群に、
JSNの内側成分の新規発生率が多かったことは、
核磁気共鳴画像(MRI)による研究で示されているように、
半月板亜脱臼が膝関節軟骨の被薄化に先立って現われ、
レントゲンでのJSN早期段階症例のかなりの割合で
半月板亜脱臼が見られることを部分的に反映している」
と著者らは結論。
「今後の試験で、高齢者におけるレジスタンス・エクササイズ・プログラムを
調べることで今回の知見を確認する必要がある。
その試験の中には、標準化したレントゲンまたはMRIによる経時的検査を
必ず含めて、下肢のレジスタンス運動訓練で膝関節軟骨に対して
起こりうる有害作用を監視しなければならない」。

Arthritis Care Res. 2006;55:690-699.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=35962&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

食べるワクチン動物で効果 アルツハイマー病

(共同通信社 9月25日)

アルツハイマー病の原因物質とされるタンパク質「ベータアミロイド」の
遺伝子をピーマンに組み込み、その葉を食べさせることで
脳に蓄積したベータアミロイドを約半分に減らすことに、
東京大の石浦章一教授(分子認知科学)らがマウスで成功。

葉の中にできたベータアミロイドが腸から吸収されることで、
体内の抗体が増える仕組み。
ベータアミロイドを直接注射する人間の臨床試験では、
髄膜炎が出た例があるが、今回のものは経口ワクチンで、副作用は出ず。

人間で安全性と効果が確かめられれば、
「食べるワクチン」開発につながる可能性が。

アルツハイマー病は、脳にたまったベータアミロイドが神経細胞を死滅させ、
記憶や認知障害などの症状が出ると考えられています。

石浦教授によると、ベータアミロイドの精製は難しいため、
ピーマンに遺伝子を導入して作らせるようにしました。
育った葉を細断し、家族性アルツハイマー病のマウス6匹に週1回、3カ月間
食べさせたところ、脳のベータアミロイドは、食べさせなかったマウスに比べて
平均で約半分に減少。血液中の抗体の量は、食べる前より増加。

石浦教授は、「自然に老化したマウスにも効けば、
アルツハイマー病では患者が最も多い原因不明の孤発性にも効果が望める」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=35325&categoryId=&sourceType=GENERAL

November 22, 2006

音楽レッスンは子供の脳の発達を促進

(WebMD Medical News 9月20日)

低年齢の小児における音楽レッスンは脳の発達を促進し、
記憶能力を向上させる可能性があります。

低年齢小児は、音楽の訓練を受けると、1年の訓練期間に、
聞こえてきた音楽に対する脳の反応が変わるだけでなく、
記憶力も改善する可能性があることが認められました。

McMaster大学(カナダ)の心理学・神経科学・行動学の教授Laurel Trainor氏は、
「1年間音楽を勉強した小児は音楽を勉強しなかった小児より
音楽を聴く技能が向上するということは、さほど意外なことではないだろう」。
「音楽のレッスンを受けた小児は、読み書き能力、言語性記憶、視空間処理、
算数、IQなどの音楽以外の能力と相関する一般的記憶能力が
音楽のレッスンを受けない小児より向上するということは非常に興味深い」。

今後の研究でこれらの結果が確認されれば、
親にとって音楽家のタマゴにかかる騒音などに耐える良い理由になる可能性。

●音楽は幼い脳を養う

『Brain』で発表された同研究では、4-6歳の小児12例を対象に、
1年間にわたり音楽などの脳の開発手段に対する脳の反応を比較。

研究の開始時点で、小児の半数がSuzuki音楽スクールに入学し、
残りの半数は学校外で音楽レッスンを受けず。

その結果、1年間の研究期間中に両群間に発達の差が認められました。
音楽レッスンを受けた小児は、受けなかった小児より、
メロディー、ハーモニー、リズム処理に大きな向上が認められました。
また、注意および音識別に関わる脳の部位において、
バイオリンの音に対する脳の反応が大きい。

しかし、音楽レッスンを受けた小児の方が、数桁の数字を聞いて、
それを覚えておき、繰り返すという非音楽的な一般的記憶検査の
向上の度合いも大きかったことが認められています。

Trainor氏は、「これは、音楽訓練を受けた小児と受けなかった小児における
脳の反応の変化が、1年の訓練期間の後に異なることを示した最初の研究。
こうした変化は、音楽訓練に伴ってみられる認知機能向上と関連する可能性」。

Fujioka, T. Brain, Sept. 20, 2006; vol 129: pp 2593-2608. News release, Oxford University Press.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=35320&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

November 15, 2006

ホルモン濃度が寿命左右?久留米大が疫学研究

(共同通信社 11月10日)

副腎から分泌されるホルモンの一種
「デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)」の血中濃度が高い男性ほど
死亡率が低く、濃度が寿命を左右するとの疫学研究の結果を、
今泉勉・久留米大医学部教授(心臓・血管内科)らがまとめました。

940人を約27年追跡した研究で、
これだけ長期にわたるものは世界的にも例がない。
福岡県・旧田主丸町(現久留米市)で、1978-79年にかけて行われた
住民検診で、男性396人、女性544人の血中濃度を測定。
昨年末、同じ人たちについて生死や死亡時期、死因を調査。

男性は約8割の生死が判明し、住民検診時の血中濃度を
「高」「中」「低」の3グループに分けて比較したところ、
「高」のグループは「低」に比べ死亡率が約8割低い。
女性は、女性ホルモンの影響などがあり、濃度と寿命との関連は認められず。

研究グループの榎本美佳助手は、
「成人男性の血中濃度を測定すれば、寿命の概数を算出することも可能に」。
欧米では、DHEAが「若返りの薬」としてもてはやされ、
補充療法なども行われているという。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=37755

November 02, 2006

運動で肥満の乳癌女性の生存率が改善

(Medscape Medical News 9月12日)

肥満および体重超過の乳癌女性では、
診断前の身体活動レベルが高いほど、
乳癌による死亡のリスクは低いという地域住民ベースのコホート研究が
『Cancer』9月11日号に発表。

ノースカロライナ大学(チャペルヒル)のPage E. Abrahamsonらは、
「大多数の疫学研究で、レクリエーションとしての身体活動レベルが高いほど
乳癌発症リスクは低いと報告されているが、
予後に及ぼすその影響に関してはほとんど知られていない」。
「提唱されている病因への作用機序と同一のメカニズムによって、
身体活動が予後に影響する可能性があるというのはもっともらしい。
メカニズムとしては、生涯のエストロゲン曝露量の減少、免疫機能の増強、
体脂肪の減少、インスリン抵抗性の抑制が挙げられる」。

地域住民ベースのコホートを用いて、診断前の活動が
乳癌生存率に影響するかどうかを検討。
1990-1992年に浸潤乳癌と診断された20-54歳の女性1,264名を対象として
追跡調査研究を実施。
参加者は、診断後数カ月以内に面接を受けて、
13歳時、20歳時、診断前1年間の各時期における中等度および
激しい活動の平均実施頻度を調査。
8-10年間の追跡調査期間中における全死因死亡率については、
National Death Index(死亡290例)を用いて算出。

診断前1年間の活動で最高群のハザード比(HR)は、
最低群と比較してわずかに低下。
体重超過または肥満であった女性については、
活動レベルが高い場合にHRが低下。
しかし、理想体重または体重過少の女性については、関連性は認められず。

13歳時または20歳時の活動、および3つの時期全体での活動平均値は、
HR低下との関連性が認められず。

「本研究の結果は、特に体重超過または肥満の女性では、
診断前1年間に行われたレクリエーションとしての身体活動が
生存率に対して有益な影響を及ぼしたことを示唆する証拠に」。
「予後を改善するために、変更可能なライフスタイル要素は
これまでにほとんど特定されていないから。
早期発見のための技術の向上と治療法の改善によって、
一般に乳癌生存率は改善しつつある。
しかし、生存者の間では、その疾患経過を変えるために何ができるかを
知ることに対して寄せられる関心も少なくはない」。

研究の限界として、
わずかな影響である上に信頼区間が0を含んでいるので
偶発的所見は除外できないこと、
具体的な活動または活動別の消費時間に関するデータが欠如、
職業上または家庭内の義務を含めていないこと、
乳癌診断直前の活動推定値は、成人期における活動平均値を
示していない可能性があること、
診断後の活動レベルの変化に関するデータが欠如していること、
補足的な社会経済的特徴(質の高い医療や心理社会的要素など)に
ついてはコントロールできないこと、
共存症による残留交絡の可能性があること、
もとになった症例対照研究の参加者において
適格であった女性の14%が登録しないほうを選んだことなど。

「今後、より詳細かつ広範な生涯身体活動の評価を含める必要があり、
診断前後の活動の強度、期間、頻度および時期の指標を取り入れて、
身体活動と乳癌予後との真の関連性を明らかにする一助とすべき」。
「身体活動が乳癌女性の死亡率を低下させるということが確認されれば、
死亡率低下を目的とした身体活動を奨励するためのプログラムや政策が
採用されるものと思われる。プログラムや政策が特定の集団
(癌生存者を含む)において身体活動を首尾よく増加させることは、
すでに研究で証明されている」。

Cancer. Published online September 11, 2006.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=35076&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

November 01, 2006

脂肪ホルモンに抗がん作用 アディポネクチン

(共同通信社 9月27日)

健康な脂肪細胞から分泌され動脈硬化の予防効果があるホルモン
「アディポネクチン」に、強力な抗がん作用があることが、
北山丈二・東京大講師(腫瘍外科)らの研究チームが明らかに。

内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)など、
太りすぎの人の脂肪細胞からはアディポネクチンが出にくくなることが
知られており、脂肪の健康状態そのものが、
がんの進行に深くかかわっている可能性を示す成果。

北山講師らは、胃がん患者では、がんが進行するほど
血液中のアディポネクチン濃度が低くなるのに着目。
アディポネクチンが人の胃、大腸、乳がん細胞の表面に取り付くと、
抗がん剤並みの細胞死を引き起こすことを突き止めました。

マウスに移植した人の胃がん組織に、健康な人の血中と同じ濃度の
アディポネクチンを注射したところ、注射しなかった場合に比べ、
がん細胞の増殖が10分の1程度に抑えられました。

高脂肪食などで脂肪細胞が肥大すると、アディポネクチンが出にくくなり、
太った人の血中濃度は、健康な人の5分の1から6分の1に。

北山講師は、「肥満解消は生活習慣病だけでなく、
がん予防にも役立つかもしれない。将来はアディポネクチンを
薬として使う道も開けそうだ」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=35474&categoryId=&sourceType=GENERAL

October 02, 2006

体重減少ホルモンを始動させる蛋白

(WebMD Medical News 9月5日)

蛋白の摂取によって自然の体重減少ホルモンが始動すると、
英国の研究者らが報告。

PYYとして知られるホルモンが腸内で放出されると、空腹が緩和。
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのRachel L. Batterhamらによると、
高蛋白食は他の食事よりもPYYを始動させる効果が高い。

PYYが、肥満解決策の重要要素であることが示唆。
肥満者は、標準体重の人の2倍のカロリーを摂取しなければ、PYYが始動しない。
Batterham博士は、「食事に含まれる蛋白の量を増やすことによって、
体内のPYYが増強され、空腹の緩和および減量の補助に役立つ」。

この知見は、アトキンス・ダイエット(※)を支持するかもしれないが、
Batterham博士らはこれを否定。
アトキンス・ダイエットを実行している多くの人々は、
大量の蛋白だけでなく、大量の飽和脂肪も摂取。

●肥満、男性、およびマウス

PYYは、本当に肥満を解消する鍵なのだろうか?
Batterham博士のチームは最初に、どのような種類の食事によって
最も空腹が満たされるかを調査。
9名の肥満男性と10名の標準体重の男性を研究対象に。
短時間絶食した後、男性らは異なる種類の食事を摂取。
高蛋白食、高脂肪食、および高炭水化物食の、
それぞれの食事のカロリーは等しい。

最も空腹が満たされたのは、高蛋白食であり、
標準体重の男性は、高炭水化物食よりも高脂肪食の方が
空腹が満たされたと感じたのに対して、肥満男性の場合はそうではない。

すべての男性において、最も多くのPYYを始動させたのは、
高蛋白食であったことが、測定値から明らかに。
標準体重の男性では、高炭水化物食よりも高脂肪食の方が
より多くのPYYを始動させたが、肥満男性の場合はそうではない。
Batterham博士のチームは、遺伝子工学によってPYY遺伝子が
欠損したマウスの系統を作成。
これらのマウスは、餌の摂取量が非常に多く、すぐに肥満。

通常なら、高蛋白食を与えられた肥満マウスは餌の摂取量が少なく
体重が減少。しかし、PYY欠損マウスでは、
併せてPYY投与を行わなければ、高蛋白食によって
体重減少が促進されることはない。

●狩猟民族か農耕民族か

なぜ蛋白には、PYYを始動させ空腹を満たす効果があるのだろうか?
完全には解明されていないが、Batterham博士らは、
それは我々の祖先のせいだと示唆。

先史時代のヒトは、我々とは異なる食事を摂っていました。
エネルギーの19-35%を蛋白から、22-40%を炭水化物から摂取。
現代の食事では、エネルギーの49%を炭水化物から摂取し、
蛋白から摂取する割合は16%に過ぎない。

Batterham博士は、「減量法の一つは、食事に含まれる蛋白量を増やし、
自身の満腹システムを利用することで、食事のもつ満腹効果を高め、
体重減少を促進することである。
そのような食事は、狩猟採集民であった我々の祖先にとっては、
より典型的な食事かもしれない」。

※訳注:アメリカ人医師アトキンスが考案したダイエット法で、
高蛋白ダイエットともいう、炭水化物の摂取をできるだけ少なくするダイエット法。
従来のダイエット法では制限されていた肉、魚、チーズ、卵などの
高蛋白高脂肪の食品を中心に食べて、主要なエネルギー限に。

Batterham, R. Cell Metabolism, September 2006; vol 4: pp. 223-233. News release, Cell Press.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=34835&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

September 28, 2006

ろくろ首はなぜ伸びる?それは…「細胞に秘密」

(毎日新聞社 9月6日)

首を自在に伸び縮みさせる妖怪、ろくろ首の首はヒトの首と何が違うのか?
上半身がヒト、下半身がウマのケンタウロスの内臓はどんな配置に?
東京理科大の武村政春講師が、こんなユニークな研究に取り組んでいます。
架空の生物を、現代の生物学で「解剖」してしまおうという大胆な試みで、
将来は教育分野でも活用できないかと意欲的。

◇架空生物のメカニズム

武村さんの専門は分子・細胞生物学。
生物の進化とDNAの複製の関係がテーマ。
中学、高校生向け生物教材も研究。
子供のころから大の妖怪好きで、妖怪や人魚などを取り上げた
「ろくろ首の首はなぜ伸びるのか」(新潮新書)を執筆。

武村さんの架空生物の「研究」の始まりは00年ごろ。
「妖怪を生物の一種としてとらえたら、不思議な体のメカニズムも説明できる」。

最初のテーマが、ろくろ首の伸びる首の仕組み。
実際に存在する生物で、体の一部分が伸び縮みするように見える仕組みが
ヒトの首でも起こり得ないか?
例えば「カメレオンの舌」のように、「長い首を渦巻き状に巻き取る」など。
だが、渦巻き状の首を胴体に収納するのが難しいなどの問題も。

そこで、ろくろ首を構成する細胞の細胞膜が小腸の内側にあるじゅう毛のように
細かく折りたたまれていると想像。
具体的には、(1)折りたたまれていた細胞が広がる、
(2)細胞一つ一つの表面積が広がる、(3)細胞の体積が増える、
(4)結果として首が伸びる----と仮定すると、つじつまが合います。

武村さんは「(本職の)研究では実験で得られたデータがすべてだが、
架空生物は自在にアイデアを膨らませられる。
ただ、真実に出会うこともないので、フラストレーションもたまります」と苦笑。

正解がないのなら、専門家でなくても、架空生物のメカニズム解明に挑戦できそう。
ポイントは、「どこに『不思議』を見いだすか」と、身近な生物と対比させること。

例えば、ギリシャ神話に出てくるメドゥーサは、髪の毛がヘビの女性。
武村さんは木の幹の「形成層」をヒントに。
形成層の外側は、光合成でできた養分などを通す「師部」、
内側は水分などを通す「木部」で、内外で性質の違うものが作られています。
メドゥーサの頭皮が、形成層と同じような機能を持てば、
「外側はヘビ、内側はヒト」となるような仕組みが可能かも。

◇「学校教育に生かしたい」

武村さんは高校、大学での生物教育に、架空生物を生かせないか検討。
覚えた知識を使う面白さがあり、また人間の姿に似た架空生物をきっかけに、
生物の一種として人体の不思議への関心も深まると思うから。

武村さんは「生物学は本当は自分たちの生に密着した学問。
その面白さに気づいてもらいたい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=34443&categoryId=&sourceType=GENERAL

September 05, 2006

飽和脂肪に富む食事はHDLの予防効果を低下させる

(Medscape Medical News 8月7日)

高密度リポタンパク(HDL)が持つ抗炎症作用は、
飽和脂肪を摂取すると減弱するが、
多価不飽和脂肪を摂取すると増強されることが示されました。
HDLの心臓保護作用は、HDLの濃度だけでなく、
食事などの刺激に対する反応としての体内挙動にも依存していることが想定。

David S Celermajerは、
「食べ物によりHDLの質が変わりうることが、この研究で初めて実証された」。
「食事によってコレステロールの量と働き、およびその分画が変化する。
変化するのがHDLの量だけでなく、その作用の強さや良さも変わる。
その『良さ』は、摂取する食事が多価不飽和脂肪に富むのか、
飽和脂肪に富むのかで大きく影響される」。

クリーブランドクリニック(オハイオ州クリーブランド)の
Stephen J Nicholls率いるこの研究は、『JACC』に掲載。
また、『Journal of the American College of Cardiology』に掲載予定。

●善玉コレステロール、良い点と悪い点

成人14例を対象として、飽和脂肪または多価不飽和脂肪に富む
食事を摂取させ、続いて1カ月後に第2食として、
前回の摂取期に摂取した種類とは脂質構成が違うもう一方の食事を摂取。
どちらの食事も、見た目そっくりのニンジンケーキ1切れおよびミルクセーキで
構成されているが、一方はサフラワー油(多価不飽和脂肪)を、
もう一方はココナツ油(飽和脂肪)で調理。
食事はすべて、各被験者の体重1 kgあたり脂肪を1g摂取するように調整。

Nicholls博士らは、血漿中のトリグリセライド、インスリン、非エステル化脂肪酸は
どちらの食事でも摂取後に上昇したが、飽和脂肪食摂取の6時間後のHDLでは、
炎症のマーカーであるintercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1)と
vascular cell adhesion molecule-1 (VCAM-1)の発現が上昇。
多価不飽和脂肪食の摂取後のHDLでは、
両分子ともに発現レベルが有意に低下。
Celermajer博士は、内皮細胞の炎症はアテローム性動脈硬化の
発生プロセスに重要な役割を持っているとされ、
HDLは内皮の炎症プロセスを調節する働きがあると考えられています。
この研究の2つ目の知見として、
多価不飽和脂肪食を摂取した成人では微小循環血流が大きく増加し、
飽和脂肪食の摂取後には大きく減少することも報告。

この研究の被験者は、18~40歳で、心臓血管器系疾患は持っていない。
アテローム性動脈硬化などのリスク因子を有する被験者でも
同様の結果が得られるかどうかは不明だと著者らは指摘。

●今後の方向性

Celermajer博士は、HDLの働きを修飾できる可能性があることを受けて、
HDL研究の分野は再度活発になるはず。
「善玉コレステロールと、は固定しているのではなく動的なものであり、
HDLの質を左右するものに対するまったく新しい研究分野が開かれた。
どのような運動をしたらHDLの予防効果が強まるのだろうか?
HDLにとって最良の食事とは?
服用されることの多い医薬品はHDLにどのように影響するのか?」。

これからの研究では、食事が消化された時のHDLの挙動を調べる必要があります。
「コレステロールと脂肪の研究のほとんどすべてが、
一晩の絶食後に実施したもの。
米国やオーストラリアといった国で暮らす者は、
何かを食べてから3~4時間たった状態 (吸収後状態)で人生の半分を過ごす。
コレステロールと心臓の健康との関係の理解をさらに進めるためには、
一晩の絶食の後ではなく、何かを食べた後でコレステロールがどのようになるかを
調べ始める必要がある」。

J Am Coll Cardiol. 2006;48:715-720

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=32703&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

September 04, 2006

自閉症の小児には脳の構造的異常が認められる

(Medscape Medical News 8月22日)

脳の発達異常と関連すると考えられる明確な脳の構造的異常が、
自閉症児において発見。

ワシントン大学(シアトル)の研究者らは、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、
自閉症スペクトル障害(ASD)を有する小児60例の脳皮質の灰白質および白質に
おける横緩和時間(T2)を測定し、それらの脳が、
脳の発達が標準的な(TD)小児、または特発性発達遅滞の(DD)小児とは、
構造的に差があることを見出しました。

研究責任医師のStephen Dagerは、
「非常に幼い自閉症の小児の脳が、発達が標準的な小児よりも大きく、
皮質の灰白質に関して未成熟である」。

さらに、灰白質の発達遅滞を示すこれらのデータは、
自閉症は急速に成長した正常な脳によって特徴づけられるという
これまでの説を否定。

●発達遅滞

T2は、脳の成熟の長期的進行を測定する尺度で、大脳の水分含有量を評価。
60例のASD小児と、年齢をマッチングさせた16例のDD被験者および
10例のTD被験者のT2を比較。すべての小児は、2-4歳。

MRIスキャンを行い、画像を灰白質と白質に分割し、各組織部位のT2を計算。
年齢および性別を調整した3群間のT2における差を比較し、T2とIQ値との相関を検討。

その結果、ASD小児において、
全脳皮質の灰白質のT2は延長が認められたのに対して、
全脳の白質のT2はTDの小児と統計学的に有意な差なし。
しかし、DDの小児においては、ASDまたはTDの小児と比較して、
皮質の灰白質および白質の両方におけるT2の延長が認められました。

ASD小児において、灰白質のT2の変化が認められるという知見は、
ASDにおける灰白質の異常に関する他の研究、
化学的濃度の局所的減少および化学的T2の増大は、
大部分が灰白質に特異的であることを実証した最近の研究と一致。

●白質の関与

しかし、これらの観察知見はASDにおける灰白質の病的過程を支持するものの、
白質の関与を除外するわけではないと、Dager博士は警告。

「統計学的に有意であった領域は、灰白質のみ。
しかし、白質においても統計学的に有意ではないが、幾分かの遅延が。
したがって、灰白質の発達の遅滞を見出したが、
これは必ずしも白質が関与しないことを意味するわけではなく、
それは発達の過程で後に発生するだけかもしれない」。

T2値とIQの間に、有意な関連を見出すことができなかったです。
しかし、Dager博士は、そのような幼い小児において、
正確なIQ評価を行うことは困難であると警告。

脳が成熟するにつれ、白質における大脳の水分はミエリンで置換され、
軸索の直径の増大の結果として減少するのに対して、
灰白質においてはニューロンの解剖学的構造に違いが出てくるため、水分が減少。

標準的な発達過程では、緩和時間は生後6カ月間で急激に減少し、
その後、緩徐に減少し続けた結果、生後18カ月までには
灰白質および白質組織のコントラストが視覚的に成人と同様に。

●炎症反応か?

Dager博士は、DDの小児の灰白質および白質におけるT2の延長は、
ニューロンの発達および成熟の遅れを表す可能性が高い。
しかし、ASDの小児において観察された、
白質ではなく灰白質におけるT2の延長は、炎症と関連する可能性のある
自閉症に特異的な発達過程を表すように思われます。

通常は浮腫を伴う神経の炎症性変化は、
非常に幼い自閉症児の大きな頭蓋および大脳の容積の増大をはじめとして、
以前の研究で得られた多くの知見を説明することが可能。

「自閉症と関連して、小グリア細胞の活性およびサイトカインの上昇が
様々な皮質領域において報告。グリア線維酸性蛋白における増加が、
小脳と同様に前頭皮質および頭頂皮質においても認められており、
これも炎症性変化を示唆。したがって、特に自閉症の大脳皮質に関して
同定された自己免疫マーカーの存在は、ASD被験者において観察された
灰白質のT2延長の妥当なメカニズムとなる可能性がある」。

しかし、自閉症の被験者の脳脊髄液における死後の炎症マーカーの存在を
示した研究は、現在のところ1報だけ。

自閉症の初期段階におけるその他の異常な神経化学的および組織学的過程が、
異常なニューロンの構造配置を生み出して、
ASD小児に認められる特異的な灰白質のT2の原因となる可能性も。

●理解の進展

これらの結果は、自閉症を理解する上で大きな進展であり、
臨床研究において暦年齢によって患者を分類することの重要性を強調。

「15年前に自閉症の研究を始めたとき、この障害の自然経過に関して、
文献には多くの論争および意見の不一致がみられたが、
それらは、研究の被験者(非常に幼い小児から成人まで)を
一括して扱っていたことが原因。
このような発達段階の大きな重複がある場合、
発達障害の意味を理解することは非常に困難である」。

初期の研究の多くは、被験者を「えり好み」し、
機能レベルの高い年長の協力的な患者を対象として選択し、
その結果、障害の正確な状態または全体像は示されませんでした。

「この発達障害には、どのような過程が存在するのかを理解し、
発達段階および暦年齢の進行によって変わる
これらの関連性を認識することが非常に重要」。

自閉症の病態生理学に関する理解の進展が、
ASDに特徴的な知的障害に対する有効な早期治療方針につながるだろう、と。

Neurology. 2006;67:632-636.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=33617&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

September 03, 2006

長寿の決め手、特定 ミトコンドリアDNA塩基配列2カ所の差

(毎日新聞 8月12日)

細胞内に数百ある小器官、ミトコンドリアのDNAのわずかな違いが、
細胞の働きに影響を与えていることを、理化学研究所などが突き止めました。
このうち、日本人に多いタイプは長寿と関係しているとされ、
長生きのメカニズム解明につながると期待。

ミトコンドリアのDNAは個人差が大きく、病気のかかりやすさに
関係していると考えられています。
理研の加藤忠史チームリーダーらは、
35人の血小板のミトコンドリアDNAを使い、
約1万6000ある塩基配列を解読、個人差を特定。
この違いが、細胞内のカルシウム濃度にどう影響するかも調べました。

その結果、特定の2カ所の塩基配列が、
カルシウム濃度を低く抑えるG型と、高くするA型に分かれました。
G型の人は日本人の7割を占め、欧米人の3割に比べて多い。
100歳以上の日本人長寿者では、8割に。
このことから、G型が長寿の要因の一つになっている可能性が高いと結論。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=32892&categoryId=&sourceType=GENERAL

September 02, 2006

運動が神経保護作用を有する可能性あり

(Medscape Medical News 8月11日)

運動は加齢に伴う脳の構造・機能維持に役立ち、
アルツハイマー病およびその他の認知症の発症を遅延させる
可能性があるという論評が、米国心理学会(APA)年次会議において発表。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の神経科学・心理学部教職員
Arthur F. Kramerは、
「レトロスペクティブ(後ろ向き)、プロスペクティブ(前向き)臨床試験のほか、
動物研究からさまざまな証拠が得られている。
いずれも、運動が初老期から老年期にかけて有益な作用を有することを示唆」。

「運動が示す神経保護作用は、より高次の認知を可能にし、
アルツハイマー病などさまざまな病型の認知症の発症を遅延させるとした
プロスペクティブ疫学研究が、いくつも報告されている」。
「脳の構造・機能に対して好ましい作用も有するということが、
磁気共鳴画像法(MRI)や機能的MRI、事象関連電位(ERP)を用いた
臨床研究のみならず、動物研究の文献で報告。
動物研究の文献は多く、活動性毛細血管床の増殖や新たな樹状突起連結のほか、
海馬など特定領域における新生ニューロンも示されている」。

●データ概説

共著者であるKirk I. Erickson、Stanley J. Colcombeとともに、
Kramer博士は過去40年間に蓄積された研究の証拠を再調査。
さまざまな年齢層における運動および身体的活動と認知能力および
後年におけるアルツハイマー病など、加齢性神経疾患の確率との関係に
関する疫学研究を含む。
高齢成人の認知および脳機能に及ぼす具体的な適正訓練の影響について
検討した縦断的ランダム化試験や、
脳の構造・機能に及ぼす運動の影響について、
分子および細胞レベルの基盤を検討した動物研究も再調査。

カリフォルニア大学アーバイン校のCarl Cotmanは、
「臨床データによれば、運動を週に数回実施している者は、
活動度の低い者と比較して認知低下率が低い」。
「ただし、最善の証拠は動物研究から得られている。
動物研究では、自発的に走ることによって脳内において
脳由来神経栄養因子(BDNF)のような神経保護分子が増加し、
β-アミロイドのようなアルツハイマー病関連分子が蓄積しにくい」。

Kramer博士らの論評によれば、
疫学文献において、身体的活動は認知機能に対しても
認知症発症率低下についても著しい保護作用を有しており、
その利益は数十年間持続することが証明。
65歳を超える被験者を対象とした数少ない研究では、
1回15-30分間、週3回の運動を実施すれば、
遺伝的素因を有する者でもアルツハイマー病を発症する確率は低下。

臨床試験から、高齢者における適正訓練と認知の改善、
脳機能効率の向上、および脳萎縮の予防との関係が示唆。
62-70歳の被験者を対象とした身体的活動と認知、
および脳機能との関係に関する4年間の研究の結果、
現職者と定期的に運動を実施している退職者は、
非活動的な生活を送っている退職者と比較して脳血流量のレベルが維持され、
一般的な認知尺度上の成績も優れていることが示されました。
6カ月間の研究において、有酸素運動に参加した高齢者は対照と比較して、
前頭葉および上側頭葉領域の灰白質量が有意に増加。

●運動の推奨に不利な知見はない

Kramer博士は、「ヒトのデータに関して、この10年間で十分なメタアナリシスが
実施された結果、運動は確かに神経保護作用を有するほか、
うつ病評点を減少させる傾向もあることが示唆」。
「運動の推奨に不利な知見はない。その理由として、
運動の作用が期待するほど大きくない、あるいは頑健でないとしても、
運動が死亡率を抑制し、心血管疾患、2型糖尿病および骨粗鬆症の発症率を
低下させる傾向にある。疾患に関する文献と動物研究の文献の双方に基づいて
推奨事項を提案するのは、当然」。

有酸素運動は、他の種類の運動と比較して、
加齢に伴う脳機能に対してより好ましい作用を発揮するように思われます。
高齢成人を対象とした研究において、
6カ月間にわたってウォーキングを実施する群に無作為に割り付けられた者は、
ストレッチと調整を実施する対照群に無作為に割り付けられた者と比較して、
散漫性課題の成績が良好。
有酸素運動による訓練を受けた群は、注意を司る前頭および頭頂脳領域に
おける神経活動が亢進し、行動的葛藤すなわち認知コントロールの強化要求に
影響されやすい前帯状皮質の背側領域における神経活動が抑制。
有酸素運動は、脳の柔軟性維持にも役立つように思われます。

Dramer博士は、「かなり厳しい有酸素運動を取り入れた身体的活動は、
認知の温存と認知症の発症遅延に関連するように思われる」。
「調整とストレッチを組み合わせた他の種類の運動は、
高齢成人では柔軟性を高めて転倒を減らすことにつながり有益であるが、
認知温存作用には関与しない。動物研究の文献から、
新しい精神運動スキルの学習は、新たな樹状突起連結を増やすのに
有益であることが示唆」。

動物研究では、運動に関連した形態学的、神経化学的および
神経生理学的な変化を直接観察できることから、
身体的活動による神経保護作用の解明が進んでいます。
有酸素活動の指標として、自発的な車輪回転を用いたいくつかの研究において、
車輪回転の多い動物は海馬を介した空間学習課題の成績がより良好。
水迷路で運動した老齢げっ歯類は、対照と比較して、
隠れたプラットホームについての情報の学習および記憶に関して優れていました。
幼若動物、老齢動物の双方が運動の恩恵を受けます。
これは、特定の加齢性疾患を相殺または予防できるレベルの
神経成長因子増加に反映。

●残された疑問点

いくつかの疑問点が未解明のまま。

Kramer博士は、「例えば、ヒトにおける用量反応関係、
どの程度の運動をすれば認知に対する利益がどれくらい得られるかや、
アルツハイマー病または血管性認知症のオッズ比がどれくらい減少するか」。
「調査によって、ヒトに対する神経保護作用が示唆されている
各種のライフスタイル選択肢や介入、すなわち知的関与、栄養選択、
抗酸化物質、サプリメント使用などを組み合わせた研究を実施し、
各種介入がどのような相加効果、相乗効果を示すか検討する必要」。

Cotman博士は、「最近のデータは、活動レベルの有用性を裏付けるものであるが、
正確な指示を与えるものではない」。
「疫学データと動物研究データに基づいて言えば、
週3回以上の運動は有益。1回30-45分間、週3回以上のウォーキングも有益」。

APA 2006 Annual Convention: Session 2028 - Invited Symposium: Optimal Aging and Cognition - Moderators of Cognitive Change and Decline. Presented August 11, 2006.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=33029&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

September 01, 2006

高齢者の死亡リスク予測において、ウエスト・ヒップ比はBMIより優れる可能性

(Medscape Medical News 8月11日)

高齢患者における死亡リスク上昇の指標として、
ウエスト・ヒップ比(WHR)は肥満指数(BMI)よりも優れることを示す
ランダム化試験結果が、『American Journal of Clinical Nutrition』に報告。

ロンドン衛生熱帯医学研究所(英国)のGill M. Priceらは、
「高齢者の適正体重に関するガイドラインは、BMI理想値やそれに代わる
人体測定法の有用性が不明確であるため、限定的な役割しか果たしていない」。
「高齢者の死亡予測因子としてのウエスト周囲径(WC)や、
WHRの有用性も確立されていない」。

本研究には、英国内の家庭医療施設53カ所から、
75歳以上の被験者14,833例が参加。
ベースライン時の健康評価項目には、BMI、ウエストおよびヒップ周囲径の測定。
BMIの最低五分位は、男性23kg/m2未満、女性22.3kg/m2未満、
コホートの90%は非喫煙者。

追跡調査期間の中央値は5.9年で、この間6,649例が死亡、46%は循環系の死因。
非喫煙者では、BMIの最低五分位群に比較して、
他のすべてのBMI五分位群において死亡の補正後ハザード比が1未満。
WHRの上昇は、男性においてハザード比上昇と関連。

BMIは、男性の循環系を原因とする死亡と関連を示さず、
女性では負の関連性が認められました。
WHRは、男性および女性とも、循環系を原因とする死亡と正の相関。
ウエスト周囲径は、全死因の死亡または循環系を原因とする死亡と関連せず。

「BMIに基づくリスク分類を用いた現行ガイドラインは、
75歳以上の人において、過剰体重によるリスクを過大評価している」。
「死亡リスク上昇は、WHR高値で測定される相対的な腹部肥満の方が、
より明確な指標になる」。

本研究の限界としては、測定が単一時点で行われていること、
偶然誤差により作用が希釈された可能性、
養護老人ホーム入居者の除外、
人種データの欠如、
因果関係が逆方向である可能性、
追跡調査期間が短いことが挙げられます。

「成人の過剰体重および肥満に関連する疾患負荷を定義する際、
世界保健機関(WHO)などは現在、BMIに基づく健康リスク分類を用いているが、
これは75歳を超える人には適切でない」。
「WHRは、おそらく腹部肥満と関連する結果、死亡リスクと正の相関を示し、
この年齢群においてはWHRを使用すべき。
WHRの分布に関する五分位数、および最高リスクに関連するWHR値に基づき、
これらの解析では措置をとるべき標的カットオフ値として、
喫煙しない高齢男性ではWHR>0.99、喫煙しない高齢女性ではWHR>0.90が提案」。

Am J Clin Nutr. 2006;118:669-682

August 31, 2006

運動神経の細胞死を防止 特定タンパクが鍵か

(共同通信社 8月18日)

筋肉につながる運動神経の軸索という部分が傷ついた場合でも、
特定のタンパク質があると神経が細胞死しないとのマウス実験の結果を、
木山博資・大阪市立大教授(神経解剖学)らがまとめました。

原因不明で神経が侵され筋肉が動かなくなる
筋委縮性側索硬化症(ALS)などの治療法開発につながる可能性が。

木山教授らは、マウスで軸索を傷つけると、
ヒトでALSが進行するのと同様に神経細胞がゆっくり死ぬのに、
ラットでは細胞が死なないことに注目。

その結果、ラットでは特定のタンパク質が細胞質中に多く出て、
細胞死を促す酵素と結合して働かないようにし、細胞死を防いでいました。

マウスでは、このタンパク質は少なかったが、
遺伝子操作で発現させると細胞死しなくなりました。
全く発現しないようにすると、早く細胞死。

木山教授は「ヒトの神経疾患にも同じ仕組みがあるかもしれない。
統合失調症の患者はこのタンパク質の量が少ないことが分かっており、
関連を調べたい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=33166&categoryId=&sourceType=GENERAL

大脳皮質形成に影響 マウスでビスフェノールA

(共同通信社 8月17日)

プラスチック原料などに使われるビスフェノールA(BPA)が
大脳皮質の形成に影響を及ぼすとのマウス実験結果を、
伏木信次・京都府立医大教授(神経病理学)らが発表。

伏木教授は「人にも同じ影響が出る可能性がある」と注意。

伏木教授らは妊娠したマウスに、摂取しても影響がないと考えられている
低濃度のBPAを妊娠初期から出産直前まで注射し、胎児の脳への影響を調査。

その結果、脳の脳室という場所の周辺でできた神経細胞が
分化したり脳の表面へ移動する速度が速く、
大脳皮質の形成過程が通常と異なっていました。

大脳皮質では、細胞の分化や成長に影響を与える甲状腺ホルモンに
関係した遺伝子の発現量が変化。
BPAが甲状腺ホルモンに作用し、神経ネットワークの構築と機能に
悪影響を及ぼしていると推測。

伏木教授は「大脳皮質の形成異常があるということは、
近年増加している注意欠陥多動性障害(ADHD)などと関連がある」。

米科学誌ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス・リサーチ(電子版)に発表。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=33102&categoryId=&sourceType=GENERAL

August 30, 2006

温泉、どこまで効くの?

(毎日新聞社 8月15日)

高血圧や皮膚病、糖尿病、神経痛……。
温泉に行くと、温泉療養で効果があるとされる、さまざまな適応症が表示。
だが、経験則で決められたケースが多く、専門家からも「見直すべきだ」との声が。
温泉はどこまで効くのだろうか??

◆言い伝え

地中からわき出した水は、水温が25度以上か、
特定成分を一つでも含んでいれば、「温泉」となります。
適応症や、温泉療養を避けるべき禁忌症は、各都道府県知事が決定。
その判断基準となるのが、1982年の旧環境庁(現環境省)自然保護局長通知。
温泉の泉質を問わない一般的適応症、禁忌症、
泉質ごとの適応症と禁忌症を例示。

だが、言い伝えられてきた伝統的効果で決めたケースも多い。
リウマチに効くというある温泉地では、
温泉療養とともに、神社詣でをして、長い石段を上り下りしていました。
それが自然にリウマチのリハビリにも。

二酸化炭素泉は、炭酸ガスの効果で末しょう血管が拡張して、
血圧が下がるなどのデータ。
草津温泉(群馬県)の酸性泉も、含有成分がアトピー性皮膚炎に
効果があることが実証。

だが、こうした例は少ない。
温泉療法医会会長の東威副会長は
「温泉の成分の効果に対する科学的エビデンス(根拠)はあまりない」。

さらに、源泉と実際の浴槽の温泉が同一なのかという問題も。
源泉をそのまま浴槽に入れているのは少数派。
温泉資源が限られ、多くは源泉に加水したり、循環利用。
レジオネラ菌などの殺菌のために塩素を入れている温泉も。

源泉自体の成分分析調査を、掘削当時に一度行っただけという温泉も。
環境省は10年に1度の調査を指導しているが、
10年以上未検査の温泉は36%に。

◆妊婦もOK?

禁忌症は、掲示が義務付け。
妊娠中(特に初期と後期)もその一つだが、最近の研究では新たな見解も。
岐阜県立下呂温泉病院の研究グループは、
下呂温泉入浴者とその他の妊婦を調査したところ、
切迫流産率、出生体重などに差異がほとんどなかったです。

一方、「がんが治った」などと言われる温泉もあるが、悪性腫瘍は禁忌症。
北海道大大学院の大塚吉則教授(温泉気候医学)は
「免疫力がアップすることはあり得るが、体力が弱っている人に温泉は向かない。
お勧めできない」。

温泉を飲む「飲泉」も注意が必要。
胃腸病や便秘などに効果があるとされるが、
大塚教授は「ナトリウムを含む温泉水は血圧を上げる副作用もある。
飲泉より効果がある薬があり、西洋医学の補助医療として、
医師の指導の下で行うべきだ」。

◇自然環境も相乗効果か----非日常、脱ストレスで治癒力アップ

温泉の効果は、成分による薬理作用だけではない。
温熱や水圧・浮力などの物理的作用のほか、温泉地の自然環境も影響。
その結果、人が本来持っている自然治癒力を高め、さまざまな症状を改善。

東副会長は「日常を離れ、温泉地へやってくると、ストレスから解放され、
心身にいい影響がある。同じ泉質でも温泉地により効果は違う。
環境が異なるからだ。温泉の効果は泉質だけでは決められない」。

では、どのように温泉と付き合えばいいのか??
大塚教授は「1日や2日では効果はない。最低2、3週間は必要。
短期間なら泉質にこだわらず、好きな温泉に行くのがいい」。

療養目的なら、温泉療法医の指導を受けたほうがいい。
温泉療法医は、民間活力開発機構などが運営する「温泉郷」のHPで紹介。

日本温泉気候物理医学会は、適応症・禁忌症の見直し作業を進めてきました。
05年の試案には、温泉地ごとに科学的研究を進めることを求めています。
06年2月には、これまでの文献調査の報告も行いました。
東副会長は「すべての浴槽の成分を分析するのは不可能。
歓楽用の温泉と、療養目的の温泉を分けて考えるべきではないか」。

同省の「温泉行政の諸課題に関する懇談会」の第3回会合(9月開催予定)で、
適応症・禁忌症が協議される予定。
環境省は「見直す方針というわけではない。白紙の状態」
(自然環境整備担当参事官室)。
……………………………………………………………………………
◆現在の温泉の適応症と禁忌症(82年の環境庁自然保護局長通知より)

<一般的適応症>(浴用)
 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動まひ、関節のこわばり、うちみ、
 くじき、慢性消化器病、痔(じ)疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進

<泉質別適応症>(浴用)
▽塩化物泉
 きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病
▽炭酸水素塩泉
 きりきず、やけど、慢性皮膚病
▽硫酸塩泉
 動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病
▽二酸化炭素泉
 高血圧症、動脈硬化症、きりきず、やけど
▽含鉄泉、含銅?鉄泉
 月経障害
▽硫黄泉
 慢性皮膚病、慢性婦人病、きりきず、糖尿病、高血圧症(硫化水素型)、
 動脈硬化症(同)
▽酸性泉、含アルミニウム泉
 慢性皮膚病
▽放射能泉
 痛風、動脈硬化症、高血圧症、慢性胆のう炎、胆石症、慢性皮膚病、
 慢性婦人病
<一般的禁忌症>(浴用)
 急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、
 呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、
 その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(とくに初期と後期)

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=32971&categoryId=&sourceType=GENERAL

August 29, 2006

やせるワクチンも現実に?日米が動物実験に成功

(共同通信社 8月1日)

ワクチンで特定のホルモンの働きを弱め、
体重の増加を抑える実験にラットで成功したと、
米スクリプス研究所と大阪市立大のチームが発表。

人間で同様の効果が得られるかは未知数だが、
チームは「ワクチンも肥満解決への1つの道になるかも」と。

このホルモンは、日本で発見され、
食欲促進や脂肪蓄積などの働きがある「グレリン」。

ワクチンで、グレリンに対する抗体が増えたラットは、
食べる量に変化はなかったのに、
1日当たりの体重増加はワクチンなしのラットの3分の1以下で、
脂肪の蓄積も少なかったです。
ワクチンによって、体のエネルギー消費量が増えたらしい。

チームによると、グレリンはダイエットなどで食べる量が減ると分泌され、
体重減少にブレーキをかけます。
ワクチンが実用化されれば、そうした時期を乗り切るのに
役立つ可能性があるという。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=32102&categoryId=&sourceType=GENERAL

腹時計:脳内のメカニズム解明 日米がマウス実験で

(毎日 8月1日)

おなかのすき方で、時刻が予想できる「腹時計」のメカニズムを、
米テキサス大の柳沢正史教授(分子遺伝学)と
東京医科歯科大の三枝理博助手(神経科学)らが
マウスを使った実験で明らかに。
脳内の時計遺伝子が餌の時間を記憶し、
餌を食べるよう指令を出す体内時計。
腹時計と食欲の関係を解明すれば、肥満予防策を編み出す一歩に。

マウスは夜行性で、夜に動き回って餌を食べるが、
昼にだけ餌を与えると昼夜逆転。
柳沢教授らは、この時のマウスの脳を分析した結果、
食欲に関係するとされる脳の背内側核で、
時計遺伝子が餌の時間に合わせて24時間周期で動いていることを発見。

時計遺伝子は、多くの生物が持っており、一定周期で活性化して
睡眠や血圧などのリズムの基に。
特に、光に連動し脳の視交叉上核にある「主時計」が主な役割を果たすが、
昼夜逆転したマウスではこの情報は無視されていました。

肥満の人は、1日のカロリーの半分以上を夜間に食べる「夜型」が、
正常人の40倍多いとの報告。
柳沢教授は、「腹時計と主時計のせめぎ合いから解明してゆけば、
肥満の予防策につながるだろう」。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/news/20060801k0000m040141000c.html

July 27, 2006

研究者の層の薄さが招く不正

(日経ネット 7月12日)

国内の科学技術界で、早稲田大学理工学術院教授による
研究費流用問題の波紋が広がっています。
同教授が、日本の科学技術政策を取り仕切る総合科学技術会議の
有識者議員を務めていたから、指導者の倫理欠如に憤る研究者も多く、
研究費をお手盛りしていたのではないかと同会議に対する不信の声も。
不正の隠れた要因は、
研究者の層の薄さゆえに研究費が集中してしまう構図にあり、
不正防止には研究者の自覚ばかりでなく、そこにも手をつける必要が。

●抜けきらぬ「一点豪華主義」の発想

早大教授の不正は、国から受給した研究費に架空の学生アルバイト料を
もぐり込ませ、自分に還流させて投資信託で運用していた私的流用。
教授は、1999-2003年の5年間に約5億円の助成を受けています。
研究が、科学技術政策で重点に指定されているバイオ分野なので、
集中的に資金が投じられた研究者の一人であり、
それをよいことにごまかして蓄財していたと言えます。

不正に対しては糾弾の声があがっているが、
特に教授が総合科学技術会議の元議員だったことから、
科学者モラルの低下を嘆く声が強い。
教授が不正していた当時は、
数億円の研究費がついて使い切れないとこぼす研究者がいる一方で、
数十万円の研究費もとれないと嘆く研究者もいる、研究費格差が問題に。

日本は、1996年度から5カ年ごとに定める科学技術基本計画に沿って、
各省が研究開発を進めています。
計画では、バイオや情報通信など重点分野を明示し、
集中的に資金を投じています。
総合力で見劣りする国が国際社会で目立とうとする時に、
最も有効なのは「一点豪華主義」の戦略。

問題なのは、重点分野への投資が即、
特定研究者への集中投資になってしまうこと。
科学技術基本計画で重点に指定された分野では、
文部科学省や経済産業省、厚生労働省、農林水産省など、
同じような研究テーマを掲げ、特定研究者に集中的に資金を投じています。
先端的なテーマ設定をすると、研究者が限定されてしまい、
研究者の層の薄さゆえに、特定研究者が優遇され、
そこで不正も発生しやすい構図に。

研究に絡む不正では、研究費流用のほかに、
論文のデータ捏造も増えています。
理化学研究所の研究者のデータ改ざんが判明し、
東京大学では、「RNA干渉」と呼ばれる先端分野の
研究者の論文でデータ捏造問題も。
成果を焦るあまりの不正と言えるが、
データ捏造も集中的に資金を投じられた研究者で目立ちます。

先端分野では、研究分野が異なる研究者が
真偽の判定をするのは容易ではないです。
特に、権威とされる研究者のデータとなると信頼性を疑ったりもしない。
その分野の研究者が少なければ、なかなか追試も進まない。
つまり、研究者の層の薄さはデータ捏造を生み、発覚を遅らせる要因に。

研究者の層の薄さ、資金集中、不正という構図は日本特有ではないです。
「一点豪華主義」の戦略をとるところでは同様の問題が。
韓国ソウル大学の黄禹錫(ファン・ウソク)教授による
胚性幹細胞(ES細胞)の論文捏造事件は、正にその典型例。
ノーベル賞受賞を狙って、政府をあげて支援したといわれるから、
資金集中が不正を招いたといってよい。

●主役演じる研究者を数多くつくれ

研究者の層の薄さは、不正があった場合に
後遺症からの脱却も難しくなります。
有力研究者が不正で追放されてしまうと、
代わる人材がいなければその研究が途絶えかねないし、
研究の決定的な遅れにもつながりかねない。
日本はこれまで、研究者の層を厚くすることを怠ってきました。
しかし、主役を常に脅かす代役の存在こそ、
研究費の集中や不正を防ぐ手だてになり、いざというときの保険にも。
同じ分野でも、主役を演じられる研究者を何人も抱えられなくて、
科学技術を強化できるはずがない。

http://www.nikkei.co.jp/neteye5/shimizu/20060711nd97b000_11.html

July 24, 2006

たんぱく質:情報伝達抑える物質、理研チームが発見

(毎日 7月19日)

細胞の中で情報を伝える物質と似た振る舞いをして、
本来の伝達を邪魔するたんぱく質を、
理化学研究所脳科学総合研究センターなどのチームが発見。
このたんぱく質は、車のブレーキのように働き、
過剰な活動を巧妙に制御している可能性があるという。

増殖や受精、発生などの際、細胞中のカルシウムイオンの濃度が
高まることが知られています。
外部からの指令で産生された「イノシトール三リン酸」(IP3)という物質が、
細胞内のカルシウム貯蔵庫の入り口にある受容体に結合し、
鍵を開けるようにカルシウムを放出させる仕組み。

同センターの安東英明研究員らは、
受容体に結合する物質の中から未知のたんぱく質を見つけ、
「アービット」と名づけて詳しく調べました。
アービットは普段、IP3とそっくりな方法で受容体と結合し、
IP3の結合を阻んでいました。
外部から刺激を受けて細胞内にIP3が増えると、
受容体から離れてIP3に場所を譲ることも分かりました。

カルシウムは、情報伝達には重要な物質だが、
アービットはカルシウムが過剰に放出されるのを巧みに制御しているらしい。
御子柴克彦チームリーダーは、
「アービットが受容体から離れた後、別の情報伝達を担っている可能性もあり、
生命活動の陰の主役かもしれない」。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060719ddm016040093000c.html

July 23, 2006

好きな音楽でホルモン安定 高齢者に効果、予防に利用

(共同通信社 7月14日)

好きな音楽を歌ったり聴いたりすると、
高齢者の性ホルモンの量が安定する効果があるとの研究結果を
福井一奈良教育大教授(音楽生理学)らがまとめました。

性ホルモンの減少は、認知機能の低下やアルツハイマー病の
発病率が高まる要因とされており、
福井教授らは予防につながる音楽療法を考案。

奈良市老人福祉センターのコーラスグループに参加している人の協力を得て実験。

事前に参加者の好きな曲を調べ、「みかんの花咲く丘」「憧れのハワイ航路」など
昔の流行歌を合唱したり、生演奏を鑑賞。
童謡に合わせてお手玉を使って体を動かしたりし、月1回、2時間活動。
唾液中の男性ホルモンと女性ホルモンの量の変化を調べました。

服用している薬などの影響が少ない64-83歳の女性36人では、
ホルモン量が多い人は減少、少ない人は逆に増加し、一定量に収束する傾向。
心理テストでも、抑うつや不安が緩和。

男性は4人と少なかったが同様の傾向。
若者でも同様の効果が期待できるという。

福井教授は、「ホルモン量には個人差があるが、
音楽の効果で適正値に調節されていると思う。
ホルモン投与は副作用の危険性があるが、音楽はその心配もない」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=31047&categoryId=&sourceType=GENERAL

July 22, 2006

心筋梗塞の関連遺伝子発見 わずかの違いで発症増加

(共同通信社 7月18日)

塩基配列が1つ違うだけで、心筋梗塞が約1.5倍発症しやすくなる遺伝子を
理化学研究所の田中敏博チームリーダーらが発見、
米科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に発表。

田中さんらは、これまで心筋梗塞に関連する遺伝子を2つ見つけており、
今回で3つ目。
3つすべてが危険性を高める型である場合には、約3.5倍も発症しやすい。

同じ遺伝子でも、人によってその塩基配列がわずかに違う
「多型」と呼ばれる部分があります。
田中さんらは、心筋梗塞に血管の炎症が関与していることに着目。
炎症にかかわるプロテアソームを作る遺伝子の多型を調べました。

心筋梗塞の患者約2600人と健常者約2900人を比べると、
プロテアソームの一部をなすタンパク質を作る「PSMA6」という
遺伝子で特定の塩基配列が違う人が患者には約12%、健常者には約9%。
発症比率を計算すると、この多型を持つ人は約1.5倍危険性が高い。

配列が違うと、PSMA6の作るタンパク質が増え、
それが引き金になって炎症を促進する物質も増加、
心筋梗塞が発症しやすくなります。

田中さんは、「遺伝子診断で危険型と分かれば、生活習慣を見直して
病気の予防につなげることができる」と。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=31210&categoryId=&sourceType=GENERAL

July 20, 2006

神経筋接合部形成タンパク質を特定

(毎日新聞社 7月5日)

脳からの指令を運動神経から筋肉に伝える神経筋接合部の形成に
不可欠なたんぱく質を、東京医科歯科大と長崎大、東京大の
研究チームが突き止めました。
筋無力症の原因解明や治療法開発の手がかりになりそう。

神経筋接合部は、神経側にあるアグリンというたんぱく質の働きで、
筋肉側に神経伝達物質の受け皿が集まり、形成。
最近、アグリン以外にも接合部形成にかかわる物質があることが
分かったが、特定されていなかったです。

東京医科歯科大の山梨裕司教授らは、
造血機能をコントロールする物質を探す過程で、
未知のたんぱく質「Dok-7」を発見。
Dok-7が、神経筋接合部の筋肉側にあり、
神経伝達物質の受け皿集結を促す役割を果たすことをマウスの細胞で確認。
遺伝子操作により、体内でDok-7を作れないようにしたマウスは、
神経筋接合部を形成できず、呼吸に必要な筋肉を動かせないため
誕生後すぐに死にました。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=30598&categoryId=&sourceType=GENERAL

July 19, 2006

「CBEX」が筋肉疲労を緩和

(日本ハム・プレスリリース 7月5日)

日本ハム(株)は、独自に開発した機能性食品素材「CBEX」が、
ヒトの運動時の筋肉疲労を緩和する事をを確認。
このCBEXは、鶏胸肉由来の成分で、抗疲労効果が期待されている
カルノシン・アンセリンを豊富に含むもの。

今回は、運動時の筋肉疲労の原因といわれている筋肉pH値の低下に着目。
国立スポーツ科学センターと共同で、世界に1台しかないMR装置を用いて
ヒトによる試験を行いました。
その結果、CBEXを継続的に摂取する事で、運動時の筋肉pH値の低下が緩和され、
運動持続時間が伸びる事が分かったそうです。
これは、世界でも初めての知見で、
7月5日~8日にスイス(ローザンヌ)で開催された
11th Annual Congress of the European College of Sport Scienceにて発表。

http://www.nipponham.co.jp/release/20060705.html

July 14, 2006

文科省、研究支援を重点化 件数半減し額倍増

(産経 7月5日)

文部科学省が、世界水準の研究教育拠点を育成するための
財政支援策「21世紀COEプログラム」に代わり、
来年度から新たな支援策(ポストCOE)を始めます。
支援する拠点数を半減し、1件あたりの支援額を倍増させることで
“ばらまき型”から“重点型”にシフト。

COEとは、センター・オブ・エクセレンスの略。
現行制度は、14年度から開始。
初年度の採択件数は、50大学113件、
公募の最終年度となる16年度には、延べ93大学274件に拡大。
教員の論文数が1割増えたり、国内外の大学や研究機関、企業との
共同研究が5割増となる成果を得たものの、
審査委員会の委員からは
「世界水準の拠点を育成するには対象数が多すぎる」などと批判も。

ポストCOEでは、支援対象を現行の約半数の150に絞って厳選。
1件あたりの平均支援額は、現行の1億2400万円程度から倍増させて重点化。

すべての学問分野を対象に公募するが、
審査の区分は生命科学や社会科学など現行と同じ10分野が基本。
学問的ニーズの変化に対応できるよう、
「学際・複合・新領域」の分野は毎年公募。
現行制度で採択されたCOE拠点も除外せずに、全分野で新たに募集。
他大学と連携した取り組みも対象にする考え。

ポストCOEのあり方をめぐっては、
中央教育審議会が昨年9月の答申「新時代の大学院教育」で、
「ポストCOEプログラムを検討し、より充実・発展した形で
具体化していく必要がある」とした上で、
「基礎研究の場の多様性の確保、学際・融合・新領域の創成の観点から、
すべての学問分野を範囲として重点的支援を実施すべきだ」と提言。

http://www.sankei.co.jp/news/060705/sei021.htm

July 13, 2006

遺伝子組み換え大豆 摂取子ラット6割死ぬ

(毎日新聞社 7月6日)

ロシア科学アカデミー高次機能・神経行動学研究所の
イリーナ・エルマコバ博士が、親ラットに遺伝子組み換え大豆を混ぜた
餌を食べさせ、生まれた子ラットにも与える実験をしたところ、
生後3週間までに約6割の子ラットが死んだと。
遺伝子組み換え大豆の慢性毒性の可能性を示す初めての研究結果。

現在、大豆やトウモロコシなど遺伝子組み換え作物は
日本でも大量に使われています。
だが、内閣府の食品安全委員会が定める安全性評価基準では、
動物で安全性を確認する実験の義務はなく、
慢性毒性などの実態はほとんど分かっていない。

イリーナ博士は、遺伝子組み換え大豆の粉末を
毎日5-7グラム混ぜた餌を親ラットに交配の2週間前から食べさせ、
妊娠中や授乳中も与えました。
さらに、生まれた子ラットにも同じ餌で飼育。

その結果、生まれた子ラット45匹のうち、
生後3週間までに25匹が死んだ(死亡率55.6%)。
一方、通常の大豆を混ぜた餌の場合、生まれた子ラット33匹のうち、
死んだのは3匹(同9.1%)だけ。

◇遺伝子組み換え作物に詳しい金川貴博・京都学園大教授(環境微生物学)の話

遺伝子組み換え作物による慢性毒性の調査例は少なく、
子どもへの影響について初めて示した点で注目。
ただちに人間に当てはまるものではないが、
遺伝子組み換え作物の安全面の研究を国が率先して実施する必要があります。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=30703&categoryId=&sourceType=GENERAL

July 07, 2006

将棋連盟と理研、「棋士脳」解明へ プロ棋士が協力

(朝日 6月30日)

日本将棋連盟(米長邦雄会長)は、理化学研究所などと協力して
「Shogi・Super―Brain研究会」を発足。
棋士の思考過程の解明を目指します。

同連盟が、理研・脳科学総合研究センターに被験者として棋士を派遣。
脳の血流を測定する装置に入って対局したり、脳波測定装置を使って、
次の手を読んでいる時に脳のどの部分が働いているかなどについて調べます。

将棋を指す時には、論理的思考の左脳と直感的思考の右脳を組み合わせて
使っているとされるが、未解明な部分が多い。
同研究会座長の伊藤正男・同センター特別顧問は、
「人間がどのようにものを考えているか、脳科学の中では非常に興味深いが、
アプローチが難しい分野。将棋は、高度な思考の典型的なもので、
画期的な研究になると期待している」と。

同研究会には、人工知能の専門家らも参加し、
研究成果を将棋ソフトの開発にも役立てるという。

東北大学の川島隆太教授(脳科学)は、
囲碁と脳神経細胞の活動状況に関して、日本棋院の依頼で研究を進めています。

http://www.asahi.com/culture/update/0630/010.html

July 06, 2006

果物と野菜の摂取が骨塩量を改善する可能性

(Medscape Medical News 6月23日)

果物と野菜の摂取量は、骨塩量と正の相関があるという試験結果が
『American Journal of Clinical Nutrition』に掲載。

MRC Human Nutrition Research(英国、ケンブリッジ)のCelia J. Prynneらは、
「果物と野菜の摂取が、骨の健康にプラスの効果を及ぼすというエビデンスは
増加しているが、これまでの試験の大部分は成人を対象とし、
思春期を含めた報告はほとんどない」。

骨塩の状態と果物・野菜の摂取との関連を、
二重エネルギーX 線吸収測定法(全身、股関節、脊椎の骨塩測定)、
健康、ライフスタイル、身体活動に関する質問表、
7日間の食事日記(果物、野菜、栄養素の摂取を判定する)を用いて研究。
対象は、思春期の男女 (年齢16-18歳)212例、
若年女性(年齢23-37歳)90例、高齢男女(年齢60-83歳)134例。

思春期の男女および高齢女性では、
脊椎の大きさで調整した骨塩量と果物の摂取量との間に正の相関。
男児のみ、大腿骨頸部の大きさで調整した骨塩量と、
果物および食事性ビタミンCに正の相関。
若年女性または高齢男性、またいずれの群においても
骨の測定値と野菜摂取単独の間に有意な相関は認められず。

「より多くの果物・野菜の摂取は、若年、高齢とも、
特に脊椎および大腿骨頸部の骨塩の状態にプラスの効果が。
メカニズムは解明されていないが、
ビタミンC、他の果物に特異的な抗酸化物質、ライフスタイルが
何らかの役割を果たしている可能性がある」。

試験の制限として、
被験者が全般に富裕層、高学歴、意欲的であり、一般化の可能性が限られる点、
本試験では、国家的代表標本よりも果物・野菜の平均摂取量が多かった点、
サンプルサイズが小さい点。

「特に若年者に、果物・野菜の摂取量を増やすという勧告が理にかなっている。
この年齢群の摂取量は一般的に非常に低いと考えられ、
本試験から、BMC[骨塩量]をかなり増加できる可能性が示された。
若年女性、高齢男性で、果物・野菜の摂取量と骨塩の状態との関連は示されないが、
これは、摂取量を増加させても何の利益も得られないと解釈すべきではない。
骨塩の状態は健康の1つの側面にすぎず、
より多くの果物・野菜の摂取が長期的に健康に有益な結果を与える可能性がある」。

サリー大学(英国、ギルフォード)のSusan A Lanham-Newは、付随する論説で、
骨粗鬆症の世界的な増加とこの問題に対処するための
公衆衛生戦略の緊急の必要性について考察。

「将来の研究の焦点は、
第一に、特に果物と野菜の摂取またはサプリメントとしてのアルカリ投与と
広範囲の骨の健康に関する指標(骨折リスクを含む)を評価する長期介入試験、
次いで、果物・野菜の他の側面が骨代謝にとって有益であるかどうかや、
その根底にあるメカニズムを確認する実験研究(細胞、動物、ヒト)が必要。
これらの疑問が解決されれば、
『果物と野菜』のアプローチが骨粗鬆症治療の非常に賢明(かつ自然)な
代替療法となるかもしれない。
しかし、欧米人に果物と野菜の摂取を増やすことを納得させることは、
依然として最大の難問である」と。

Am J Clin Nutr. 2006;83:1254-1255, 1420-1428

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=30505&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

June 28, 2006

Pycnogenolは筋痙攣および筋痛の減少に役立つ可能性がある

(Medscape Medical News 6月20日)

Pycnogenol(商品名)は、血管疾患患者でも、健康なアスリートでも、
安静時、運動前後の筋痙攣および筋痛を減少させるのに有効である、
という結果が『Angiology』に発表。

マンスター大学(ドイツ)のPeter Rohdewaldは、
「世界中に多数存在するアスリートを含め、自然な方法による
筋痙攣・筋痛緩和に興味のあるすべての人々にとって、
これはまさしく画期的発見であり、極めて意義深い」と。
「Pycnogenolが筋肉への血流を改善し、運動後の回復を促進することによって、
スポーツで重要な役割を果たすことを示している」。

この試験の第1部では、健康被験者66例に
Pycnogenol 50 mgカプセル4錠(総投与量200mg/日)を服用させ、
毎日1.5 L以上の水を飲むように指示。
Pycnogenol投与開始前2週間以内に記録された痙攣発作回数と、
第4週、第5週における痙攣発作回数の差は統計学的に有意。

健康被験者では、平均痙攣回数が1週間当たり4.8±1.2回から、
4週間後時点において1.3±1.1回に減少。
血管疾患患者では、1週間当たり6.3±1.1回から2.6±0.4回に減少。
また、アスリートでは、1週間当たり8.6±2回から2.4±0.5回に減少。
5週間後時点においては、3群ともにPycnogenol摂取前より低い水準まで減少。

試験の第2部では、間欠性跛行患者、糖尿病性微小血管症患者47例を対象とし、
2週間の導入期間終了後1週間にわたってPycnogenolまたはプラセボを投与。
Pycnogenol投与を受けていた患者では、
痙攣回数および筋痛が有意に減少。
糖尿病性微小血管症患者では、Pycnogenol補充療法を実施中に
筋痛が20.8%減少し、間欠性跛行患者では21%減少。
プラセボ投与を受けていた患者では、筋痛は減少しなかったです。

「Pycnogenolは、筋組織への血液供給を改善し、
これにより筋痙攣および筋痛を緩和する効果を生じる」と。
「一酸化窒素(NO)という血液ガスが血流を促すことはよく知られているが、
PycnogenolはNO活性に影響を与えていると思われる。
不十分なNO産生は、血管疾患において血流障害を招いている」。

Angiology. 2006;57:331-339

June 27, 2006

骨格筋制御に必須タンパク 筋無力症の治療に手掛かり

(共同通信社 6月23日)

体を動かす際、脳からの指令が骨格筋に伝えられる過程で重要な役割を担う、
神経細胞と骨格筋の接合部「シナプス」の形成に不可欠なタンパク質を、
東京医科歯科大の山梨裕司教授(分子生物学)らの研究グループが発見し、
米科学誌サイエンスに発表。

山梨教授は、「シナプスの異常によって起こる重症筋無力症や先天性の
筋無力症の治療法開発につながる可能性がある」と。

私たちが意識的に体を動かそうとすると、脳から出た指令が
運動神経を通って骨格筋に伝わります。
その際、シナプスと呼ばれる運動神経と骨格筋の接合部が指令を中継する
役割を果たすが、シナプスがどのように形成されるかについては謎。

研究グループは、シナプスの筋肉側に集中的に存在するタンパク質に注目し、
Dok-7」と命名。
遺伝子操作で、Dok-7を体内で作れないマウスをつくったところ、
マウスには運動神経と骨格筋の間のシナプスが形成されず、
呼吸に必要な肋間筋や横隔筋を動かせなかったです。
マウスは呼吸ができず、生後まもなく死亡したという。

このことから、Dok-7が骨格筋を動かすために必要なシナプス形成に
欠かせないタンパク質であると結論。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=30258&categoryId=&sourceType=GENERAL

コーヒーに肝硬変予防の効果と 米研究

(REUTERS 6月18日)

毎日コーヒーを飲むと、アルコール性の肝硬変になる危険性が低くなる、
との調査結果を、米国の研究者らが発表。
ただ、予防効果が表れる仕組みは明らかになっていない。

米健康保険大手カイザー・パーマネンテの医療研究所のチームが、
加入者12万5580人のデータを分析。
コーヒーを1日1杯飲むことにより、アルコール性肝硬変を発症する確率は
22%低下することが分かりました。
さらにコーヒーの摂取量が増えると、発症率はそれだけ下がっていたという。

同様の傾向はこれまでの研究でも報告され、
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインが作用しているとの説が有力視。
しかし、紅茶について小規模な調査を実施では、予防効果はみられず。
「コーヒーにはカフェイン以外にも、体に作用するさまざまな成分が含まれている。
また、ミルクや砂糖などを加えて飲むことが多く、
これが影響を及ぼしている可能性もある」と。

研究の結果を受けて、飲酒による肝臓への負担を軽くしようと、
コーヒーの摂取量を増やしたり、カクテルにコーヒーを加えたりする人が増えそう。
しかし研究チームでは、
「コーヒーに予防効果があるとはいっても、アルコール性肝硬変を防ぐ最大の手段は
酒の量を減らし、できれば禁酒することだ」と。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200606180004.html

June 25, 2006

第1部・迫るアジア ものづくり/6止 技能継承、産学官動く

(毎日 6月14日)

マスクの向こうで青白い光が輝く。
愛知県小牧市の三菱重工業名古屋誘導推進システム製作所(名誘)第2工場。
慎重に溶接を進める加藤慎也さんの手元を、社内の「技能塾」講師、
高橋辰也さんの鋭いまなざしが追ります。
溶接によってできたふくらみは、0・5ミリ以内と決められています。
「名人」の異名を持つ高橋さんの指導に、加藤さんは耳を傾けます。

名誘は、H2Aロケットエンジンの部品を作っています。
過酷な宇宙空間に耐える強さと精密さが要求される半面、
少量生産のため技術の維持が難しい。
加藤さんも入社11年目の溶接のプロだが、
高橋さんは「今の状態で満足せず、上を目指してほしい」と期待。

「技能塾」は、三菱重工業が04年度から全社で始めた技能伝承の取り組み。
入社3年を超えた技能職を対象に、ベテラン技能者がマンツーマンで実技指導。
2年間で約720人が受講。同社は、70年代半ばの造船不況時に
採用を手控えた影響で、30代後半~40代半ばの技能職が極端に少ない。
技能塾は、この「空白」を埋める狙い。
人事部人材開発グループの谷内英夫主任は、
「技能と同時にものづくりの奥深さ、楽しさを感じてほしい」と。

技能の継承は、ものづくり現場での大きな課題。
団塊世代が大量に定年を迎える「2007年問題」が危機感に拍車を。

「ものづくり白書」によると、07年問題に危機感を持つ企業は全産業で33・7%、
製造業では41・1%(06年1月調査)。
8割の企業が対策を講じているが、雇用延長や再雇用が中心で、
「技能継承」は2割に満たない。
白書は「雇用延長で問題を先送りしている懸念もある」と指摘。
技能継承の難しさとアジア各国の急激な追い上げ。
日本のものづくりは「内憂外患」。

だが、腕をこまねいているばかりではない。
産学連携の人材育成で、難局を乗り切る試みが動き出しました。

群馬大工学部は来春、新学科「生産システム工学科」を発足。
「技能と専門知識を兼ね備えた新時代のエンジニア養成」が目標。
桐生市の南の工業都市、太田市の産業界との連携。
同市には、富士重工業や三洋電機の工場があり、
それを支える形で金型産業も育ったが、アジアの追い上げで、
企業単位での人材育成はままならなくなりました。

宝田恭之工学部長は、「継承が難しい『職人の勘』に加えて、
先端の専門知識を体系的に教える。地元の技能者の協力も得たい」と。
誘致に動いてきた太田商工会議所の松田賢治専務理事は、
「太田のものづくりを担う人材を」と期待。

経済産業省も「アジアをしのぐ、日本の活力維持には強い人材が欠かせない」と、
産学連携による技能継承を支援する制度を作成。
「スーパーマイスター」(東京工業大)、「鋳造エリート」(近畿大など)、
「ものづくり革新リーダー」(大阪工業大)……。
未来に向けた模索が始まろうとしています。

アジアの台頭は脅威だが、
日本がはぐくんできた技術の高さと貴重さを再認識させました。
次の飛躍への挑戦はこれから。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060614ddm016070044000c.html

June 20, 2006

生活習慣病予防の可能性を示すバイオマーカーを発見

(日経ヘルス 6月17日)

京都府立医科大学の吉川敏一教授は、
「これからは病気になった後の治療ではなく、病気にならないことが重要」と提言。
そのために、病気を発症するまでの間に、体の中で起きる変化、
特に疾病リスクを高めるような変化を知る
「しっかりした評価法と指標(バイオマーカー)が必要」。

多くの生活習慣病の発症には、
活性酸素(ラジカル)が関与していることに着目。
この活性酸素によって生まれた特異的成分(=酸化ストレス)を計測すれば、
生活習慣病などの疾病リスクが判断できるという。

疾病リスクが高い状態であれば、
医師や看護師、栄養士などがエビデンス(科学的根拠)に基づいた
運動や食事療法、サプリメントなどを取り入れて、
リスクを下げるための的確な指導を行います。
「抗酸化作用を持つビタミンや、カロテノイド類、ポリフェノールを多く含む
食品やサプリメントを取り入れることで、
生活習慣病の発症を予防できるのではないか」と。

その可能性を示す1例として、
強い抗酸化作用を持つ海洋性の赤い色素、アスタキサンチンが
動物実験で糖尿病性腎症の発症を抑制するというデータが示されました。

また、予防的なバイオマーカーとして、現在は糖尿病、糖尿病性腎症、
動脈硬化などの生活習慣病や歯周病、関節炎などの解析が進行。
1滴の血液で体内の酸化ストレス度を測定し、
疾病のリスクが判定できるチップも開発中とのこと。

疾病予防のための適度な運動を判断する運動マーカーや、
「女性の肌の悩みであるシワのマーカーも発見できた。
現在、動物実験で解析中」(吉川教授)。
今後は、こうしたマーカーにより、生活習慣病予防にとどまらない、
幅広い展開が期待。

吉川教授は、「予防医学が確立されれば、今の日本社会が抱える
膨大な医療費負担などは軽減される。
現代社会において、食材から十分な栄養素を摂取することは難しくなっている。
その場合は、サプリメントをうまく利用すべきだ」と。

http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf?CID=onair/medwave/a027/426796

June 19, 2006

インスリン抵抗性の程度に相関してレチノール結合タンパク質4の血清レベルが上昇する

(BioToday 6月15日)

Retinol-Binding Protein 4 and Insulin Resistance in Lean, Obese, and Diabetic Subjects

脂肪細胞から分泌されるレチノール結合タンパク質4(RBP4)は、
インスリン抵抗性に伴って上昇。
マウスの実験では、RBP4上昇でインスリン抵抗性が発現することが示唆。

血清のRBP4レベルとインスリン抵抗性の相関、
医学的介入でインスリン抵抗性が改善した後のRBP4レベルの変化、
脂肪細胞でのグルコーストランスポーター4(GLUT4)の発現低下と
血清RBP4レベルの相関を調べた試験の結果を報告。
脂肪細胞でのGLUT4の発現低下は、インスリン抵抗性の初期の病理的特徴。

試験の結果、肥満、耐糖脳異常、2型糖尿病患者と、
2型糖尿病の強力な家族歴を有する非糖尿病の非肥満者の
インスリン抵抗性の程度と血清RBP4レベルが相関。
また、血清RBP4の上昇と代謝症候群のコンポーネントに関連が認められました。

運動すると、インスリン抵抗性が改善した人においてのみ
血清RBP4レベルが低下。

脂肪細胞のGLUT4タンパク質と血清RBP4レベルは逆相関。

血清中のRBP4は、明白な糖尿病が発現する前に上昇。
RBP4は、インスリン抵抗性やインスリン抵抗性に関連した
心血管リスクファクターを同定するのに使用。

June 18, 2006

脂肪肝が「やせる指令」 東北大、肥満改善に光明も

(共同通信社 6月16日)

脂肪肝になると、肝臓が神経と脳を通じて指令を出し、
全身の脂肪組織を燃焼させ、やせさせることを、
東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授(内分泌代謝学)の
研究チームがマウスの実験で発見、米科学誌サイエンスに発表。

脂肪肝は、肥満や高血糖、高血圧、高脂血症が重なる
メタボリック症候群の人によく見られます。
片桐教授は、「脂肪肝は、肥満になるのにブレーキをかけ、
体重を調節している。ヒトにも同様の機構があると考えられ、
指令を促進する物質を開発できれば、肥満や糖尿病の治療薬になる」と。

片桐教授らは、高カロリー食を与えて太らせた糖尿病のマウスを遺伝子操作、
脂肪肝と脂肪肝でない2グループを作り経過を比較。
脂肪肝のマウスはエネルギー消費が増え、脂肪組織は分解されて縮小。
血糖値も下がり、糖尿病が改善。

研究チームは、現象の仕組みを検討。
脳と脂肪組織をつなぐ交感神経の遮断実験を行い、
エネルギー消費の増加は交感神経の活性化によるものと確認。
肝臓と脳を結ぶ迷走神経を切断すると、脂肪分解は進まないことも。

脂肪肝が、やせさせる信号を迷走神経を通じて脳に発信。
脳は、肝臓に脂肪がたまったこと感知し、交感神経を通じて
全身の脂肪組織に脂肪を燃やすよう指示していると結論。

http://www.m3.com/news/news.jsp?pageFrom=m3.com&sourceType=GENERAL&articleId=30112&articleLang=ja

June 17, 2006

黒豆由来のアントシアニンが脂肪蓄積を抑える

(日経ヘルス 6月2日)

黒豆の皮に含まれる黒いポリフェノール、アントシアニンに、
お腹まわりの脂肪の蓄積を抑える効果が。
また、コレステロールの排出を促す作用も確認。
フジッコと静岡県立大学の共同研究で、第60回日本・栄養食糧学会大会で報告。

脂肪分が30%を占める高脂肪食を1カ月ラットに与えると、
腹部の脂肪量は、4割も増加。
ところが、この高脂肪食にアントシアニンを1日に体重1kg当たり5mg加えて
飼育したラットでは、腹部脂肪量の増加は約1.5割に抑制。

肝臓に蓄積される脂肪の量にも大きな差があり、
血液中のコレステロール値が有意に下がり、中性脂肪値も減る傾向。

黒豆のポリフェノール、アントシアニンは、
これまで血液サラサラ効果などが実証。
脂肪の蓄積を抑えたというこのデータから、今後はダイエット成分としても注目。

http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf?CID=onair/medwave/a027/426736

悪性化促進のタンパク発見 大腸がんで金沢大教授ら

(共同通信社 6月15日)

大腸がんを悪性化させる「司令塔」的な働きをするタンパク質(分子)を、
金沢大がん研究所の源利成教授(分子腫瘍学)らと
米国2大学の共同研究グループが発見し、英科学誌ネイチャーに発表。

源教授らは、今回発見したタンパク質の特性を生かしたがん診断法などの
開発を目指して研究を進めたいと。

研究グループは、大腸がん細胞のCRD-BPというタンパク質が、
β-カテニンなど、がん促進に関連する3種類のタンパク質の働きを協調させて、
がんを悪性化させる役割を持っていることを初めて突き止めました。

β-カテニンなどにがん化を進める働きがあることは知られていたが、
CRD-BPに同じ働きがあることは分からず。
遺伝子操作で、CRD-BPを減らしたところ、
死ぬがん細胞が2-3倍に増えたほか、がん細胞の増殖も減ることが確認。

研究では培養したがん細胞だけでなく、患者の了解を取り、
実際の大腸がんの組織を使って実証。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=30088&categoryId=&sourceType=GENERAL

June 11, 2006

跛行には、チベット伝統の生薬製剤が安全かつ有効な可能性

(Medscape Medical News 5月31日)

チベットの生薬製剤である、パドマ28が跛行に有効であり、副作用はない
というメタアナリシスの結果が、『Atherosclerosis』に発表。
研究者らは、ランダム化比較対照試験(RCT)を実施すべきだと。

チューリッヒ大学病院(スイス)のJorg Melzer氏らは、
「生薬製剤の使用が多くなってきているが、その安全性と有効性の
きちんとした検証がないことも少なくない」と。
「医薬品であるパドマ28は、チベット原産で処方が確立しており、
ヨーロッパで1960年代から末梢動脈閉塞疾患(PAOD)などの
循環器系疾患の対症療法に使用されている」。

この生薬製品について、文献に発表されているデータを網羅的に入手し、
発表論文・報告書の著者および製造者からもオリジナルのデータを分析。
19件の臨床試験で、2,084例の患者が対象、
PAODの対照臨床試験6件には、444例の患者が参加。

パドマ28で、歩行距離が100m以上延びた患者の割合は、
有効生薬製品群では18.2%に対し、プラセボ群では2.1%。

安全性は良好で、重篤イベントは稀で、それも基礎疾患に関連したもの。
重篤有害イベントが見られた患者は全部で2例、
有効生薬製品を使用した群の1例が心筋梗塞を発症、
プラセボ群の1例がPAOD悪化のために足指を切断。
血液検査と生化学検査では、どちらの群にも全身性の変化が見られず。

「パドマ28は、PAOD関連症状(歩行距離など)を有意に改善し、
その効果の大きさは、用いられているその他の医薬品とおそらく同程度。
しかし、確定的な大規模RCTが望まれる」。

この分析の限界として、出版バイアスとスポンサーによる影響。

「パドマ28は、PAOD症状の緩和に有意に有効であることが示された。
PAOD症状の治療に用いられているペントキシフィリンやナフチドロフリルに、
この生薬医薬品が匹敵することがデータにより示された。
ただし、単一の臨床試験では現行の医療を変えさせるだけの十分な根拠が
得られていないので、GCP(優良臨床試験基準)を順守した大規模なRCTで、
PAOD管理における治療価値を正確に評価することが必要。」

Atherosclerosis. Posted online April 4, 2006.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29952&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

理系白書’06:第1部・迫るアジア ものづくり/5 技術力、流出から貢献へ

(毎日 6月7日)

出来たての製品の縁をなぞった人差し指に、真っ赤な血が。
「縁がはみ出すとこうなる。だから厳密に作ることが必要なんだ」。
韓国南部の工業地帯、大邱(テグ)市にある機械メーカー
「大成ハイテック」で技術顧問を務める松岡順吉さんは、
驚く韓国人従業員に、自らの指を見せながら言いました。

松岡さんは、国内の大手工作機械メーカー「ヤマザキマザック」(愛知県大口町)に
40年間勤めた技術者。工作機械の製造では、1000分の1ミリの誤差も命取り。
気温の変化だけで出来上がりが変わります。

転機は、約10年前。
海外の部品調達先を探すため、アジア各国の企業を視察。
紹介で行き着いたのが、大成ハイテック。
他国に比べ、努力を惜しまない韓国人気質が気に入りました。
だが、当時の技術は「まったくお話にならなかった」。
数カ月に1度の訪問指導では満足できず、01年末、
移籍して直接指導するため、大邱市のアパートへ単身移り住みました。

従業員には、製品の表面をやすりで仕上げる作業から。
わずかな誤差も認めず。技術をすべて伝えたと思えたころには、
最初2~3社だった取引先が、日本を中心に50社以上に。
地元紙には、「小さな企業の驚異的な成長を支える日本人エンジニア」と紹介。

松岡さんは、「日本とは10~15年の開きがあるが、いい製品ができれば、
この製品を使っている日本企業にもプラスになる」と。

ヒト、モノ、情報に国境がなくなりつつある今、それらの移動は
もう「流出」の一言では語れない。
多くの技術分野で日本はアジアをリードしているが、
次の「お手本」として、環境分野へ注目が集まっています。

松下電器は今年、政府の「CDM(クリーン開発メカニズム)プロジェクト」の承認。
工場での省エネ技術を、マレーシアの11の自社工場に提供する代わりに、
それで削減できた温室効果ガスの排出量を、
日本国内で義務付けられている削減分にカウント。

日本の製造業の省エネ技術は、世界トップレベル。
70年代の石油危機を機に進みました。
同社環境本部の冨田勝己・環境企画グループ参事は、
「工場の熱源や動力源を無駄なく使うシステムなど、
先進国での省エネ技術は日本生まれです」と。

マレーシアには、日本でも最高水準のエネルギー効率を誇る
ボイラーや制御システムを持ち込みます。
投資額は数億~十数億円で、通常の省エネ関連の設備投資の2~3倍の規模。
環境審査グループの小河晴樹チームリーダーは、
「日本では当然の技術も、見方を変えると(アジア各国への環境貢献という)
可能性を秘めていた」と。

政策研究大学院大学の橋本久義教授(中小企業論)は、
「日本の技術が海外に広がるのは、悪いことではない。
日本の『科学技術圏』が広がり、信頼がはぐくまれる。
アジアのリーダーを自認するなら、
日本も『教えない』などケチ臭いことを言うべきではない」と。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20060607ddm016070186000c.html

June 10, 2006

ジャガイモの「ペプチド」、善玉コレステロールを増加

(Web Tokachi 5月31日)

でんぷんかすに含まれるジャガイモのたんぱくの分解物「ペプチド」に、
善玉コレステロールを増やす効果があることが、
帯広畜産大の福島道広助教授らの研究で分かりました。
ジャガイモたんぱく自体も、良質な植物性たんぱくとして知られる
大豆たんぱくと同程度に良質なことが分かり、
福島助教授は、「ジャガイモの付加価値を高め、十勝の一次産業の活性化や
ペプチドの製品化による廃棄物軽減につながれば」と。

十勝のジャガイモの年間収穫量は91万1000トン(2004年)で、
約4割、37万トンがでんぷん原料。
このうち、約1割は廃棄物として処理。
でんぷんかすには、たんぱくが5、6%含まれ、
年間2000トン近くのジャガイモたんぱくが廃棄。

研究は、文科省「都市エリア産学官連携促進事業」の一環。
農産廃棄物の軽減化、機能性食品素材の開発などを目的に同大、
道立十勝圏地域食品加工技術センターなど産学官6機関からなるグループ。

実験には、でんぷん工場の廃液から精製したペプチドを使用。
大豆とジャガイモのペプチド、カゼイン(乳性たんぱく)を、
それぞれ20%含む餌を4週間、ラットに与えました。

大豆、ジャガイモともに、総コレステロール量はカゼインより10%前後低下。
善玉コレステロール値は大豆で下がったのに対し、ジャガイモでは上昇。
悪玉コレステロール値は両者で下がったが、ジャガイモの方が大豆より低下。
また、血液中の中性脂肪値も大豆の約半分に下げることが認められ、
腸内環境改善効果を示唆する結果。

たんぱくの比較は、愛媛大が実施。
アミノ酸組成のバランスの良さから「畑の肉」と称される大豆と、
必須アミノ酸(18種類)含量が16種類で同程度の値を示し、
良質な植物たんぱくであることも分かりました。

生活習慣病の予防には、悪玉コレステロールを減らすより、
善玉-を増やす方が効果的と言われ、福島助教授は、
「機能性食品として飲料や調味料などでの製品化も検討したい」と。

<ペプチド>
複数のアミノ酸が結合したもの。
複数のペプチドで構成されるたんぱく質は、アミノ酸かペプチドの形で吸収。
吸収効率は、アミノ酸より高いと言われ、ペプチドを付加した機能性食品も多数。

http://www.tokachi.co.jp/kachi/0605/05_31.htm

June 08, 2006

理系白書’06:第1部・迫るアジア ものづくり/4 「脱大手」模索する中小

(毎日 5月31日)

「下請けに出せば、見積もりの半額でできるでしょう」。
東京都大田区で金型工場を営む並木正夫さんは、
大手メーカー担当者の「提案」に耳を疑いました。
人件費の安いアジアで金型の半製品を作らせ、並木さんの工場で仕上げろと。
創業以来「品質第一」で働いてきた並木さんは、憤然として断りました。

金型は、金属やプラスチックなどの部品を生み出す金属製の型。
携帯電話のカバーからビールびんまで、金型に縁のない工業製品はない。
金型の世界シェアは、日本が圧倒的首位。
生産現場は、従業員10人以下の小さな町工場で、
98年の約1万3000社から5年間で約2300社減少。
原因は、アジアの急追による価格破壊。
よくよく見れば、背後には日本の大手企業がいます。

ある人気ゲーム機の金型図面が、海外に流出。
流出元は、金型を発注したゲーム機メーカー。
図面を下請けから手に入れ、アジア企業に作らせて安く上げる策略。
日本金型工業会東部支部が、01年に実施した約3500社対象の調査では、
約4割が「横流しされた経験がある」と。

「修理に必要だから」と、金型の図面を求められれば下請けは断れない。
「ノウハウが詰まった図面は、流出先にとっては最新の教科書だ」。
同工業会の中里栄常務理事は悔しがります。

北京の西、寧夏回族自治区銀川市で、日・中・オーストリア合弁の工場が開所。
「ようやく軌道に乗った」。
須崎鋳工所(埼玉県川口市)の須崎耕二社長は、安堵の思い。
須崎鋳工所は、鋳物の街・川口の老舗。
三菱重工業などの工作機械部品を引き受けます。

鋳物は、自動車のエンジンやブレーキ、工作機械などに欠かせない。
ところが、慢性的な人手不足に加え、原材料の鉄の高騰が追い打ちをかけ、
鋳物メーカーはこの20年で半減。
「このままでは日本の鋳物技術は消える」。
須崎さんが打った手は、「アジアでの技術継承」。

80年代前半、同業組合で中国からの研修生を受け入れる体制を作りました。
94年には、須崎さんの会社は中国の鋳物メーカーと合弁。業界初の挑戦。

銀川に作った工場に4年間通い詰め、持てる技術をすべて伝えました。
12年間で、米ゼネラル・エレクトリックなど取引先の信頼を勝ちとり、
この新工場ができました。
中国での成功を支えたのは、須崎さんらが80年代に受け入れた元研修生。

海外へ打って出た鋳物に対して、金型業界は国内での反転攻勢を模索。
並木さんらは03年、大田区周辺の25社で「金型熱血集団」を作りました。
注文を共同で受注し、得意分野に応じて仕事を分担。
昨年には日本メーカーの要望に応え、金型修理を請け負う拠点をバンコクに。

止まらない流動化。競争の舞台はアジアに広がります。
日本鋳造協会の児玉洋介副会長は、
「大手の言いなりになってきた中小企業も意識改革が必要だ」と。

アジアの製造業に詳しい松本大総合経営学部の兼村智也助教授は、
「専門分業化した中国などに比べ、日本の技術者はトータルでものづくりを知っている。
いかに次世代に技能を伝承するかが、今後の生き残りのカギになると思う」と。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20060531ddm016070108000c.html

ホヤにアルツハイマー予防効果の「プラズマローゲン」

(読売 6月1日)

海に生息するホヤなどに含まれる脂質の「プラズマローゲン」が、
アルツハイマー病を防ぐ効果を持つ可能性が高いことが、
東北大大学院農学研究科の宮沢陽夫教授(食品学)らが報告。
動物実験で証明できたことから、来年にも錠剤の健康食品として発売。

ひどい物忘れなどを引き起こすアルツハイマー病は、
脳の神経細胞が死ぬことが原因。
患者の脳内では、プラズマローゲンが通常より3割程度減少していることが
わかっていたが、その働きは明らかにされず。

宮沢教授らは、細胞の培養実験の結果、
プラズマローゲンに神経細胞死を防ぐ効果があることを突き止めました。
アルツハイマー病を発症させたラットに、プラズマローゲンを食べさせ、
迷路実験をしたところ、記憶・学習能力の低下を防ぐことができました。

プラズマローゲンは牛の脳にも含まれ、BSE(牛海綿状脳症)感染の恐れが。
そこで手に入りやすい海産物を調べ、
ホヤやカキ、ウニなどに含まれていることを発見。
ホヤの場合は、廃棄する内臓への含有率が約0・1%と高く、有効活用できます。

宮沢教授らは昨年8月、ベンチャー企業を設立。
ホヤからプラズマローゲンを抽出する方法も開発。
4~5年をかけて、患者への効果を確かめ、医薬品などの開発に結びつけたい。

宮沢教授は、「ホヤは宮城、岩手両県の三陸沿岸が産地。
先進各国では高齢化が進んでおり、日本だけでなく世界で需要が高まれば、
東北の新しい産業に結びつく可能性がある」と。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060601i506.htm

June 07, 2006

理系白書’06:第1部・迫るアジア ものづくり/3 技術を守るにもコスト

(毎日 5月24日)

シャープ亀山工場(三重県亀山市)は、大型液晶テレビの生産拠点。
精細な画質を実現したテレビは、「亀山モデル」と呼ばれ、世界から注目。
「工場隣の高台から、出入り業者を誰かが望遠レンズで撮影していた」。
まことしやかなうわさも。
「高台まで外国人を乗せたことがある」と話すタクシー運転手も。

亀山工場の合言葉は、「技術を外へ出さない」。
見学者には、玄関周辺とテレビ組み立てラインの一部が見える
長さ約100メートルの廊下だけ公開。
心臓部にあたる液晶パネル製造ラインは、昨年訪れた小泉純一郎首相も「入り口」だけ。
製造装置は分割して発注し、修理は別業者に依頼。
出入り業者はゼッケンを身に着け、ゼッケンと違う色の区域には入れない。

徹底した防衛策には理由が。
大型液晶パネルは、厚さ1ミリにも満たない薄いガラスに
数千万個の薄型トランジスタを取り付けます。
ライン自体が重要技術の塊。
従来は、製造装置メーカーと二人三脚で開発。
しかし、それらがライバル企業に「流出」。
パネル全体の生産量で、日本は韓国、台湾に抜かれました。

「苦労して習得したノウハウを簡単に奪われるわけにはいかない。
だから、ここまで徹底するしかない」と。
ライバルが追いついてくるまでの、同社ならではの「時間稼ぎ戦略」。

人、モノ、情報が簡単に国境を越える時代。
アジアの知的財産問題に詳しい日高賢治弁理士は、
「中国、韓国、台湾が欲しがるものづくりの技術こそ、
日本が最も大事にすべき知的財産だ。
技術は、工場の中で個々の技術者が握っている。
しかし、日本はそれらを守ることにコストをかけない風土があった」。

電子部品メーカー大手の村田製作所(京都府長岡京市)は、
発明やノウハウの3割前後を特許出願していない。
「出願し公開すれば、ライバルへ情報を提供することになる。
社員には特許出願と同等の報奨、評価をする」と。
海外生産比率も、他メーカーの半分以下の約2割。
「生産と開発の現場の距離を広げたくなかったから」と説明するが、
結果的にアジアへの技術流出を防いでいます。

ある大手電機の役員は一度だけ、アジアのライバル企業に手紙を出したことが。
「弊社の技術者がこのほど、御社に移籍しました」という書き出しで始まる文面は、
その技術者がかかわった営業秘密を使わないよう警告する内容。
もちろん、返事はこなかった。
この企業は全社員に、職務上かかわった「営業秘密」を書かせ、
社外で使わないという誓約書に署名。
しかし、退職後の行動まで監視することは、ほぼ不可能。

違反者は、「不正競争防止法」違反に問えます。
昨年の改正で、国外への持ち出しにも適用範囲が広がりました。
しかし、企業が証拠をつかんで告訴することが前提。立件例は、全国的にもない。

こうした事態は90年代から予測できました。
しかし、メーカーはリストラに追われ、流出はむしろ加速。
「生産拠点の多くが今もアジアにある。利益と流出のリスクを
常にてんびんにかけている」と。
これも、「失われた10年」の負の遺産。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20060524ddm016070118000c.html

June 05, 2006

筋幹細胞の尿道注射により尿失禁が改善する可能性

(Medscape Medical News 5月22日)

筋幹細胞の尿道粘膜下注入が、尿失禁の治療に有効である可能性が。

インスブルック医科大学病院泌尿器科(オーストリア)の
Hannes Strasserらは、米国泌尿器科学会にて報告。

尿道粘膜下に幹細胞を注入すると、筋組織の収縮性が高まり、
尿道機能が改善することにより、粘膜下の萎縮が緩和されることが期待。

腹圧性、混合性尿失禁の患者130人(男性45人、女性85人)が、
経尿道的超音波ガイド下注入による治療を受けました。
患者の年齢は、36~85歳。
尿道と随意括約筋の形態・機能的変化、QOLを評価。

患者の上腕から小さな骨格筋組織を生検採取し、細胞を培養し、
培養で得られた繊維芽細胞を、コラーゲン2.5mLと混合。

経尿道的超音波プローブと注入器具で、繊維芽細胞を尿道粘膜下に注入。
筋肉の再生のために、筋芽細胞を随意括約筋に直接注入。

130人中111人(女性79人、男性32人)において、
幹細胞の注入後尿失禁の根治に。
この治療により、尿道と随意括約筋の厚さが増し、
随意括約筋の活動性と収縮性が増えました。

残りの患者中17人においては、尿失禁は改善したが、完全には消失せず。

治療後、有意なQOLの改善、本治療法は認容性も良好。
有害事象や合併症は認められなかったです。

Strasser博士は、さらに長期の経過観察にて、
1人の患者において重大な合併症が認められたことについて特に言及。
複数回の手術と放射線治療を過去に受けた男性患者において観察された穿孔。

この手法の有効性は、男性よりも女性においてより良好で、2つの理由が。
尿道が短いため、女性のほうが注入が容易である可能性、
男性では、根治的前立腺全摘術後、瘢痕化などの変化が尿道に起こる可能性。
「女性では、有効性は90%以上である一方、男性では有効性は72-73%」。

治療効果は、永く続くように思われました。
「他の注入療法では、治療効果は即座に現れる一方、
本治療法では、治療の最大効果が得られるまでに約3-4週間かかる」と。
「治療3カ月後に良好な状態となった患者のほとんどは、
その後もその良好な状態が続く。尿禁制が保たれ、パッドが不要である」。

北米においても、同様の手法を評価する研究が、小規模ではあるが行われ、
その結果が、トロント大学(カナダ)のLesley K. Carrらにより報告。
41~66歳の女性6人が、経尿道的、尿道周囲注入法により治療。
患者のうち、1人は6カ月後に再注入。

各患者の骨格筋組織が針生検により採取。
この骨格筋由来の細胞を、培養により分離し増やしました。

小さい(8mm)膀胱鏡用注入針で治療された患者では、
最低1カ月の経過観察後も尿失禁の改善は何ら認められなかったです。
長い(10mm)針を用いて、経尿道的注入を2回、尿道周囲注入を2回行った結果、
4人の患者で改善が認められました。
4人の患者では、QOLの改善も報告。

「注入された筋由来細胞は、新しい筋繊維に分化し、
筋の機能を改善したと考えられる。
この作用の詳細なメカニズムは、依然として研究中である」と。
「最近注入を施行した患者において成功率が高いのは、
注入法を改良した結果かもしれない。」
この研究においても、有害事象は認められず。

バンダービルト大学(テネシー州ナッシュビル)泌尿器科教授である
Roger Dmochowskiは、注入手法や細胞が多様であるため、
「研究結果を相互に比較することが困難になっている」と指摘し、
この手法で認められた結果は「きわめて有望である」と特に言及。

ヨーロッパの複数の施設では、自己骨格筋幹細胞の注入に基づく研究を進め、
複数のより大規模な研究が米国においてもまもなく始まる予定。
Dmochowski博士は、
「尿失禁に対する治療法として、この手法は外科的治療に比べて低侵襲的。
「本治療法は、研究が進み始めれば、急速に実際の臨床に用いられるであろう」。

AUA 2006 Annual Meeting: Abstracts 328 and 1284. Presented May 21, 2006.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29798&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

免疫抑える新たな仕組み アレルギー治療に応用も

(共同通信社 5月29日)

体内に入った異物への攻撃にかかわる免疫細胞の一種、T細胞が
働き過ぎるのを防ぐ新たな仕組みを見つけた、という研究結果を
徳島大の石丸直澄・助教授(口腔病理学)、林良夫・教授(同)らがまとめ、
米科学誌ネイチャー・イムノロジー(電子版)に発表。

この仕組みを標的にすると、T細胞の過剰な活動で起きる
自己免疫疾患やアレルギーの治療薬開発につながる可能性が。

体内に侵入したウイルスなどの異物からの刺激を受け、
T細胞を活性化するよう伝える途中で、
IκBというタンパク質がブレーキ役に。

石丸助教授らは、さまざまな機能を働かなくしたマウスの実験で、
NFκB2というタンパク質も、過剰なT細胞活性化を抑制していることを発見。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29802&categoryId=&sourceType=GENERAL

June 04, 2006

運動直後の大豆ペプチドで成長ホルモンの分泌量が増える

(日経ヘルス 5月26日)

運動直後に大豆ペプチドを摂取すると、血中の成長ホルモン濃度が上昇。
こんな研究成果が、関西鍼灸大学整形外科教授の増田研一助氏によって報告。

成長ホルモンは、睡眠時や運動後に多く分泌されるホルモンで、
骨を伸ばしたり、筋肉を作ったり、脂肪を分解したりする作用が。
10代の思春期をピークに、その後は急速に分泌量が減少。
一方、アミノ酸が複数つながった大豆ペプチドは、
成長ホルモンの材料になる可能性があると考えられています。

増田助教授は、運動直後に材料を供給することで、
成長ホルモンの分泌量が増えるのではないか、との仮説を立て、
20代の若者(18人)と35~44歳の中高年(7人)の2群を対象に調べました。

それぞれの群に運動をしてもらい、直後にプラセボを摂取してもらった場合と、
大豆ペプチド8000mgを摂取してもらった場合の血中成長ホルモン量を
30分後、1時間後、2時間後、18時間後に測定、比較。
その結果、大豆ペプチドを摂取したときは、しない場合より
ホルモン濃度が上がることが確認。
特に若者群では、摂取30分後にピークが訪れ、
大豆ペプチド群はプラセボ群の13倍以上多く分泌されており、有意差あり。

中高年群では、30分後にわずかにプラセボ群より多く分泌された程度だったが、
1時間後にピークが訪れ、プラセボ群の2倍弱の濃度があった(有意差あり)。
18時間後も、濃度自体は下がったものの、プラセボ群より2倍弱の濃度を示しました。
つまり、大豆ペプチドは、成長ホルモンの分泌を促すことが確認され、
年配者の成長ホルモンの減少を補強する可能性も。

従来、大豆ペプチドは筋肉の材料になることから、
運動直後に飲むと速やかな筋肉修復がなされ、
疲労回復が早まるといわれてきました。
今回の研究は、大豆ペプチドが成長ホルモンの材料にもなって、
筋肉の修復や疲労回復にまで寄与する可能性を示しました。

成長ホルモンといえば、肌の弾力を高めてシワを減らすなど、
アンチエイジングにかかわるホルモンとしても注目。
1日のうち、睡眠後に成長ホルモンの分泌が最も活発に。
そのため、「睡眠直前に大豆ペプチドを飲めば、その分泌量を増やすことでき、
アンチエイジング効果も期待できるのではないか」と。

http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf?CID=onair/medwave/a027/426707

理系白書’06:第1部・迫るアジア ものづくり/2 コピー通じて技術流出

(毎日 5月17日)

中国・浙江省のある街。
建物内の見取り図を手にした政府当局者らが、一斉に工場へ。
大手文房具メーカー「ゼブラ」知的財産部の秋山守雄部長は
3年前の秋、違法コピー商品の製造工場の立ち入りに同行。
「当局には前日に協力を求める。情報が漏れるからです」

積まれた段ボール箱に、同社製油性マーカーとそっくりなマーカーがびっしり。
しかし、製品の金型を押収しないと再びコピーを作られてしまいます。

製造のための機械は、窓のように見えた扉の向こうに。
責任者は「我々のオリジナルのマーカーを作っているだけだ」と。
しかし、黒く汚れた床に転がるマーカーの黒いキャップに、「JAPAN」の刻印。
秋山さんが機械のそばの金型を開くと、裏返しの「JAPAN」の文字が。
コピー商品作りの決定的証拠に。

中国は、日本製品のコピーが多く作られる「コピー王国」。
品質が悪ければ、「本物」の信頼性を損ね、品質がよければ営業被害は甚大。

日本貿易振興機構(JETRO)などが05年3月、中国に進出した
日本の製造業150社に聞いたところ、
自社製品のコピーの「被害が深刻」「被害がある」と答えた企業が半数超。
被害額が10億円以上という企業が16%。

ゼブラのマーカーやボールペンは、中国では人気が高い「メード・イン・ジャパン」製品。
同社は技術の流出を防ぐため、中国に今は工場を持たないです。
秋山さんは、「展示会で撮影した写真だけで、そっくりなコピー品を作るようだ」。

放置すれば、さらに深刻な事態が。
ボールペンの先は、特殊金属の棒の内部を加工し、
先端のボールとのすき間からインクを出します。
1マイクロメートル単位の制御が必要な「精密機械」なので、
コピー商品の性能は明らかに劣ります。
ところが業者たちは、粗悪なコピー商品で荒稼ぎした利益を元手に、
日本企業と同じ製造機械や部品を入手し始めました。
性能面でも、技術を身につける可能性が。

しかし、ゼブラのように不正対策に積極的な企業ばかりではない。
経済産業省は03年、日本企業の対策を促そうと「技術流出防止指針」を作成。
「現地雇用の従業員が、誰もいない早朝に資料をコピーする」など、
脇の甘さが目立ったため。
指針では、「流出して困る技術は(海外に)出さない」、
「マニュアルを作り、最高責任者が関与する」など。

指針作りを担当した松下達也さん(現・流通政策課長補佐)は、
「技術流出は『会社の恥』として隠しがち。
全体で失敗を共有しないと被害は防げない」と。

大阪商工会議所は、地場産業の中国進出を支援。
中国ビジネス支援室の藤田法子主任も、企業の意識の低さに危機感。

ある工具メーカーは、意匠権の出願を後回しにしたスキに、
中国の会社に先を越されました。
部品製造業の経営者は中国へ招待され、無料で技術講習会を開講。
藤田さんは、「苦労して作り上げた技術を、黙って中国に渡しているようなもの」。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060517ddm016070159000c.html

May 26, 2006

ゲーム学会設立、学問として地位向上狙う 東大研究者ら

(朝日 5月19日)

テレビやパソコンなどで遊ぶコンピューターゲームを学術的に研究する
「日本デジタルゲーム学会」(会長・馬場章東京大大学院教授)が、
設立総会を開きました。
日本は「ゲーム大国」といわれるが、学術的な研究は海外より遅れています。
学会の旗揚げで、産業界や官公庁との連携を深め、
学問としての地位向上を目指します。

米国や韓国では、ゲームを対象にした文化論や社会学、行動論や
経済効果など多くの書籍や論文が出ています。
国内にも研究者はいるが、研究者が交流する機会は少ない。
「ゲームは、しょせん遊びとの偏見も根強い」(学会事務局)。

学会では、毎月セミナーなどを開くほか、ゲーム研究の国際学会
「DiGRA(デジタル・ゲームス・リサーチ・アソシエーション)」の日本支部として活動。
来年9月には、東京で国際学会を開催する予定。

http://www.asahi.com/science/news/TKY200605190351.html

May 25, 2006

酵素の酸化で発症か アルツハイマー危険予測も

(共同通信社 5月25日)

脳の神経細胞で働く、「PDI」という酵素の活性が酸化により低下すると、
パーキンソン病やアルツハイマー病などの発症につながる可能性が。
北海道大の上原孝・助教授(薬理学)らが英科学誌ネイチャーに発表。

この酵素を調べれば、発症の危険性が予測でき、
予防や早期診断に役立つ可能性が。

この酵素は細胞の小胞体にあり、タンパク質ができる際にひも状の分子を
正しい形に折り畳んだり、壊れたタンパク質を修復したりする働きを持つ。

正常な細胞と、酵素の一部が酸化した細胞を低酸素状態で比較。
正常細胞は、酵素が働いて死ななかったが、酸化した酵素は活性が低下し、
細胞が死ぬことが分かりました。

一方、遺伝性でない孤発性のパーキンソン病やアルツハイマー病などで
死亡した患者の脳を調べたところ、この酵素が酸化。
酵素の活性低下で、細胞内に変性したタンパク質が蓄積するのを防げずに
細胞が死に、発症につながると。

上原助教授は、「体に悪いと言われる酸化ストレスは、
PDIを標的の1つとしていることが分かった。なぜ酸化するか調べたい」と。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29751&categoryId=&sourceType=GENERAL

May 24, 2006

カロリー制限が長寿のバイオマーカーを改善する可能性

(Medscape Medical News 4月4日)

カロリー制限は、長寿のバイオマーカーを改善する、という結果を発表。
ただし、著者らはより長期間の試験を奨励。

ペニントン生物医学研究センター、ルイジアナ州立大学(バトンルージュ)の
Leonie K. Heilbronnと、Comprehensive Assessment of Long-term Effects of
Reducing Intake of Energy(CALERIE)研究班は、
「長期のカロリー制限は、げっ歯類の寿命を延ばす」と。
「長期のカロリー制限が、長寿のバイオマーカーや酸化ストレスのマーカーに
影響するかどうか、減少した代謝に関わる重量から予測される以上に
代謝率を下げるかどうかについては、これまでにヒトで検討されていない」。

健常かつ非活動的な男女48例が、4群のいずれか1群に無作為に割り付け。
対照群(体重維持食)、
カロリー制限群(試験開始時のエネルギー要求量に対し25%のカロリー制限)、
カロリー制限・運動併用群(25%のカロリー制限+運動による12.5%の消費量増大)、
超低カロリー食群(体重が15%減少するまで890 kcal/日、その後は体重維持食)、
これを6カ月間継続。
試験開始時では、被験者の肥満指数(BMI)は25-30 kg/m2。
評価項目は、体組成、長寿のバイオマーカーとして
硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、ブドウ糖、体温、インスリン濃度、
酸化ストレスのマーカーとして、
活性酸素による蛋白質酸化の指標である蛋白質カルボニル濃度、DNA損傷、
24時間エネルギー消費量。

6カ月の平均体重変化量は、対照群 -1.0±1.1%、カロリー制限群 -10.4±0.9%、
カロリー制限・運動併用群 -10.0±0.8%、超低カロリー食群 -13.9±0.7%。
空腹時インスリン濃度は、三つの介入群いずれも、6カ月目までに低下。
しかし、DHEAS濃度とブドウ糖濃度は変化せず。
中心体温は、カロリー制限群、カロリー制限・運動併用群で低下。

補正後の非活動的な24時間エネルギー消費量は、対照群では変化しなかったが、
カロリー制限群(-135±42kcal/日)、カロリー制限・運動併用群(-117± 52 kcal/日)、
超低カロリー食群(-125±35kcal/日)では減少。
介入群における「代謝の適応」、即ち24時間エネルギー消費量について、
対照群との間に有意差。
これらの変化は、代謝に関わる重量の減少からの予測値と比較して、約6%大きい。
蛋白質カルボニル濃度は、いずれの群でも変化なし。
DNA損傷は、全介入群で減少。

「今回の知見は、ヒトでは長寿のバイオマーカーである2項目
(空腹時インスリン濃度、体温)が長期のカロリー制限で低下することを示唆し、
代謝ボディマスに基づく期待値以上に代謝率が下がるという説を支持」と。
「カロリー制限が、ヒトの老化プロセスを減退させるかどうかを明らかにするには、
より長期の試験が必要である」。

ワシントン大学医学部(ミズーリ州セントルイス)のLuigi Fontanaが、
CALERIE試験のデザイン上の限界をいくつか指摘。
この試験の実施期間は短く、血清中DHEAS、ブドウ糖濃度のような
長寿のバイオマーカーの変化を検出するためには不十分。しかも被験者数が少ない。

Fontana博士は、「DNA配列・蛋白質・代謝物質の網羅的解析の手法を利用し、
カロリー制限の組織に特異的な効果を測定することは、
カロリー制限の老化防止効果に関する複雑な生物学的プロセスの解明を進める。
多くの人が、カロリー制限食を取り入れるとは考えにくい。
しかし、これらの試験は、ヒトにおいて可能性のある老化のメカニズムを示し、
老化の影響を減らすための介入のポイントを示している。
長寿を司るメカニズムの解明が進めば、慢性疾患の年齢依存性を理解する上で
大きな進展が得られ、高齢者のQOL(生活の質)の改善に役立つ」。

JAMA. 2006;295:1539-1548, 1577-1578
「calorie_restriction.pdf」をダウンロード

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29104&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

May 21, 2006

理系白書’06:第1部・迫るアジア ものづくり/1 日本去る技術者

(毎日 5月10日)

日本のお家芸である「ものづくり」が、アジアの急追によって様変わり。
国境を超えたヒトやモノの移動を通して、日本が培ってきた技術が
アジア各国に流れ、分野によっては日本をしのぐ存在感を示し始めています。
戦後、欧米から技術を学び、驚異的な発展をとげた日本。
その歴史が、アジアを舞台に繰り返されようとしています。

「エンジニアとして当たり前の夢が、見られなくなってしまった」
上海に本社を置く半導体受託生産会社
「中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)」で、メモリー技術開発センターの
シニアディレクターを務める三重野文健さんは02年10月、
21年間勤めた富士通を退職し、中国へ。

富士通に入社したのは81年。
チームの手足となって働き、連日の徹夜仕事も苦ではない。
「いつかはリーダーとなって、新技術を開発したい」。
そんな夢が日々を支えてくれました。
当時の半導体産業は「強いニッポン」の象徴。
技術者たちは、昨日より今日、今日よりも明日へとつながる未来を見つめていたはず。

ところが90年代、半導体不況が日本を襲う。
富士通でもコスト削減やリストラで、技術開発への資金投入は後回しに。
「企業に余裕がなくなり、積極的な経営ができなくなっていた。
管理職ばかり増えて、会社は硬直化していた」と。

転機は01年に。
富士通がSMICに生産委託することになり、三重野さんは富士通側のリーダーに。
SMICは、前年に創業したばかりの若い会社。
三重野さんは「活気と将来性にワクワクした。『違う』と肌で感じた」と。
80年代の日本の勢いを思わせる一方で、事業展開のスピードに舌を巻きました。

世界に通用するトップレベルの半導体経営を学べるかもしれない。
そんな期待がふくらみ、翌年、SMICへ転職。
45歳。国外に飛び出すことに迷いはない。家族も支えてくれました。

現在は、携帯電話に使われる大規模集積回路(LSI)を製造するチームを牽引。
部下は62人。若い技術者たちの貪欲な要求に応える日々。
技術水準では、中国は日本の10年前のレベルに達したところだが、
猛烈なスピードで追い上げていると。
とりわけ、リーダーの決断が速く、経営方針にすぐに反映。
「半導体は生もの。価格も顧客も変わる。情報も決断も、速ければ速いほど良い」

転職前に比べて、仕事の幅も広がりました。
「歩く広告塔」となって顧客に直接技術を売り込む。経営についても学ぶことが多い。

SMICで働く日本人は、上海や北京などに10人以上。
日本で半導体産業に携わっていた30~40代の技術者たち。
こうして日本を去る技術者がどのくらいいるのか、公式な統計はない。

日本人のアジア就職を支援する「パソナグローバル」の畑伴子社長は、
「日本企業がアジアに生産拠点を移し出した01年ごろから、
国内で活躍の場を失った技術者がアジアを目指し始めた」と。
登録した日本人技術者は、02年度には前年度の倍の470人に。

就職先は、現地の日系企業が多いものの、近年は中国、台湾、香港資本の企業が
日本人の技術と日本語の能力に期待して、採用意欲を強めています。
SMICはその典型。

一方で技術者の移動は、貴重な技術やノウハウの流出に。
経済産業省は「海外で教えることは技術者の志向としては自然」としながらも、
それによって日本の産業競争力が弱まることを懸念。
ある業界団体の幹部は、「技術は先輩たちが何十年もかけて築いてきたもの。
なのに『おれの技術だから好きにしていい』と言えるだろうか」と批判的。

こうした見方を、三重野さんは否定。
「技術は人だ。自由競争の世の中で、人の動きは止められない。
世界の半導体は、各国で補い合い、利用し合いながら共存共栄することが必要。
私たちが世界と日本の半導体産業の懸け橋になると信じています」

◇米韓に主導権奪われた半導体--もたつく「日の丸構想」

「産業のコメ」と呼ばれ日本の成長に貢献してきた半導体産業は、
今では米国や韓国に主導権を奪われています。

半導体売上高の世界ランキング(米ガートナー・データクエスト調べ)によると、
最盛期の88年にはNEC、東芝、日立製作所と日本勢がトップ3。
しかし、05年にはインテル(米)、サムスン電子(韓国)、テキサスインスツルメンツ(米)
が上位を占め、日本企業の名前はない。

転換期は、90年代前半。
需要の伸び悩みに対応するため、日本企業が横並びで生産調整に入る一方、
サムスンをはじめとする米韓の企業が巨額の設備投資を断行。
その直後に半導体の需要が急拡大し、日本は米韓に先んじられました。

05年は、携帯電話などに使われるフラッシュメモリーの需要増によって
東芝が4位まで巻き返したが、上位3社も急成長したため、差は広がりました。

日本では現在、メーカーが団結して次世代半導体開発を目指す
「日の丸半導体」構想が進んでいます。
経済産業省も支援するこの国家戦略も、枠組み作りをめぐる企業の主導権争いなどで、
始動段階からもたついています。

迎え撃つ形の韓国では、「設備投資などの経営判断にはトップダウンが不可欠だが、
『日の丸半導体』構想は寄り合い。責任の所在が不明確で、うまくいくとは思えない」と。
………………………………………………………………………………………………………
◇流出、損失ではなく国際貢献--外資系5社の社外取締役・川西剛氏

技術者の最大のやりがいは、「自己実現」。給料はその次。
自分の能力を認めてもらい、活用してもらうことが最大の幸福。
その幸福を日本で得られないとすれば、彼らがサムスンに行ったとしても
責めることはできません。

技術に垣根はありません。
日本の半導体技術もアメリカから教わったもの。
私も55年前、欧米から教わって、半導体を日本の技術に育てる手伝いを。
それが今、アジアに流れることがいけないことか。

日本は島国で資源がないから、何をするにも一国ではできない。
グローバルに考えるべきです。自国だけが栄えるというシナリオはないのです。
流出を恐れて狭い視野で束縛するよりも、柔軟に構えた方が国際社会に貢献できる。
これが私の実感です。

例えば野球。
名選手が次々と大リーグに行ったことは一時的には損失だが、
彼らは損失を上回るものを与えてくれました。
日本の存在感を世界に広め、選手も何かを得て戻ってくるでしょう。
技術者も世界で認められているから出て行くのだと見た方がいい。

シンガポールで、私が国立マイクロエレクトロニクス研究所の会長をしていたころ、
日本のある大企業の会長と、当時のリー・クアンユー上級首相にお会いしました。
日本の会長が、「この研究所は日本人が会長、その下にアメリカ人、
スタッフも10カ国から。技術は宝なのに、
こんな多国籍で先端技術が流出するのでは」と尋ねた。
リー氏は平然と「流出しますよ。でもそれ以上に入ってくる」と。

既存の技術が出て行くのは止められません。
それを損失と考えず、出て行った分、技術革新を生み出せばいいのです。
………………………………………………………………………………………………………
◇SMIC

台湾系米国人のリチャード・チャン氏が2000年、上海で創業。
国内外の半導体メーカーの製品の受託生産が主で、日本企業とも取引。
天津、北京、四川省成都など計11カ所に工場があり、
05年売上高は11億7130万ドル。従業員数は9307人(06年4月末現在)。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060510ddm016070083000c.html

May 20, 2006

「学生の発明」奨励へ 特許費用の減免対象に

(河北新報 5月11日)

総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)の知的財産戦略専門調査会は、
法律で教授と助教授など職員だけに認められている
特許に関する費用の一部を半額にする制度を、
大学院生や博士課程を修了したポストドクター(ポスドク)にも拡大して認める方針。

学生やポスドクも、発明者の一員として認定しやすい制度にし、
研究活動を活発化させるのが狙い。
1件約17万円の審査請求料や、特許を維持するため毎年支払う費用の
最初の3年分(計2600円)などが対象に。

今月下旬の本会議で正式に決定し、
経済産業省が産業技術力強化法の改正案をまとめ、次期国会の提出へ。

http://www.kahoku.co.jp/news/2006/05/2006051101003390.htm

May 18, 2006

酵素が過剰免疫を抑制 東京医科歯科大グループ

(共同通信社 5月15日)

細胞増殖や発がんなどに関与しているとされる「Pin1」という酵素に、
自己免疫疾患でみられる異常な炎症反応などの原因となる
過剰な免疫反応を抑える作用があることが分かったと、
東京医科歯科大の山岡昇司・助教授(ウイルス制御学)らが、
ネイチャーイムノロジー(電子版)に発表。

ウイルスや細菌が体内に侵入すると、
体内で1型インターフェロンがつくられ病原体の増殖を抑えます。
しかし1型インターフェロンが多すぎると、免疫反応がうまく調節できず、
自己免疫疾患などにつながると考えられています。

Pin1がないマウスを使った実験で、
Pin1に、1型インターフェロンがつくられるのを抑制する
強い作用があることを突き止めました。

山岡助教授は、「人間にもあるPin1の働きを調節できれば、
免疫反応の異常による病気の治療法につながる可能性がある」と。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29578&categoryId=&sourceType=GENERAL

細胞内を生きたまま観察 新開発の顕微鏡で謎解明

(共同通信社 5月15日)

細胞内のごく細かい現象を、生きたまま観察できる光学顕微鏡を、
理化学研究所の中野明彦・主任研究員らが開発、この顕微鏡を使って、
細胞小器官ゴルジ体が、タンパク質の性質を変える仕組みを解明。
英科学誌ネイチャーの電子版に発表。

中野さんらは、横河電機のレーザー顕微鏡と、
NHKや日立国際電気が持つ超高感度カメラの技術を組み合わせ、
100ナノメートル(ナノは10億分の1)の対象物を、
100分の1秒間隔で立体的に撮影できるシステムを開発。

従来の光学顕微鏡より、感度と撮影速度が100倍以上も向上し、
光学顕微鏡の限界とされていた最高分解能200ナノメートルの壁を破ったと。
電子顕微鏡は、5ナノメートル程度まで見分けられるが、
細胞が生きた状態では見られないです。

ゴルジ体は、細胞内で合成されたタンパク質を取り込んでその性質を変え、
細胞膜などの目的地にきちんと運ばれるようにする役割を担う。
数種類の袋から成るが、タンパク質が袋から袋へと移りながら変化するのか、
最初に取り込まれた袋自体が変わることでタンパク質の性質が変化するのかは
分かっていなかったです。

中野さんらは、酵母細胞のゴルジ体の袋に蛍光物質を付けて色の変化を観察。
袋自体が変化することを突き止めました。
「この顕微鏡で、病原体が細胞に感染する様子や、
薬物が細胞内で作用する過程が見えるようになると期待できる」と。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29579&categoryId=&sourceType=GENERAL

切断酵素でHIV消滅 細胞実験、実用化には課題

(共同通信社 5月17日)

エイズウイルス(HIV)の増殖に必要なリボ核酸(RNA)を
切断する酵素を使い、感染した細胞中のウイルスを消滅させ、
細胞死を誘導したとの実験結果を、タカラバイオが発表。

この酵素は、ウイルスや感染細胞以外のRNAも切断するため、
生体内で特定の標的だけを狙う方法など実用化には課題があり、
同社は今後、動物実験を進めます。

特定の塩基配列を認識し、RNAを切断する酵素を見つけたとして研究を進め、
そのうちの1つ、大腸菌の毒素タンパク質「MazF」で実験。

HIVが感染しやすいT細胞という免疫細胞に、
このタンパク質の遺伝子を組み込み、感染するとタンパク質ができるように。
これにウイルスを感染させると、2-3週間後にウイルスと細胞は消滅。
増殖過程のメッセンジャーRNAを切断。

研究結果は、8月に東京で開かれる日本遺伝子治療学会で発表。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29631&categoryId=&sourceType=GENERAL

May 17, 2006

遺伝子で肥満リスクを予測

(WebMD Medical News 4月11日)

ジーンズが体にフィットするかどうかは、遺伝子(ジーンズ)次第かも?!

三つの特異的遺伝子の作用によって、脂肪細胞の数と、
脂肪細胞がリンゴ型に蓄積するか洋ナシ型に蓄積するかが決定されます。
ハーバード大学ジョスリン糖尿病センターとライプチヒ大学の研究者らによって報告。

ジョスリン糖尿病センター長でハーバード大学教授のC. Ronald Kahnは、
「その人の肥満度や体脂肪の分布様式は遺伝子で判る」と。
『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載。

Kahn博士らは、新しい遺伝子チップ技術を用いて、
腹部脂肪(疾患と関連する種類の脂肪)と皮下脂肪で発現している
遺伝子と遺伝子活性を調べました。
Kahn博士らは、マウスの研究から着手し、さらにヒトでの研究へ。

約200人から脂肪の標本を採取。
標準体重の人もいたが、肥満または高度の肥満を呈している人も。
殿部および大腿(皮下)に脂肪が蓄積する、洋ナシ型の脂肪蓄積は、
健康上の問題とはほとんど関連がみられませんでした。
胴体(腹部)に脂肪が蓄積する、リンゴ型の脂肪蓄積は、
糖尿病、卒中発作、心疾患と関連。

体に蓄積する脂肪の量と脂肪が集積する場所に、
大きな影響を及ぼす三つの遺伝子を同定。
T-box 15(Tbx15)、グリピカン4(Gpc4)、ホメオボックスA5(HoxA5)は、
胚の初期発生において非常に重要で、
体の形態、顔面の形態形成、骨格の発達に大きな役割を果たします。

「体の異なる領域に由来する[脂肪細胞および脂肪細胞になる細胞]の発現レベルが、
複数の発生遺伝子で劇的に異なることが明らか」と。
「ヒトの[脂肪]におけるHoxA5、Gpc4、Tbx15の発現の最も顕著な特徴のひとつは、
これらが[異なる脂肪沈着に異なる作用レベルを示す]だけでなく、
肥満度指数(BMI)と強い相関を示すこと」。

肥満になるかどうかの決定に、これらの遺伝子が大きな役割を果たしていることを示唆。

遺伝子は宿命であろうか?
大部分の科学者は、必ずしもそうとは考えていないです。
ライフスタイルなどの環境因子が、遺伝子活性に影響します。
しかし、Kahn博士によれば、肥満遺伝子の指令を変更できるかどうかが
判明するのはまだ先のこと。
「現段階では、肥満のパターンは予測できるが、
その転帰を変えるだけの特効薬は存在しない」と。
「今回の新しい知見を用いて、いつの日にか体型を変えるための有望な標的を同定。
現段階では肥満のパターンを変える薬剤はないが、
おそらくいずれははそうした薬剤ができるであろう」。

Evidence for a role of developmental genes in the origin of obesity and body fat distribution -PNAS. Published online before print April 14, 2006
「obesity_body_fat_distribution.pdf」をダウンロード

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29191&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

May 12, 2006

軟骨の病的な骨化を抑制 マウスの特定タンパク質

(共同通信社 5月8日)

軟骨が骨になる「骨化」を促すタンパク質カーミネリンの働きを抑えると、
変形性関節症による軟骨の病的な骨化を抑制できるとするマウスでの実験結果を、
東京大医学部の川口浩助教授らが、米医学誌ネイチャー・メディシンに発表。
正常な骨化には影響しないという。

軟骨の骨化は、骨の成長や骨折の治癒の際に起きる正常な現象。
関節の軟骨が変性する変形性関節症の患者では、
関節の周りで病的な骨化が起きて痛み、まひの原因となり、高齢者で大きな問題。

カーミネリンや同様の物質が人で見つかれば、治療法開発につながる可能性が。

研究グループは、マウスの耳の軟骨から骨化を促進するカーミネリンを発見、
遺伝子操作でカーミネリンができないマウスを作成。
変形性関節症が起きやすくしたマウスでは、軟骨の病的な骨化が抑えられました。
一方、健康な状態で育てたマウスでは、骨化が抑制されることもなく、正常な骨に成長。

川口助教授は、「病的な骨化だけを制御するメカニズムを解明し、
対症療法しかない変形性関節症の治療法の開発につなげたい」と。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=29466

インスリン分泌の謎解明 糖尿病治療の手掛かりに

(共同通信社 5月8日)

血糖値が上がると、膵臓の細胞がインスリンを分泌する新たなメカニズムを、
自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンターの富永真琴教授らが発見、
欧州分子生物学機構雑誌に発表。

インスリンを分泌する膵臓のベータ細胞で、
ブドウ糖からできる「環状ADPリボース」という物質が、
細胞膜の「扉」の役目をするタンパク質に体温下で結び付くと扉が開き、
インスリン分泌が始まる仕組み。
インスリン分泌に異常があって起こる糖尿病の治療法開発に役立ちそう。

ベータ細胞では、これまで「カリウムチャンネル」という別の仕組みがスイッチに
なってカルシウムイオンが取り込まれるとインスリンを分泌。
しかし、マウスを遺伝子操作してこのチャンネルを働かなくしても、
深刻な糖尿病にはならず、別の仕組みがあるとみられていました。

富永教授らは、カリウムチャンネルとは別に、ベータ細胞の膜に
「TRPチャンネル」というタンパク質の一種「M2」があることを発見。
M2は、温度が35度以上で環状ADPリボースと結合すると開き、
細胞内にカルシウムイオンを通してインスリン分泌を促します。

富永教授は、「M2のないマウスで実験し、糖尿病の治療法を探りたい。
M2は脳や骨髄、肺にもあり、そこでの働きも調べたい」と。

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29483&categoryId=&sourceType=GENERAL

慢性疲労症候群に遺伝子が関連?

(WebMD Medical News 4月27日)

疲労、慢性疼痛、記憶障害をはじめとするこの疾患の症状と
身体がストレスにどう対処するかを左右する、
遺伝的要因を関連付ける遺伝的証拠が。

特に、CFSの症状がある人は、
疾患の不快な症状を引き起こす可能性がある人生で起こるライフイベント、
外傷、感染症によるストレスに対する反応を変化させる遺伝的要因を有する
という証拠を見出しました。

この研究は、慢性疲労症候群の診断の改善またはこの疾患の特異的な側面に
対する治療への第一歩である、と。

●症候群の生物学的基盤
Julie M. Gerberding・CDC所長は、
「慢性疲労症候群に生物学的基盤があるという、まさに最初の信憑性のある証拠」。

研究結果は、『Pharmacogenomics』4月号に掲載。
この研究を実施に、CDCの研究者らはウィチタ(カンザス州)の成人277例から
得られたデータを詳しく解析。
研究には慢性疲労症候群患者に加えて、慢性疲労症候群に罹患していない人も含まれた。
被験者は、疼痛閾値、記憶機能、睡眠の質、ストレス反応のスクリーニングなど、一連の臨床検査、精神医学的検査、精神機能検査を受けた。また、約20,000の遺伝的要因の解析を行った。

情報は、その後、チームに分かれて一緒に研究に取り組んでいる20名の研究者に伝えられ、慢性疲労症候群の生物学的基盤を調べるデータの解析・解釈が行われた。

CFSに明らかな生物学的基盤があるという遺伝的結果がさまざまな臨床検査で得られた、とCDCの研究者であるSuzanne D. Vernon氏は述べた。

慢性疲労症候群「患者の分子プロファイルがわれわれの行った研究によって作成されようとしている」と、Vernon 氏は述べた。

将来に目を向ける

これらの知見にもかかわらず、この研究には複数の問題が残されている。まず、研究者らは、各遺伝的要因がどの程度慢性疲労症候群に影響を及ぼすかを確認することができなかったほか、慢性疲労症候群に罹患していない人が同じ遺伝的要因を有するか否かを確認することができなかった。

次に、慢性疲労症候群は、身体的検査や特別な血液検査の特定の変化ではなく、症状によって診断される疾患であり、科学者は引き続きこの疾患を有する患者を示唆する遺伝子プロファイルを正確に定義するのに苦労するであろう。

それでもなお、結果は、薬剤開発者が慢性疲労症候群に関連する特定の生理的障害に対する薬剤に的を絞るのに有用であると考えられると、Vernon氏は述べた。また、遺伝子検査に一部基づいて、医師が患者に有効な治療を判断するのに有用であると考えられる。

ジョージア州の別の患者集団を対象としてこれらの知見の再現性を追証しようという試みが規制当局によってすでに始められている、とCDCの科学者であるWilliam Reeves氏は述べた。

今や問題は、「完全に独立した患者集団において結果の再現性を実証できるかどうか」である、と同氏は述べた。

Vernon, S. Pharmacogenomics, April 2006; vol 7: pp 345-354. Julie M. Gerberding, director, CDC. Suzanne Vernon, CDC. William Reeves, CDC.

May 11, 2006

ヘビ型ロボットで人命救助 米学者らが研究

(CNN 4月23日)

くねくねとしたヘビの姿には、嫌悪感や恐怖感を覚える人が多いが、
米カーネギーメロン大では今、災害時などの人命救助のため、
ヘビの動きを手本にしたロボットの開発が進められています。

同大のハウイ・チョセット教授は、チームが開発しているのは、
がれきの間を縫うように動き回り、下敷きとなった生存者らを捜索するロボット。
「今の捜索作業では、がれきを1つ1つ取り除くしか方法がなく、
長い時間がかかってしまう。一方ヘビ型ロボットは、直ちにがれきの下に潜り込み、
捜索を開始することができる。岩やがれきを動かすことで
生存者を傷付けてしまう心配もない」と説明。

ヘビ型ロボットは、カメラとセンサーを搭載し、小型モーターで動く。
人間の腕ほどの大きさで、材質は軽量アルミやプラスチック。
操縦かんのような装置で、遠隔操作が可能。
ヘビのようにすき間を探り、やぶやフェンスなどの障害物も通り抜けて進む。
チームでは、ロボットに排水管のようなパイプの内部や外側を
這い上らせる実験に成功。

ただし、「ロボットはより良い道具にすぎない」というのが、チョセット教授の持論。
「すべては操作する救助隊員にかかっている。現場の英雄はかれらだ」と強調。

インターネット上で、ロボット業界の情報などを配信する
ロボティック・トレンド社のダン・カラ社長によると、
ヘビ型のロボットはほかの大学などでも開発されているが、
「パイプを上るロボットは初めて」だという。
連邦緊急事態管理局(FEMA)の捜索チームを率いるサム・ストーバー氏も、
「大型ハリケーン『カトリーナ』の被災地にヘビ型ロボットがあれば、
捜索作業に役立ったはず」と、チームの発想を評価。

チョセット教授によると、ロボットが実用化される時期は
「研究資金次第」だが、あと5-10年はかかる見通し。

http://cnn.co.jp/science/CNN200604230004.html

May 10, 2006

理系白書:思わず熱中!?研究者版「人生ゲーム」 成功つかめるか

(毎日 5月3日)

理系研究者の人生を疑似体験するゲームを、人工知能学会などが作成。
研究に打ち込むだけではなく、人脈や研究資金を獲得し、目標の研究者像に近づく、
人気の「人生ゲーム」(タカラトミー)の研究者版。
志望学生でも分かりづらい研究者の人生を、ゲームを通じてのぞいてみました。

ゲームの名前は、「幸福な研究人生に至る道」。
3~5人の参加者が、サイコロを振ってボード上の駒を進めるすごろく方式。
止まったところの「チャンス」「学会」「資金」「プライベート」などのカードを引いて、
資金や人脈、学内ポイントをため、手持ちの研究時間に応じて論文を投稿。
チャンスがあれば、助手から教授に昇進し、ゴールを目指す。

特徴は、お金ではなく時間がゲームの鍵を握ることと、ゴールが一つではないこと。

参加者は、一般の研究者の3カ月分に当たる研究時間の600時間を持ってスタート。
学会出席で50時間減、大学の広報活動で100時間減など
各種の活動で持ち時間は減る。
一方で、学会に出れば人脈ポイントが、大学の広報活動が評価されれば
学内ポイントがアップ。
「失恋して何も進まなくなり研究時間が100時間減る」など、プライベートも影響。

ゴールは、七つのタイプから、参加者が最初に自分の目指す研究者像を選ぶ。
研究者志望の学生を育て上げる「教育者型」、
一定レベルの論文を多く出す「業績量産型」、
少数でも最高レベルの論文を出す「業績卓越型」、
広報・入試など大学で評価を得る「学内政治型」、
ポスドクを雇わず多くの業績をあげる「悠々自適型」、
ポスドクを3人以上雇う「組織研究型」、
研究テーマも人脈も広い「学術社会型」。

肝心の論文投稿は、研究時間が重要な「基礎」から、
資金が重要な「応用」の6分野があり、レベルも5段階。
それぞれに必要な資金と時間をたくわえて投稿し、論文採否カードを引く。
「採録」「不採録」のほか、研究時間をさらに300時間かけねばならない「照会」など。

資金の入手先も、国の科研費や大学の研究費、財団の助成などいろいろ。
研究室を構成する「ポスドク」に優秀な人材を雇えば、
チームの研究時間を自分の持ち時間に加算。
最終的には、自分の目指した研究者像の条件を達成した参加者が上がり。

ゲームを共同制作した若手研究者でつくる「研究人生を楽しむ会」の一人、
産業技術総合研究所の太田正幸さんは、
「学生時代は研究者の生活が分からなかった。あの時分かっていたら、
と思うことは多い。その思いを込めました」と。

同会HP http://academiclife.jp/

◇評価軸は多様だ

「研究者人生双六講義」(岩波書店)を出版した
理化学研究所脳科学総合研究センターの入来篤史チームリーダーの話

文系学生に対する就職指導が、研究の道を志す理系学生にないのは事実。
理由は、研究はマニュアル化できないから。
逆に、マニュアル化した指導をすれば、「研究従事者」は生まれても
「研究者」は育たないだろう。
ゲームでも工夫されているように、研究者人生の評価軸はたくさんあります。
「他人と違う」のが研究者。
教授になるのが上がりの条件ではなく、研究者人生にゴールはない。
==============
ポスドク

ポストドクターの略、博士号取得後、常勤(終身)の職についていない研究者。
多くは、3~5年の任期付き研究員として働く。
政府は、第1期科学技術基本計画(96~00年度)の中で、
「ポストドクター等1万人支援計画」を実施。
急増したが、大学や研究所の職は増えていない。

論文投稿

研究者は、研究成果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿して発表。
論文は、その分野の研究者の査読者らが審査し、採録か不採録かを決めたり
手直しを求めたりします。投稿から印刷までは約1年間かかります。

学会発表

研究成果を発表する公の場。
国際学会の場合は通常、英語で発表。
同じ分野の研究者から評価を受けるだけではなく、人脈を築く良い機会。

科研費

科学研究費補助金。
国が交付する公募制の研究費で、大学などの研究活動の基盤に。
今年度の配分状況によると、配分額の7割を国立大が占め、
採択件数上位に東京大、京都大などの旧帝大が。
将来性よりも、過去の業績が審査に影響する傾向が強い。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060503ddm016040175000c.html

May 09, 2006

小泉首相、「野口英世賞」の創設を表明

(日経 5月3日)

ガーナを訪問中の小泉純一郎首相は、
アフリカで活躍する医療関係者の業績をたたえるため、
「野口英世賞」を創設すると発表。
ガーナが、野口英世博士が死去した地であることにちなみ、
首相がガーナのクフォー大統領との首脳会談でこの構想を説明。
両首脳は、今後具体的な中身を詰め、2008年に1回目の授賞式を開く。

首相は、首脳会談後の記者会見で
「ノーベル賞に劣らないものとしたい。アフリカ全体の医療研究、医学で
功績のある方への授賞を考えている」と。
クフォー氏は、「首相のアイデアに賛成する」と、
国籍を問わず、アフリカで活動している人物を選考対象にしたい考えを示しました。

http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060503AT3K0200M02052006.html

地中海ダイエットによって、アルツハイマー病の発症リスクが低下する可能性あり

(Medscape Medical News 4月18日)

地中海ダイエット(MeDi)に関する指示の順守度は、
アルツハイマー病(AD)発症リスクの低下と関連するという、
プロスペクティブ(前向き)研究の結果が、
『Annals of Neurology』オンライン速報版で発表。

コロンビア大学医療センターのNikolaos Scarmeasらは、
「ADの先行研究では、個々の食物成分に焦点を合わせていた」
「MeDiのような複合食事パターンが、心臓血管疾患、数種類の癌、総死亡率の
リスク低下と関連するというエビデンスが。
われわれは、MeDiとADリスクとの関連を検討することを目指した」。

ニューヨークの地域集団をベースに、認知症ではない2,258例の被験者について、
1.5年おきにプロスペクティブに評価。
コホート、年齢、性別、人種、学歴、アポリポ蛋白(APOE)遺伝子型、カロリー摂取量、
喫煙、共存症インデックス、BMIについて調整したところ、
MeDiの順守度(0-9のスコア、スコアが高いほど指示順守度が高い)が、
主要な予測因子に。
平均追跡調査期間は、4±3.0年(範囲 0.2-13.9年)。

追跡調査期間中に、262例がADを発症。
MeDiの順守度が高いことは、ADのリスクが低いことと関連(ハザード比[HR] 0.91)。
MeDiの順守度に基づいて被験者を3分割したところ、
下位群と比較して、中位群のADのHRは、0.85、上位群のHRは、0.60。

「MeDiの順守度が高いことが、ADリスクの低下と関連する。
MeDi順守度の上位ほど、ADリスクが次第に低下したことから、
用量・反応効果の可能性も示唆。
この結果は、MeDiの効果が、異なる集団でも可能であるという説を支持する」。

本研究の限界には、推測的な分布から算出したMeDiスコアを使用したこと、
精度の限界のため、食物曝露の分類を誤った可能性があること、
食事が、社会経済的地位や良好な健康、低いADリスクに関連する
その他の習慣に関連する可能性があること、
MeDi順守度が低いことは、ADの原因ではなく結果であった可能性があること。

「MeDiは、ADの病因である酸化ストレスと炎症を含む、複数のメカニズムに
関与する可能性がある。複合フェノール、抗酸化特性を有するビタミンCやE、
カロチノイドのような多くの物質が、MeDiの典型的要素の中に高濃度で含まれている。」

Ann Neurol. Posted online April 18, 2006.

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29326&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY

May 08, 2006

脳細胞:東大チーム、生死のかぎ解明 たんぱく質「KIF4」関与

(毎日 4月21日)

年齢とともに脳細胞は減るが、頭をよく使うと脳細胞が死なないのはなぜか?
このメカニズムを解明することに、
東京大の緑川良介特別研究員と広川信隆教授らが成功。
脳細胞が死ぬのを食い止めたり、神経の再生が可能になるかもしれない。
米科学誌「セル」で発表。

広川教授らは、細胞内で物質を運ぶ「KIF4」というたんぱく質に着目し、
マウスなどで調べました。
あまり使われない神経細胞では、
損傷した遺伝子の修復にかかわる酵素「PARP1」と結合し、
細胞死を導くことが分かりました。
一方、よく使う神経細胞では、細胞の活動によりカルシウムが多く流れ込み、
酵素が変形(リン酸化)してKIF4と結合しないため細胞死を免れていました。

広川教授は、「神経細胞の生死の鍵はKIF4が握っていることが分かった。
細胞内の“運び屋”という本来の役割とは違う機能は驚きだ」と。

◇思いもよらぬ発見--長田重一・大阪大教授(生化学)の話

思いもよらない発見。今回は神経細胞だが、リンパ球など他の細胞ではどうか?
この結果、何が起きているのか調べていくことで応用面にもつながるでしょう。

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060421ddm003040043000c.html

April 26, 2006

敗血症の完治、マウスで成功 理研チーム

(朝日 4月21日)

細菌などが血液中で増殖する重い感染症で、治療が難しい敗血症の完治に、
理化学研究所の研究チームがマウスで成功。
白血球細胞の一種の働きを利用した新たな治療法で、
敗血症以外の細菌感染による炎症抑制への応用も期待。
米科学誌ブラッド電子版で発表。

敗血症は、血液を介して全身に広がった細菌に
白血球が過剰に反応し、炎症を引き起こします。
新生児や高齢者、手術後の患者ら免疫力が低下している人に多く、
重いと死に至ることも。

理研・樹状細胞機能研究チームリーダーの佐藤克明さんらは、
白血球の大部分が炎症を引き起こすたんぱく質を作るのに対し、
同じ白血球の一種でも樹状細胞の一部には、
炎症を抑える機能を持つものがあることに着目。
敗血症にかかったマウスの腹部や静脈にこの細胞を注射すると、
炎症が治まることを確認。

佐藤さんは、この樹状細胞が特に多く作るたんぱく質「インターロイキン10」が、
ほかの白血球細胞による炎症性たんぱく質の産出を抑えていると説明。
樹状細胞は1~2日で消えるため、ほかの免疫機能に悪影響は及ぼさない。
試験管の実験では、人間の樹状細胞にも同じ働きがあることが確認。

http://www.asahi.com/science/news/TKY200604200368.html

April 23, 2006

肥満の人に朗報?食欲抑制する物質、動物実験で解明

(読売 4月16日)

食欲をコントロールする際に、重要な働きをする脳内のたんぱく質を、
米コロンビア大糖尿病センターの北村忠弘・助教授、ドミニコ・アッシリ教授らの
チームがラットを使った実験で突き止めました。

人でも同様の仕組みがあるとみられ、
糖尿病や肥満などの生活習慣病の治療につながる成果。
専門誌「ネイチャー・メディシン」電子版に発表。

脳の視床下部には、
食欲を促進する物質(Agrp)と抑制する物質(Pomc)が存在。
レプチンというホルモンが、Agrpを減らしPomcを増やすことで食欲を抑えることが
これまでに知られているが、北村助教授らは、
「FoxO1」というたんぱく質に注目。
このたんぱく質が働いているときは、レプチンを投与しても食欲は衰えなかったです。

一方、ラットに半日間絶食させても、「FoxO1」の働きを止めておくと、
食事量は増加せず、「FoxO1」が食欲促進物質を増やしていることに。

北村助教授は、「FoxO1の働きを調節して、食欲をコントロールできる可能性が。
動物で効果が出れば、人の治療への応用を考えていきたい」と。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060416i212.htm

April 22, 2006

ミトコンドリアが原因か そううつ病、マウスで実験

(共同通信社 4月18日)

脳内細胞のミトコンドリアの機能障害が、
そううつ病を引き起こす可能性があることをマウスで確かめたと、
理化学研究所脳科学総合研究センターなどのチームが、
米学術誌モレキュラー・サイカイアトリーの電子版に発表。

ミトコンドリアは、エネルギー代謝にかかわる細胞内小器官。
そううつ病の発症には、神経伝達物質の関与などさまざまな仮説があるが、
詳しい仕組みは分かっていません。

遺伝子を改変して、脳の神経細胞のミトコンドリアが機能障害を引き起こす
マウスをつくりました。
正常なマウスは、暗いときに活動し明るくなると活動を止めるが、
機能障害マウスは、明るくなってもしばらく動き続け、暗くなる前に動き始めるなど、
そううつ病患者の不眠症状に似た異常行動が確認。

以前から、ミトコンドリア機能障害とそううつ病の関連を指摘しており、
同センターの加藤忠史チームリーダーは、
「病気の原因究明と新薬開発に役立つ可能性がある」と。

参考
 躁(そう)うつ病(双極性障害)にミトコンドリア機能障害が関連 -理化学研究所
 http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2006/060418/detail.html

http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=29242&categoryId=&sourceType=GENERAL

April 21, 2006

感染症、がん防ぐかぎになる酵素発見 理研

(朝日 4月13日)

ウイルス感染を防いだり、関節リウマチなどの自己免疫疾患を引き起こしたりする
1型インターフェロン」という物質が体内で作られるのに必要な酵素を、
理化学研究所のチームがマウスで見つけました。
この酵素で、1型インターフェロンができる量を調節できれば、
感染症やがん治療に応用できる可能性が。英科学誌ネイチャーに掲載。

1型インターフェロンは、ウイルスなどの異物が体内に入ると作られます。
免疫を高める作用があり、生体の感染防御に役立ち、薬としてがん治療に。
だが、免疫を高めすぎると、副作用で関節リウマチなどの自己免疫疾患が起きます。

理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの改正恒康チームは、
免疫細胞が異物の侵入に反応し、さまざまな物質を作り出す
「自然免疫」の仕組みに注目。
1型インターフェロンが作られる反応を強く促す酵素を見つけました。
この際、自己免疫疾患などの原因となる物質も作られるが、
この酵素は1型インターフェロンを作る働きだけに作用。

改正さんは、「この酵素をうまく調節できれば、免疫を高めてがんや感染症を
治療できるばかりか、免疫を抑えて自己免疫疾患を治療することも可能に」。

http://www.asahi.com/science/news/TKY200604130300.html

April 15, 2006

倒れやすい花には一杯の酒を——米研究者が効果を立証

(CNN 4月7日)

庭のスイセンが伸びすぎて倒れやすくなるのを防ぐためには、
薄めたジンやウイスキーが効果的――。
米コーネル大の園芸学者が、酒の意外な効用を示す研究結果を発表。

同大で花の球根を研究するウィリアム・ミラー氏は、
スイセンを植えた鉢に酒をかける実験を実施。
その結果、適度な濃度のアルコールを与えれば茎の伸びが抑えられ、
倒れにくくなることが分かり、園芸愛好家向けの雑誌上で紹介。

研究のきっかけは、米誌ニューヨークタイムズの園芸面担当者に
読者から寄せられた一通の手紙。
「スイセンにジンをかけたら、伸びすぎを防ぐことができた。
ジンの成分が関係しているのだろうか」という内容。
担当者から問い合わせを受けたミラー氏は、この現象に興味を持ち、
ジンやウオツカ、ラム、テキーラ、ワイン、ビールなどの酒を使って検証。

効果がみられたのは、アルコール濃度を4-6%に薄めた場合。
花の大きさや香り、持続期間は通常と同じで、
茎の成長だけが30-50%抑えられました。
一方、濃度が10%を超えると、スイセンは育たなかったという。
ワインとビールは効果がないことが分かりました。
糖分が多く含まれていることが原因。

酒をかけるのに最も適しているのは、芽が10センチ前後まで育ったころ。
スイセンだけでなく、チューリップを使った実験でも同様の効果。

ミラー氏は、「茎の成長が抑えられる仕組みは分からないが、
アルコールによって根が何らかの損傷を受けている可能性が。
アルコールと水分の混合液を与えられた植物は、
水だけを吸ってアルコールを排除することにエネルギーを消費してしまうのかも」と。

http://cnn.co.jp/science/CNN200604070021.html